- 予算区分
- BD 環境-環境技術
- 研究課題コード
- 1012BD001
- 開始/終了年度
- 2010~2012年
- キーワード(日本語)
- 貧酸素水塊,底棲生物,初期生活史,底層溶存酸素濃度,環境基準,モニタリング,統計手法
- キーワード(英語)
- hypoxia, benthic organisms, early life history, bottom DO concentration, environmental criteria, monitoring, statistical methods
研究概要
底層溶存酸素(DO)濃度の低下や欠乏による魚介類等の海産生物への悪影響を軽減し、良好な海域環境の回復に資するべく、特に環境の影響を受けやすい生活史初期の魚介類に着目し、室内実験、現場調査(具体的には東京湾と三河湾を対象)並びに統計学的手法を駆使して、底層DO目標値の導出のための標準的試験法を確立するとともに、科学的根拠に裏付けられた底層DO目標値の導出を図り、その目標値を適用するための水域区分を提案し、併せてその達成度評価のための手法の確立を図る。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:行政支援調査・研究
全体計画
上記の目的・目標の達成に向けて、本研究では次の3つのサブテーマを設けて、科学的根拠に裏付けられた底層DO目標値の導出と水域区分の提案、並びにその達成度評価のための手法の確立を図る。
1.DO目標値設定のための標準試験法の確立
DOに関する斃死率(急性影響試験)、成長や性成熟、産卵への影響(慢性影響試験)、胚発生〜孵化、浮遊、着底に対する影響(初期生活史試験)に関する実験プロトコルを作成し、内湾代表種(マコガレイ、アサリ)を用いて実験を行い、それぞれのデータを獲得・蓄積して2.のモデルシミュレーションのためのパラメータ推定に向けたデータ整備を図る。また、並行して、春〜秋産卵の内湾代表種・ハタタテヌメリの飼育・繁殖技術確立に向けた検討、仔魚や幼生等の生活史初期段階の個体が貧酸素水塊に遭遇した際の忌避能力を調べるための室内実験系の確立に向けた検討も実施する。
2.貧酸素水塊が初期生活史段階の内湾代表種に及ぼす影響の解析と評価
環境の変化に鋭敏に反応し、その後の個体数/資源量の減少に大きく寄与すると考えられる初期生活史段階に着目し、貧酸素水塊が内湾代表種(マコガレイ、アサリ)に及ぼす影響をフィールドで調査し、データを解析する。また、1.の当該データやこれまでに実施されたフィールド調査・解析結果も含めて、貧酸素水塊が内湾代表種の初期生活史に及ぼす影響をモデルシミュレーションにより検討し、個体数/資源量の減少に対する貧酸素水塊の影響の寄与率を明らかにする。さらに、それらの結果に基づいて、底層DOの環境基準で規制すべき水域区分を検討し、提示する。
3.底層DO目標の達成度評価手法の開発
底層DOを新たな水質目標とした場合、目標達成状況を判定するためには定点における連続観測と平面的な観測を組み合わせて解析する必要がある。しかし、連続観測が困難な場合もある。また、生活環境項目としての扱いであるため、CODが75%値を採用したように時間的、また空間的にも完全な達成は要求されない。こうした点に着目し、従来からの年12回、もしくは夏期6回のような離散的観測データの利用を前提として、累積頻度図法(Cumulative Frequency Diagram Method)のような時間ならびに空間の両者を考慮した新たな底層DO目標達成の判定手法の開発を行う。また、部分的に得られる連続観測データ、離散的観測データの時間的/空間的補間データ、さらにはシミュレーションモデルによる推定データ等に基づく新たなモニタリングならびに計算手法を導入した環境基準達成の判定手法も開発する。さらに、その結果を2.で提示された水域区分に適用し、底層DO目標の導入に不可欠な底層DO目標の達成度評価手法の確立を図る。
今年度の研究概要
1.DO目標値設定のための標準試験法の確立
浮遊期〜着底初期個体群への影響(初期生活史試験)に関する実験プロトコルを作成し、それに従って内湾代表種(マコガレイ、アサリ)を用いて実験を行いデータを獲得する。また、忌避応答実験装置を用いて海産生物幼生に対する貧酸素応答試験を行う。
2.貧酸素水塊が初期生活史段階の内湾代表種に及ぼす影響の解析と評価
東京湾のマコガレイ及び三河湾のアサリの初期生活史段階を対象としたフィールド調査・解析を継続し、水質生態系モデルの設計・開発を行う。また、流動シミュレーションのために必要なデータ(河川、気象、水域データ等)を収集して入力ファイルを作成する。
3.底層DO目標の達成度評価手法の開発
新たな底層DO目標達成の判定手法の開発や新たなモニタリング並びに計算手法を導入した環境基準達成の判定手法の開発に取り組み、環境基準達成の判定手法のプロトタイプを作成する。
備考
石田基雄(愛知県水産試験場)、金藤浩司(大学共同利用機関法人統計数理研究所)、岡田光正(放送大学)、矢持 進(大阪市立大学)、岩瀬晃盛(横浜薬科大学)