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2011年10月31日

国立環境研究所発のフロン対策を!

【巻頭言】

笠井 俊彦

 国立環境研究所に勤務するようになって一年が経ちました。働き始めてから27年間、6ヶ月ドイツの環境省に行っていたことを除けば、ずっと霞ヶ関でした。自宅から通うと片道2時間半なのでつくば市の単身住宅に入りましたが、一人暮らしも20数年ぶりです。昨年の暑さには本当に参りましたが、今年は都内と較べて夜間良い風が吹くので、つくばのありがたさを感じています。クーラーも今年は住宅ではほとんどつけないで過ごせています。

 クーラーと言えば冷媒に使われているフロンガスは強力な温室効果ガスです。2000~2002年にかけて環境省でフロン対策を担当していました。モントリオール議定書で生産が規制されているが京都議定書の対象ではないHCFC22などは1gでCO2に換算すると1800gの温室効果があります。オゾン層を破壊しないが京都議定書対応のHFC134aだと1gでCO2に換算すると1430gの温室効果がありますが、正々堂々とノンフロン製品として売られています。

 2000年当時、廃棄されるカーエアコンから放出されるCFC12は京都議定書の対象ではありませんが、温室効果を見ると京都議定書の基準年総排出量の2%強に当たることから、議員立法で2001年6月にフロン回収破壊法が制定されました。ルームクーラー、家庭用冷蔵庫は家電リサイクル法でフロン回収破壊をすることになっていたので、業務用冷凍空調機器とカーエアコンを対象とした法律です。法施行後、業務用冷凍空調機器の廃棄時のフロン回収率が3割程度しかないことが分かり2006年に改正されています。

 今年2月、「日経エコロジー」に冷媒がHFCに代替していくと、2020年には我が国においてCO2換算で約4000万トンに相当する排出があるので、機器廃棄時の回収破壊、運転時の漏洩防止、さらに、より温室効果の少ない冷媒への転換が必要であるとの記事が出ていました。この記事は間違いではありませんが、現在でも、我が国では、京都議定書の対象ではないCFC、HCFCの排出がCO2換算で約3000万トンを超えている事実を見落としています。さらに、2005年にIPCCとモントリオール議定書の科学当局であるTEAPが共同で作成したSpecial Reportによると、全世界では、機器中(冷凍空調機、断熱材等)に存在するフロン類(バンク)はCO2換算で約200億t CO2。そのうち、冷媒フロンは約90億t CO2(冷媒バンク)。バンク全体からの毎年の排出量は約25億t CO2、そのうち、冷媒バンク、すなわち、冷凍空調機器からの排出が約20億t CO2と推計され、中国、アメリカ、アジア諸国からの排出が多いとみられています。

 最近の国際的な評価では、モントリオール議定書の規制により、1980年代後半には、毎年100億tCO2程度あったフロン類の排出を、毎年20億tCO2程度まで削減したと推計されています。京都議定書による削減目標量は年20億tCO2程度(先進国全体で1990年比5%削減)なので、遥かにモントリオール議定書による削減効果の方が大きいのです。さらにCFCやHCFCの代替物質として利用されているHFCの使用量は急速に増加しており、2050年の年間排出量は約55億~88億tCO2となると推計されています。

 機器が廃棄される時にフロン類をコンプレッサーのような回収機でボンベに回収し、そのボンベを破壊施設に運んで温室効果のない物質に変えることは難しいことではなく、途上国でも実施できます。回収機もそう高価なものではなく、タイ、インドネシア等には日本のメーカーが作った破壊施設もあります。途上国で回収破壊を行えば、1トンのCO2相当の削減が500~1000円で実施できると言われています。

 国立環境研究所に来て驚いたのは、花岡達也主任研究員が学生だった2002年に地球規模で費用対効果良く温室効果ガスを減らすためには中国でのフロン削減を支援すべきであるとの論文を書かれていたことと、昨年、横内陽子室長が大気中のフロン類濃度から排出源の場所と排出量を特定する研究成果を公表されていたことでした。このような素晴らしい成果が何故行政に活かされていないのか、自分が担当だった時に気づかなかった点は恥じるばかりですが、行政に問われて答えているところ以外での、このような貢献をどう活かしていくかはよく考えなければいけないと思います。とりあえず、総務部で出来ることとして、施設課管理の冷凍空調機器のフロンの充填状況、漏洩防止に何をしているか等を調べ始めています。

(かさい としひこ、総務部長)

執筆者プロフィール:

笠井 俊彦

飛騨高山祭りのからくり人形のある屋台組の家に生まれる。早稲田大学、東海大学での法学講師の経験あり。趣味はハンドボール。