- 予算区分
- AA 中核研究
- 研究課題コード
- 0610AA304
- 開始/終了年度
- 2006~2010年
- キーワード(日本語)
- 生態系機能,生物多様性,環境リスク
- キーワード(英語)
- ECOSYSTEM FUNCTION, BIODIVERSITY, ENVIRONMENTAL RISK
研究概要
自然環境や自然の生態系を対象とした生態影響評価は、野外での複数のリスク因子を解明し、生物個体群や生物群集、生態系を対象とした評価に拡張して考える必要に迫られている。評価尺度についても、幾つかの考え方があり、これは人間社会の価値観にも左右される。本プロジェクトでは、「生物多様性」と「生態系機能」の視点から、生態系サービスの劣化を引き起こす(有用)個体群の再生産の阻害や種数の減少、生態系機能の低下(例えば、バイオマス生産性や物質循環効率など)をエンドポイント(評価指標)として、具体的なフィールドや問題となる生物種について生態影響評価を実施するとともに、数理モデルを活用した新たな生態影響評価手法を提案する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
具体的な野外フィールド(沿岸域・淡水域)において、質の異なる複数の環境リスク要因が生物個体群や生物群集に及ぼす影響を評価する。底棲魚介類の資源量の低下や生物多様性・生態系機能・生態系のカタストロフをエンドポイントとし、エンドポイントを引き起こす因子や生物間相互作用の関与などを現場での調査、実証実験および数理モデルから明確にする。一方、輸入される侵略的外来種については、在来種との交雑リスク評価を実施するとともに、随伴侵入種についても、その影響を評価する。侵入種の原産地および侵入先での生息環境の条件をもとに、侵入種の分布拡大予測アルゴリズムを構築し、地図情報を併用することにより侵入種分布予測マップを作成する。生態系影響評価法の開発のためには,理論的な研究と野外実証研究との連携が欠かせない。野外フィールド調査や実験に基づいて得られた知見に対して,個体群や生物群集を対象に研究されてきた数理的な生態リスク評価手法の適用を試みるとともに、数理モデルを活用した新しい生態影響評価手法を提案する。
今年度の研究概要
課題1:野外調査によるリスク要因の解明と生態(系)影響評価
東京湾における底棲魚介類の生活史初期における貧酸素耐性の推定、食性と成長の解析を行い、生活史初期の減耗をもたらす要因とその程度の推定を試みる。また、その結果に基づき、生活史特性、特に生活史初期の生態と餌生物、物理・化学的環境因子をモデル化し、資源に対する加入量の変化をエンドポイントとした生態影響評価を試みる。カタストロフィックレジームシフトを引き起こすメカニズムを解析し、兵庫県南西部のため池地域の調査で得られたデータをもとに、生物多様性や生態系機能の低下を引き起こす環境リスク因子を明らかにする。
課題2:侵入種生態リスク評価手法の開発に関する研究
侵略的外来生物の侵入ルートおよび分布拡大プロセスを分子遺伝学的データおよび環境要因データより明らかにして、今後の分布拡大予測を図る。特に非意図的外来生物についてはどの物資に随伴して移送されているか、またどのような移送ルートをたどって分布拡大をしているかを解析して、貿易港や移送物資ごとの侵入生物持ち込みリスクの評価手法を検討する。カエルツボカビなど侵略的野生生物感染症と宿主生物の共種分化解析を行い、系統関係から、侵入感染症が在来生物に感染するリスクを評価する方法を検討する。
課題3:数理的手法を用いた生態系機能の視点に基づく生態リスク評価手法の開発
機能形質に着目した群集生態学モデルに基づいて、種の環境要求性やストレス耐性の違いによる種構成の変化から、生態系機能への影響を予測する解析方法を発展させる。生態系機能に影響する機能形質を、物質循環機能に着目した生態系モデルによって特定した上で、長期モニタリングデータに対する時系列解析を行い、環境変化による生態系機能変化を推定する。侵入種の生態リスク評価法として、メタ群集モデルの適用を検討する。