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化学気候モデルを用いたオゾン層破壊のハロゲン量依存性に関する研究(平成 23年度)
A study of dependence of the ozone layer destructon on halogen amount using a chemistry-climate model

予算区分
NA 寄付
研究課題コード
1011NA002
開始/終了年度
2010~2011年
キーワード(日本語)
化学気候モデル,ハロゲン,シナリオ,オゾン層破壊,将来予測
キーワード(英語)
chemisty-climate model, halogen, scenario, ozone layer destruction, future projection

研究概要

 モントリオール議定書によるフロン規制は功を奏し、現在オゾン層は減少傾向から増加へと転向しつつあり、将来は回復することが、化学気候モデルによるオゾン層将来予測によって示されている。ところで、オゾン層破壊がなくなる時期といっても、オゾン層はハロゲンガス濃度のみならず温室効果ガス濃度の影響も受けている。従って、将来二酸化炭素濃度が現在よりかなり増加すると予想される大気中で、大気中のオゾンの単位面積あたりの気柱量がいつ人為的なハロゲンガス濃度の影響を受けなくなるのかを、WMO-A1シナリオに沿った1本の計算結果のみから推定するのは困難である。そこで、ハロゲンガス濃度を人為起源の増加以前の濃度に固定し、一方温室効果ガスは前述のシナリオどおりに変化させた計算を行い、前述のシナリオによる計算結果との比較を行えば、オゾン層がいつ頃人為的なハロゲンガス濃度の影響を受けなくなるのかを精度よく推定することが可能となる。またこれとは逆に、もし、モントリオール議定書によるフロン規制がなく、フロンガスの大気中への放出が続いていたとしたら現在あるいは将来の地球大気はどうなっていたか(オゾン量、気温、地表に到達する紫外線量、風速などがどう変わるか)を、化学気候モデルを使って計算してみることも、現在のハロゲン規制シナリオの有効性を示す別のよい手段の一つである。
 本研究では、CCSR/NIES化学気候モデルと異なる3本のハロゲン濃度シナリオを用いた150年間のオゾン層将来予測実験を行ってその結果を解析し、オゾン層破壊のハロゲン量依存性を示し、現在のハロゲン規制シナリオの有効性を明らかにすることを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

2010年度:
以下の計算を行う。
(1) コントロールラン
WMO-A1ハロゲン地表濃度シナリオ(フロン、ハロン、塩化メチル、臭化メチルなど)と、IPCC-A1B温室効果ガス地表濃度シナリオ(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素)を使って化学気候モデルの計算を行う。計算期間は1951年〜2100年の150年間とする。
(2) ハロゲン固定実験
ハロゲンの地表面濃度をWMO-A1シナリオの1960年の値に固定し、一方、温暖化ガスシナリオはコントロールランと同じIPCC-A1Bシナリオを使って、1951年〜2100年の150年間の計算を行う。
(3) ハロゲン規制なしの実験
ハロゲンの地表面濃度には、World Avoidedというシナリオを使う。温暖化ガスシナリオはコントロールランと同じIPCC-A1Bシナリオを使って、1951年〜2100年の150年間の計算を行う。

2011年度:
計算結果の解析を行う。
(1)ハロゲン固定実験結果−コントロールランの結果の比較
(2)ハロゲン規制なしの実験結果−コントロールランの結果の比較


今年度の研究概要

昨年度行った計算結果の解析を行う。
(1)ハロゲン固定実験結果−コントロールランの結果
この両者の差を取ることによって、1960年以降、人為的に大気中に増加したフロンおよびハロンによるオゾン破壊の効果を、季節別、緯度別、高度別に解析することができる。また、オゾン層がいつ頃人為的なハロゲンガス濃度の影響を受けなくなるのかについて推定を行う。
(2)ハロゲン規制なしの実験結果−コントロールランの結果
この両者の差を取ることによって、モントリオール議定書およびその後の条約による規制なしで大気中のハロゲン量が増加し続けた場合の、ハロゲンのオゾン層や気候に及ぼす影響を解析することができる。オゾン量、気温、紫外線量、風速の変化を、季節別、緯度別、高度別に解析し、現在までに実際に行われたフロン規制の有効性を検証するとともに、将来大気に対しての有効性についても解析・検討を行う。

課題代表者

秋吉 英治

  • 地球システム領域
    気候モデリング・解析研究室
  • シニア研究員
  • 博士 (理学)
  • 物理学,地学,コンピュータ科学
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