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農薬による生物多様性への影響調査(平成 23年度)
BIodiversity impacts caused by pesticides

予算区分
BX 環境-その他
研究課題コード
1014BX001
開始/終了年度
2010~2014年
キーワード(日本語)
農薬,生物多様性,群集,生態毒性,メソコズム,OECD
キーワード(英語)
pesticide, biodiversity, community, ecotoxicology, masocosm, OECD

研究概要

 現在、農薬の使用が農地内外の生物多様性にどのように影響を及ぼすかについて適切に評価し、その影響を軽減する手法の開発が求められている。この実現には、まず農薬による生物多様性への影響を科学的・定量的に評価する手法の開発が求められる。
そのため、本事業においては、農薬による農地内外の生物多様性への影響について、メソコズム試験を通じて科学的かつ定量的に評価するための手法を開発すること等を目的に、メソコズム試験の具体的な実施方法やその評価方法を検討するための基礎的調査を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

本事業では、農薬による生物多様性影響評価に求められる課題とその解決法 について、国立環境研究所と農業技術環境研究所が連携して、中核となりながら、様々な分野の研究機関および研究者と協力して検討を行い、具体的評価事 例を試験研究的に実施するとともに、農薬の物理化学的性状および毒性に関す る基礎情報、および国内外における農薬の生態影響・生物多様性影響に関する 事例情報を収集し、情報整備をすすめ、今後の我が国における農薬の生物多様 性評価の方向性を見いだすことを目標とする。
本事業では、この目標達成のために具体的に以下のサブテーマを実施する。 1)室内毒性試験、メゾコズム試験および野外圃場調査に基づく農薬による生物多様性に対する影響の実証研究を行う。 2)農薬の物理化学性状、生理生化学的作用特性、および生物多様性に対する影響評価事例に関する情報収集を行い、農薬の構造活性と生物多様性影響の相関関係に関する調査を行う。 3)生物種間・系統間の薬剤感受性の変異および農薬の物理化学性状に基づく環境中運命動態を考慮した「現実的な生態リスク評価」のモデル化を目指す。

今年度の研究概要

(1)農薬による生物多様性の変動に関するメカニズムの調査
 使用量が多く使用方法は似ているが、物理化学的性状と生態毒性値が異なるイミダクロプリド及びフィプロニルを対象として、平成 22 年度調査で検討した試験設計に基づき、屋外における 10 m²程度の水田メソコズム試験を実施し次の調査・解析を行う。少なくとも2連の試験区と対照区を設ける。
a)生物多様性影響把握調査
 屋外における水田メソコズム試験において、水質データと併せて生態データ(動物プランクトン、底生生物個体群・群集動態及びヒメダカ個体群 動態及び次世代影響)を収集する(おおむね2週に1回程度の頻度で半年 程度)。そのデータを用い、農薬の環境中動態、各種生物及び群集構造の時系列変化を解析し、農薬の毒性ポテンシャル及び物理化学的性状の違いが生物間の相互作用、生態系構成者及び水質にどのように影響するのかを検討する。
b)農薬の残留性・蓄積性が生物群集へ及ぼす影響の検討
 平成 22 年度調査及び上記a)の調査の結果を踏まえ、イミダクロプリド及びフィプロニルの環境中の残留性・蓄積性が生物群集の動態及び回復性に及ぼす影響について、群集構造解析を行った上で考察を行う。

(2)メソコズムによる群集構造影響等試験法の開発のための基礎的調査
a)止水式メソコズム試験の実施
 我が国における生物多様性に配慮した農薬の生態影響を評価するための高次試験法を開発するため、平成 21、22 年度調査を踏まえ、諸外国の 動向についても情報収集しつつ、フェノブカルブ及びイミダクロプリドを対象として、1 m²程度の止水式メソコズム試験を実施する。試験にあたっては、複数の濃度区(3 濃度区程度)を設定し、1 濃度区当たり少なくとも 2 連の試験区と3連以上の対照区を設ける。試験場所 は屋内とし、水質データと併せて生態データ(動物プランクトン及び底 生生物の個体群・群集動態)を収集する(おおむね2週に1回程度の頻 度で半年程度)。
b)種の感受性分布の有効性の検証に資する解析
複数の種の毒性データから統計学的に導かれる種の感受性分布を農薬の生態影響評価として活用する手法の検討にあたって、その有効性を検証するための基礎的調査を行う。
c)群集構造影響等試験法の検討にかかる課題の整理
 a)の止水式メソコズム試験で得られた結果を踏まえ、1)効果的な試験生物種群及びモニタリング手法、及び 2)個体群・群集の回復性を考慮するのに必要な試験期間のあり方について考察し、止水式メソコズム試験の開発に向けた課題を整理する。

外部との連携

農業環境技術研究所

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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担当者

  • 早坂 大亮