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北極土壌圏温暖化に伴う凍土融解と土壌微生物による化石炭素の分解促進に関する研究(平成 21年度)
Soil microbial decomposition potential of fossil carbon associated with permafrost soil caused by Arctic warming

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0911CD014
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
凍土融解,北極圏,土壌微生物,温暖化,放射性炭素,加速器質量分析計,分子レベル放射性炭素分析
キーワード(英語)
frozen soil melting, Arctic region, soil microbe, global warming, radiocarbon, AMS, CSRA

研究概要

北極スバールバル諸島では、地質時代に生成した土壌有機炭素(以下、化石炭素)が凍土中に大量に蓄積されている。このような環境は、北極高緯度域土壌圏において一般的であり、最近急速に温暖化の影響を受けつつある。特に冬季の気温上昇は、凍土層の崩壊を引き起こし、冬季における土壌呼吸量の増加という形で表れている。本申請課題では、先行研究で得られた微生物による化石炭素の分解に関する定性的な証拠を踏まえ、化石炭素の分解に伴って放出される土壌呼吸の定量化を目指す。加えて、化石炭素の分解における温度依存性についても検討し、温暖化に伴う凍土融解と化石炭素分解量の長期的な変動についても明らかにすることを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

北極スバールバル諸島では、地質時代に生成した土壌有機炭素(以下、化石炭素)が凍土
中に大量に蓄積されている。このような環境は、北極高緯度域土壌圏において一般的であり、最近
急速に温暖化の影響を受けつつある。特に冬季の気温上昇は、凍土層の崩壊を引き起こし、冬季に
おける土壌呼吸量の増加という形で表れている。本研究では、先行研究で得られた微生物による化石炭素の分解に 関する定性的な証拠を踏まえ、化石炭素の分解に伴って放出される土壌呼吸の定量化を目指す。加
えて、化石炭素の分解における温度依存性についても検討し、温暖化に伴う凍土融解と化石炭素分
解量の長期的な変動についても明らかにしたい。本提案課題によって得られるデータは、高緯度土
壌圏の炭素循環とその温暖化影響を予測するためのモデル開発と予測結果の検証に貢献するものと
期待できる。
本研究では、微生物による化石炭素の分解量の時間変化(土壌呼吸のうち化石炭素が分解されている割合)を推定するため、平成21-23年度の期間において以下のサンプリング及び分析を実施する。
平成21-23年度の研究実施計画の概略は以下の通り。
(A) 試料の採取、(B) リン脂質脂肪酸の大量抽出・精製方法の検討・確立、(C) 土壌微生物の増殖速度計測のための検討、(D) 土壌微生物による化石炭素の分解能調査および分解に関与する微生物の同定、(E) 微生物膜脂質分子の極微量AMS14C分析の検討、(F) 14Cによるマスバランスモデルとボックスモデルを用いた微生物利用炭素源の同定と微生物による化石炭素の分解速度の算出と土壌微生物が炭素循環に果たす役割についての定量的な解明をめざす。H21年度は、(A), (B)について実施する。以下に、それぞれの実施項目について詳細を記す。
(A) 試料の採取
土壌試料については、すでに2008年度までに、氷河末端から植生の発達している場所で採取する。調査地へは、6月〜8月の間(2名、各3〜4週間の滞在を予定)赴く。試料のサンプリングには、多くのサンプリング機器と培養装置の輸送が必要なため、本経費で申請する。
(B) エーテル脂質・リン脂質脂肪酸分子の大量抽出・精製方法の検討・確立
1)リン脂質分子の大量抽出・精製・濃縮・純度チェック
土壌試料は、大容量ソックスレー抽出機により、溶媒可溶脂質成分の全抽出を行い、その後、アルカリけん化処理を行う。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる炭化水素、ジグリセリド、リン脂質成分を回収する。酸性成分より細菌膜脂質由来脂肪酸を分画する。脂肪酸は、GC—FIDでの定量、GC/MSでの同定に先立って、メチルエステル化を行う。さらに分子レベル14C測定に先立ち、GC/C/IRMSにより分子レベル炭素安定同位体分析を行う。
2)リン脂質脂肪酸分子の14C測定のための前処理の検討
分子レベル高精度14C測定を行うにあたり、高純度での分子の分取・精製が重要である。低バックグラウンドでのリン脂質脂肪酸分子の精製は、PCGCシステムにより行う。
3)エーテル脂質・分子の大量抽出・精製・濃縮・純度チェック
このシステムの主要な部分は、本計画の初年度で購入申請をしているが該当する。
4)脂質分子の14C分析は、内田昌男所属機関に現有のタンデム型5MV加速器質量分析計にて行う。

今年度の研究概要

今年度は、(A) 試料の採取、(B) リン脂質脂肪酸の大量抽出・精製方法の検討・確立、(C) 土壌微生物の増殖速度計測のための検討、(D) 土壌微生物による化石炭素の分解能調査および分解に関与する微生物の同定、(E) 微生物膜脂質分子の極微量AMS14C分析の検討までを実施する。

備考

研究代表者:国立極地研究所 内田雅己

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    物質循環観測研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait

担当者