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可燃ごみをエネルギーと考える 〜廃棄物発電の高効率化〜

【環境問題基礎知識】

小林 潤

1.廃棄物の量とその処理の現状

 環境省の調査結果によると日本における年間のごみの排出量は,各家庭から出てくる一般廃棄物で約5千万トン(図1),工業生産や農業生産過程などから出てくる産業廃棄物で約4億トン(図2)となっており,近年では一般廃棄物は徐々に減る傾向にありますが,産業廃棄物はほぼ横ばいとなっています。これらのごみは,資源として再利用(リサイクルやリユース)されるものを除くと,人間社会に害のないように適正に処理される,例えば燃やすこと(大気中に二酸化炭素という形にして捨てているとも言えます)でその量を減らした後に埋立処分される,などの方策が取られています。特に,日本は国土が小さいため埋立処分場の面積を拡大することが難しいので,世界的に見ても燃やすごみの割合が飛び抜けて高くなっています。このような「燃やすことができるごみ」を,単に燃やすだけでは「もったいない」ので,燃やすときに発生する熱エネルギーから電気を作る廃棄物発電が行われています。

図1 一般廃棄物の年間処理量
図2 産業廃棄物の年間処理量

 一般廃棄物を対象とした廃棄物発電は,その施設数・発電量ともに年々増加する傾向にあります(図3,4)。一方で,焼却処理施設の数は年々減少する傾向にあり,1施設当たりの処理量が増加していることが分かります。実は,この傾向は廃棄物発電と密接な関係があり,ある程度大きな規模を持った焼却処理施設でないとなかなか効率的な発電ができないことが理由の一つとなっています。これに対し,産業廃棄物を対象とした廃棄物発電はあまり行われておらず,廃棄物発電施設数で69ヵ所,総発電量で204 MW(平成15年度 資源エネルギー庁のデータに基づく)となっています。これは,産業廃棄物の再生利用量が多いことや,「燃えるごみ」の割合自体が小さいことなども理由として考えられますが,一般廃棄物が主に自治体など公的機関により処理されるのに対し,産業廃棄物は主に民間で処理されるため大規模化が難しいこともその一因となっています。規模が小さい焼却施設に見合う発電設備は,効率の面で大規模な設備よりも劣りますし,発電設備そのものを付け加えることでその分コスト高になるので,結果的に廃棄物発電を増やすことが難しい状況にあります。そこで,このような小規模でも高い発電効率が期待できる,「廃棄物ガス化発電」技術が注目されるようになってきています。

図3 一般廃棄物の焼却処理施設数と廃棄物発電施設数
図4 一般廃棄物の廃棄物発電量

2.エネルギーとしての品質について

 前述の通り,燃えるごみはエネルギーとして利用することが可能ですが,具体的にどれくらいエネルギーを取り出すことができるのでしょうか。可燃物を評価する指標の一つとして,発熱量という尺度があります。これは,可燃物を実際に燃やしたときに得られる熱量のことで,単位重量もしくは単位体積当たりの熱量(kcal/kgまたはkcal/m3)という単位で表されます。化石燃料である原油および石炭の発熱量は,それぞれ約10,000および6,000~7,000 kcal/kgと言われていますが,一般廃棄物は水分が比較的多く含まれるため数百~3,000 kcal/kg程度と高くても石炭の半分以下となっています。産業廃棄物はその種類によって大きく異なり,プラスチックやゴム製の廃棄物であれば10,000 kcal/kgに達するものもありますが,下水汚泥のように数百kcal/kgしかないものもあります。このように,燃えるごみが持つ発熱量は化石燃料と比べても小さく,また,ばらつきも大きいので,化石燃料と同じように使うことは困難です。しかし,ガス化技術を用いることで均質化することが可能となり,さらに「燃えるごみ」を燃料ガスに変換することでエネルギーとしての品質のみならず,使い勝手も化石燃料に匹敵するくらい(発熱量で言えばガスタービンで利用可能な3600 kcal/m3程度,その他腐食性成分の低減や燃料として適切な燃焼速度にすることなど)まで向上させることが可能となると考えられています。

3.ガス化によるエネルギー有効利用に向けた技術開発

 「燃えるごみ」の持つエネルギーを有効に利用するための技術の一つである廃棄物ガス化技術は,国内外を問わず幅広く研究されています。国立環境研究所においても,循環型社会研究プログラムにおいて「廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発」の一部として研究が進められています。具体的には,廃木材,紙ごみ,廃プラスチック,都市ごみ等を対象として,650~850℃に加熱しつつ水蒸気を同時に供給すると,これら廃棄物が蒸し焼き状態になり,水素を多く含む燃料ガスが生成します。さらに改質触媒という材料を用いることで,燃料ガス中に含まれる有機物も分解され,水素,一酸化炭素が大半を占める燃料ガスに変換されます(図5)。この時,ダイオキシンや多環芳香族炭化水素等の有害な物質も同時に分解されるため,環境負荷低減という意味においても優れた技術と言えます。これまでの研究成果から,非常に高い濃度の水素を作り出せることや,ガスエンジンによる発電が可能な発熱量を持つ燃料ガスへの変換が可能であること等を明らかにしています。現在は,改質触媒の耐久性を向上させるための検討や,さらに有害成分を低減するための方法について研究を進めています。

図5 廃棄物ガス化発電プロセスの概念図
図5 廃棄物ガス化発電プロセスの概念図(拡大表示)

4.廃棄物処理からのパラダイムシフト
~適正処理と高効率利用のWin-Winの確立~

 前述の通り,かつてはごみの焼却処理とは最終埋立処分のための減量化を主な目的としていましたが,近年の地球規模での環境問題・エネルギー問題の観点から,ごみも資源として見直されるようになってきました。もちろん,資源回収や効率を優先するあまり有害な成分を排出してしまっては本末転倒です。私たちは廃棄物処理のプロフェッショナルとして,廃棄物を適正に処理しつつ,可能な限り資源として再利用するためのWin-Winなシステムの運用を拡大し,さらによりよいプロセスを提案するために日々研究に勤しんでいます。皆さんも,「混ぜればごみ,分ければ資源」のスローガンのもと,自らの生活や仕事の中で捨てられる「ごみ」について,改めて向き合って考えてみて頂けましたら幸いです。

 

(こばやし じゅん,循環型社会・廃棄物研究センター
資源化・処理処分技術研究室)

執筆者プロフィール

小林 潤氏

 「人類は,夜の恐怖に打ち勝つために,太古には木々をこすり合わせ炎をおこし,ある時は鯨から生命を奪い,またある時は石炭や石油を奪い合った。そして原子力と,いつの時代も危険と隣り合わせだった。だが,これからは,何の恐れもない,美しい夜を手に入れなければならない。私はそのために研究をし続け,研究に生きてきた。今更何の躊躇いがあろうか! ! 」(出典:ジャイアントロボ「地球が静止する日」フォーグラー博士の演説より一部抜粋)・・・そんな心構えで日々研究に勤しんでいます,と言い切りたいです。