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アジアにおける多環芳香族炭化水素類(PAHs)の発生源特定とその広域輸送(平成 22年度)
Sources of PAHs in Asian countries and their long transport process

予算区分
BA 環境-地球推進 C-094
研究課題コード
0911BA008
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
有害化学物質,多環芳香族炭化水素,分子レベル放射性炭素分析,放射性炭素,アジア,長距離輸送
キーワード(英語)
Hazardous Chemicals, PAH, CSRA, radiocarbon, Asia, long transport

研究概要

本研究では、未規制の有害化学物質であり、ヒトの発がんリスクと低次の水棲生物の奇形等の異常のリスクの上昇の一因ともなっている多環芳香族炭化水素類(PAHs)のアジア諸国大気・水圏におけるPAHsの分布並びに具体的な発生源について調査を行う。PAHsの起源特定の手法としては、マーカーの利用、化合別レベルでの安定同位体比と放射性炭素同位体比測定、組成の統計解析等による方法を用いて行う。これらの分析データを総合することにより、アジアの大気・水環境におけるPAHの精密な起源特定が可能になると予想される。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

放射性炭素(以下14C)は,成層圏上部で宇宙線によって生成され,約5730年の半減期をもつ核種である。加速器質量分析計(AMS)による14C測定技術は,近年飛躍的に進歩し,環境中に存在する極微量の有機分子や炭素粒子の14C測定が可能となった。サブテーマ1では、このような最新の測定技術による環境化学分野へ適用すべく,燃焼過程で生成するPAHの起源識別を行う。
 化石燃料の燃焼に由来する炭素系化学物質には14Cが含まれないのに対し(Δ14C-fossil=-1000‰),現世のバイオマス燃焼由来の炭素系物質はバイオマスが炭素固定した際の大気中14C濃度を反映するため,燃焼生成粒子やそれに含まれる炭素系化学物質の14Cを測定することによって,それぞれに個別の時間情報を獲得,すなわち化石燃料燃焼とバイオマス燃焼の相対的な寄与を識別できる。
 サブテーマ3および4で各種環境試料から抽出、分離・生成、定量し、分取キャピラリーガスクロマトグラフ(PCGC)システムでピーク単離されたPAH化合物を超低バックグラウンドでの極微量炭素のグラファイト調整用に開発した高真空グラファイト反応装置を用いてグラファイト化し、国立環境研究所に現有するペレトロン型加速器質量分析計(AMS)で分析してPAHの分子レベル放射性炭素同位体比(∆14C)を測定する。
 これらの結果から、各試料中のPAH分子を構成する炭素に含まれる現代炭素(modern-C)と化石炭素(fossil-C)の寄与の割合を明らかする。都市域および遠隔地位の大気試料の測定結果からは、東〜東南アジア諸国の都市域および遠隔地域における“バイオマス燃焼由来”PAHと“化石燃料燃焼由来”PAHによる汚染マップを作成し、燃料の種類別に削減目標を提示することを目指す。また、コア堆積物試料の測定結果からは、近年の経済成長や使用燃料の種類、消費量の変化等がPAHの汚染源の変化に及ぼした影響等を明らかにする。

今年度の研究概要

今年度は、アジア諸国(中国、ベトナム等)での試料採取と採取されたエアロゾル中PAHs分子の14C測定のための分析化学的検討を進める。

備考

研究代表者:高田秀重(東京農工大学共生科学技術研究科・教授)

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    物質循環観測研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait

担当者