- 予算区分
- BA 環境-地球推進 A-1003
- 研究課題コード
- 1012BA004
- 開始/終了年度
- 2010~2012年
- キーワード(日本語)
- 北極,温暖化,アラスカ,古炭素
- キーワード(英語)
- Arctic, global warming, Alaska, preaged carbon
研究概要
近年の地球温暖化に伴う気候変動が自然界のフィードバックを介して最も顕著に現れるのが、北極圏およびその周辺地域である。北極・高緯度域土壌圏における炭素動態解明に関する観測研究の必要性が高まる中、陸域における炭素循環研究の実施が強く求められている。本研究では、北極土壌炭素動態の解明とそのモデルの開発に向けたデータ取得を行う。特に放射性炭素同位体を指標に用いて、土壌炭素の滞留時間を推定および土壌からのCO2発生源を検討し、土壌有機炭素の蓄積分解の実態を把握とその温暖化影響を評価する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
平成22年度計画
アラスカのタイガ、ツンドラ生態系の中から数サイト選定し、各サイトで土壌特性に関する基礎データを得る。また、深度別に土壌および土壌ガスを採取し、14c濃度を測定し、このデータに基づき各炭素プールごとの平均滞留時間の推定、CO2の発生源の検討を行う。
平成23年度計画
前年度に採取した試料の分析を引き続き進める。土壌試料から抽出した微生物脂質の14C 測定を行い、分解されている有機炭素を同定する。また前年の結果を踏まえて、新たなサイトの選定を行い、土壌、土壌ガス等の試料を採取する。
平成24年度計画
前年に採取した試料の分析を引き続き進め、サイト毎に土壌有機炭素の平均滞留時間、fossil carbon の分解率を求める。また、過去に自然火災が起こった地域での調査を行い、火災によって土壌炭素蓄積・分解プロセスに生じる影響を評価する。
今年度の研究概要
本研究では、劇的な変動環境下にある北極高緯度域土壌有機炭素の中・長期的な動態をシミュレートするモデルの開発とその高精度化を目標に、観測とモデル研究を並行して行う。アラスカを代表する各種生態系で収集される各種観測データを用いて、海洋研究開発機構およびハーバード大学で開発されてきた陸域生態系モデル(ED2.0-peat)をベースに北極土壌炭素動態モデルの開発を進める。同時に、モデルによって再現された炭素動態が14C同位体などの観測に基づく平均滞留時間やCO2放出速度を再現できるか検証する。さらに、北極高緯度域特有のイベントである凍土融解とそれに伴う古土壌の有機物(fossil carbon)分解の活発化、タイガにおける自然火災による土壌有機炭素の焼失等、未解明の生物地球化学的プロセス、温室効果ガス放出プロセスを考慮にいれたモデルを構築し、全球システムを対象とした将来予測の高精度化をはかる。
(1) 土壌有機炭素分解の実態把握と生物地球化学的メカニズムの解明に関する研究
放射性炭素14Cを指標に用いて、土壌有機炭素の滞留時間を評価し、北極土壌炭素動態モデルに検証データを提供する。加えて、土壌CO2および微生物膜脂質の14C分析から土壌から発生するCO2の起源を明らかにし、古土壌の有機物分解等の北極高緯度域特有の土壌有機炭素分解メカニズムを解明する。
(2) 微気象・物理・水文プロセスの総合観測と変動量評価に関する研究
アラスカを南北に縦断するトランセクトに沿ってモニタリングサイトを設置し、各サイトで年間の地表付近の気象・積雪状態・地温プロファイル・土壌水分・凍結深の時間変化を計測する。これによって広域の物理環境変化をモニターし、北極圏を代表する気候帯の気象・雪氷・地温データを取得する。
(3) 温室効果ガスのフラックス観測とその起源の定量的評価に関する研究
CO2・CH4フラックス測定を実施すると共に、特にCH4に注目しその炭素安定同位体と土壌中のメタン生成古細菌・メタン酸化細菌群集構造を定量的に明らかにし、土壌の有機物組成や微生物膜脂質情報などと比較解析を行うことで、高緯度の各種土壌生態系におけるCH4の起源の定量化に関する研究を行う。
(4) 土壌炭素動態モデルの開発および高精度化に関する研究
観測によって得られた知見に基づいて、炭素フローの環境依存性や生物地球化学的制御メカニズムをシミュレーションモデル化し、結果を解析する。また、このモデルによって再現された炭素動態が、同位体などの観測に基づく平均滞留時間やCO2放出速度を再現できるか検証を行い、モデルの定量的な高精度化を進める。
備考
共同研究:北見工業大学、筑波大学、独立行政法人海洋研究開発機構
- 関連する研究課題
- 0 : その他の研究活動