- 予算区分
- BA 環境-地球推進 F-081
- 研究課題コード
- 0810BA006
- 開始/終了年度
- 2008~2010年
- キーワード(日本語)
- 侵入生物,寄生生物,カエルツボカビ,ダニ,ヒアリ
- キーワード(英語)
- invasive alien species, parasite, chytridiomycosis, tick, fire ant
研究概要
これまで政策的、社会的にも関心を集めることが少なかった潜在的な随伴侵入生物の侵入実態および生態学的特性を明らかにするとともに、在来生物・生態系および人間生活に対する影響評価を行う。さらに侵入ルートおよび分布拡大プロセスについて生物学的側面および社会経済学的側面からの解明および予測を図り、検疫・防除手法の具体的検討を行うことを目的とする。最終的には、環境省・外来生物法における「非意図的な随伴侵入生物」の管理方針の必要性を示し、科学的提言を行う。
研究の性格
- 主たるもの:行政支援調査・研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
2008年度は、随伴侵入種の国内外における侵入・分布拡大実態・被害実態に関する情報収集を行う。外来アリ類のサンプル採集を行う。カエルツボカビの日本・アジア地域における分布状況および遺伝的変異を調査する。輸入木材、生物資材に随伴して侵入してくる節足動物、センチュウ類、菌類のサンプル収集を行い、分類学的整理を進める。国際情報交換ネットワークの素地を形成する。琵琶湖や霞ヶ浦など実際に分布拡大している水系における野外調査により、カワヒバリガイおよびタイワンシジミの分布環境パラメータ抽出を行う。カエルツボカビ検査ネットワークを構築して、サブ(1)と連携して感染状況の把握を行う。感染個体からの菌の分離・培養実験を行う。国内輸入動物寄生性マダニからのマダニ媒介性微生物検出法の確立を目指す。Borrelia属の分離培養を行う。
2009年度は分子遺伝学データおよび物流データに基づき外来アリ類、淡水無脊椎動物類、カエルツボカビの侵入・分布拡大ルートの解明を行う。国内外の研究機関との連携を強化して随伴侵入生物データベースの構築を進める。随伴侵入節足動物、センチュウ類、菌類の生物学的特性を調査・研究して、直接的な悪影響を受ける生物や生態系の特性を解明する。物資移送に伴う侵入リスク評価を実施する。カワヒバリガイおよびタイワンシジミの分布拡大を招いている人為的要因の解析。分布拡大プロセスのトレースを行い、有効な検疫手法を検討。カエルツボカビ菌の系統別に培養株の確保を図る。感染実験を行い、在来種へのリスク評価を行う。輸入両生類・爬虫類から発見された病原体の病理学的特性に関する情報収集を行う。検出された微生物の遺伝学的同定を行う。同定微生物のヒト、産業動物、愛玩動物に対するリスク評価を行う。分離方法、特異的検出法、迅速同定法の開発を平行して進める。
2010年度は、得られたデータに基づき、随伴侵入生物の侵入プロセスおよび分布拡大エリアに関するモデル予測を行うとともに、モデルの検証を行う。得られたデータを基に侵入防除策の具体的提言を行う。得られたデータをもとに、随伴侵入節足動物、センチュウ類および菌類のインベントリーを完成させ、国際的なネットワークを構築する。分類を整理するとともに、シジミ類の遺伝的浸食の実態を明らかにする。カワヒバリガイの有効な除去手法の立案を行う。カエルツボカビ菌の消毒法、治療法および予防法を確立する。輸入両生類・爬虫類から発見された病原体の在来種に対する影響評価を実施する。優先順位が高い微生物について、生態系・健康リスク評価を行う。マダニ類の検出およびマダニ体内病原体の検査手法についてマニュアル化し、広く情報発信を行う。
今年度の研究概要
外来アリ防除ネットワークの協力を得て、外来アリ類の国内外における侵入・分布拡大実態を情報収集および現地調査を行うことによって明らかにする。台湾ヒアリ防除センターおよび中国科学院と連携をとり、アジア地域におけるヒアリの分布拡大状況および被害実態に関する情報を収集する。サブテーマ4と連携して、カエルツボカビの日本およびアジア地域における分布状況および遺伝的変異を調査する。特に南西諸島におけるカエルツボカビの感染状況を重点的に調査する。港湾および空港において、輸入木材、木材製品および生物資材に随伴して侵入してくる昆虫類、クモ類、センチュウ類および菌類のサンプル収集を行い、分類学的整理を進める。またIUFRO(国際森林研究機関連合)の分科会に「侵入種と貿易に関する研究チーム」を結成し、国際情報交換ネットワークの素地を形成する。国内外における淡水性無脊椎動物の侵入実態および生態影響・人間活動影響に関する情報収集を行い、整理する。琵琶湖や霞ヶ浦など実際に本種の分布が拡大している水系における野外調査により、カワヒバリガイおよびタイワンシジミの分布環境のパラメータ抽出を行う。カエルツボカビ検査ネットワークを構築して、ペット用カエル、実験用カエル、および野生カエル個体のサンプル収集を行い、感染状況の把握を行う。感染個体からの菌の分離・培養実験を行う。獣医師ネットワークを活用して、輸入両生類・爬虫類における感染症病原体の保有状況を調査する。国内輸入動物寄生性マダニからのマダニ媒介性微生物検出法の確立を目指す。マダニ媒介性感染症は、病原性の細菌、ウイルス、寄生虫によって引き起こされるが、その病原体種は極めて多種にわたるため、全てを網羅的に検出することはほぼ不可能である。そこで本研究では、これら病原体種のうち、侵入が最も危惧される細菌およびウイルスについて検出方法を確立することとする。細菌種ではBorrelia属、Rickettsia属、Ehrlichia属、およびAnaplasma属、ウイルスではダニ脳炎ウイルスなどのフラビウイルスに焦点をあて検出系を作成することとする。検出はPCR法をベースに行い、将来的に各所での運用が可能かつ簡便な方法での検出法確立を目標とする。また、Borrelia属に関しては分離培養も可能な限り行うこととする。
- 関連する研究課題
- 20955 : 重点3ー中核4生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発
- 21014 : 重点3ーその他2(3)侵入生物データベースの管理
- : 重点3ー関連2侵入生物・遺伝子組換え生物による遺伝的多様性影響評価に関する研究
課題代表者
五箇 公一
- 生物多様性領域
生態リスク評価・対策研究室 - 室長(研究)
- 農学博士
- 生物学,農学,化学