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化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析による曝露評価(平成 19年度)
Integrated exposure assessment analysis of the complex factors of chemical exposure

予算区分
AA
研究課題コード
0610AA301
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
曝露評価,総合的曝露モデル,バイオアッセイ,網羅的化学分析,地理情報システム
キーワード(英語)
EXPOSURE ASSESSMENT, INTEGRATED EXPOSURE MODELS, BIOASSAY, EXAUSTIVE CHEMICAL ANALYSIS, GEOGRAPHIC INFORMATION SYSTEM

研究概要

化学物質の曝露を考える上では、多数の物質による多重的な曝露、一つの物質の持つ複雑な影響スペクトル、排出から個人あるいは生態系への曝露に至る過程で関連する自然的、時間的また社会的な因子などを考慮した評価・解析が重要である。これらは、最終的なリスク評価における複合影響の評価において特に不可欠な解析となるが、まず当面は、可能な範囲の複合的要因の総合解析による、化学物質の曝露のより包括的な評価を目指すことが必要と考えられる。本プロジェクトでは、(1)地域GIS詳細モデルおよび地球規模など複数の空間規模階層を持つ動態モデル群の総合的構築、(2)バイオアッセイと包括的測定の総合による環境曝露の監視手法の検討と曝露評価への適用、(3)モデル推定、観測データ、曝露の時間的変動や社会的要因などの検討と総合解析による曝露評価手法と基盤の構築と整備、の3つの課題を設定し、それらの有機的な連携を通じて化学物質曝露に関する複合的要因の総合解析を達成し、新たな知見を与えることを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

(1)地域GIS詳細モデルおよび複数の空間規模階層を持つ動態モデル群の総合的構築
 近年のGIS(地理情報システム)およびGISを基盤とする多媒体モデル等の成果を発展させ、地域スケールでの詳細曝露評価を可能にするための地域GIS詳細モデル、地球規模での汚染拡散が問題となる物質群を対象とする地球規模モデルの開発を中心とし、その他既存モデルの検討を含め、複数の空間規模を持つ化学物質特性からの複合的な曝露解析を可能にする動態モデル群の総合的構築を目指す。中期計画前半においては、個々の単位モデル群の開発・改良・導入またデータ整備を中心として検討する。後半においては、これらの階層的総合化のシステム開発と、これを用いた多重的および複合的規模を持つ曝露の総合解析を試みる。
(2)バイオアッセイと包括的測定の総合による環境曝露の監視手法の検討と曝露評価
 環境観測を基盤として、多重的な曝露と種々の影響スペクトルを効率的に監視することを目標として、in vivoおよびin vitroのバイオアッセイ群による予見的な影響・曝露の包括的把握と、網羅的分析法を中心とする広範な物質レンジの効率的な監視手法を組み合わせた環境曝露の監視体系の再構築を行う。具体的には、大気・水環境を主対象とする多媒体の曝露把握を、バイオアッセイ群と網羅的測定の総合によって達成することを目指す。中期計画前半においては、環境試料へのバイオアッセイ手法の適用のための試料調製手法等の準備・開発を中心として行い、予備的な環境調査を実施する。中期計画後半では、前半での予備的環境調査の結果を踏まえたバイオアッセイ・計測体系の再構築と更に詳細な曝露把握のための環境調査を実施する。
(3)モデル推定、観測データ、曝露の時間的変動や社会的要因などの検討とこれらの総合解析による曝露評価手法と基盤の整備
 モデル推定、観測データおよび曝露に関連する社会的要因などを曝露評価において総合的に解析することを目標として、データ蓄積、一連のモデルやデータを蓄積また解析するための情報技術的また統計的手法の検討と開発を行う。また、曝露の時間的変動の検討を事例的に進めることを目標として、東京湾におけるフィールド調査と室内実験に基づき、残留性の高い化学物質による曝露の時間的変動の解析と動態パラメータの取得を目指す(東京湾関連テーマはH19年度から課題(1)で実施する)。これらの総合解析により、最終的に化学物質曝露に関する複合要因の総合解析を目指す。中期計画前半においては、データ蓄積、情報技術的および統計的手法の検討、また調査の実施を中心として行う。中期計画後半においては、データ蓄積や調査を継続しつつ、各課題の成果を総合的に解析する試みを行い、最終的に、複合的要因の可能な総合解析により、現在の化学物質曝露の総合評価の成果を提出することを目指す。

今年度の研究概要

課題(1)については、既存のGIS多媒体モデルや種々のモデルの階層的総合化のための基盤データ構造およびシステムの設計を行い、また、地点個別推定精度の向上のため、フィールド調査等の結果を用いたモデルの改良を継続する。地球規模動態モデルについては、昨年度の予備的検討を踏まえ、開発と観測値による検証と改良を進める。また、東京湾におけるフィールド調査および室内実験の予備的検討をPCB、PFOS等いくつかの物質群を対象として、本年度から課題(3)から(1)に移して引き続き行う。
課題(2)については、環境・生態系に対する曝露計測を目標に河川水等の多面的評価に適した試料採取法・調整法の検討と全国調査の準備を進める。また、メダカの初期生活段階試験などの水質汚濁発生源等への適用の検討を開始し、平行して、新たな毒性検出指標や内分泌かく乱作用指標等に関する研究を進める。また、人への曝露計測を目標に、大気中の粒子状成分・セミボラタイル成分のモニタリング手法の検討と全国調査の準備、また、人への曝露評価のためのフィージビリティースタディを開始する。
課題(3)については、不検出値を含むモニタリングデータに対する評価手法の開発および実測結果への適用について新たな対象物質等への試行的検討を行う。また、化学物質曝露の総合化の具体的な考え方の整理を開始する。

備考

環境リスクプログラム各中核プロジェクト、特に中核プロジェクト4とは特に密接に共同して実施する。

課題代表者

鈴木 規之

  • 企画部
  • フェロー
  • 博士(工学)
  • 工学,化学,土木工学
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担当者