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国立環境研究所特別研究報告 SR-79-2008(平成20年12月発行)
「身近な交通の見直しによる環境改善に関する研究(特別研究)」(平成17~19年度)

 本報告書は,平成17~19年度の3年間にわたって実施した特別研究の研究成果を取りまとめたものです。本研究では,自動車への依存度が高い地方都市等における交通に起因する温室効果ガスの削減を目的に,車載機器を用いての自動車の日常における使用や走行実態に関する詳細な調査,エコドライブ効果の理論的な解析,電気自動車やハイブリッド車等の環境負荷の少ない自動車の技術評価,購買行動や通勤方法の違いによる環境負荷の評価等を行いました。さらに,得られた結果をもとに,モデル地域を対象に,通勤方法や購買行動の変更,まちづくり方針の見直しによる環境負荷低減対策などを検討し,短期から中長期に至る効果的な温室効果ガス削減シナリオと将来の地域の交通と土地利用のイメージ図を提示しました。本研究の成果は,個人や企業,自治体など多様な主体が,生活に身近な交通からの温室効果ガス削減対策を検討する際に,役に立つものと確信しています。

(社会環境システム研究領域 小林伸治)

国立環境研究所研究報告 R-200-2008(平成20年12月発行)
「A data book of outdoor activities in Austria and Japan 」

 気候風土の異なる日本とオーストリアにおいて,人々の戸外活動量の比較研究を2005~2006年度に日本学術振興会の費用で実施したものを取りまとめるとともに,そのほかの大学で行われた測定作業を短くまとめ,一部のデータを収録しました。この研究分野では測定方法すら確立されていないため,日本の多くの大学が参加して多様な測定比較を試みました。オーストリアでは日本と比較して,気候条件の多様性が小さいため,東部の首都ウイーンの大学だけが参加しました。北海道大学は,ウイーン郊外のロウバウの森と野幌森林公園の利用比較を行い,青森大学では日本と欧州の自然散策行動の比較を行いました。茨城大学は水戸の偕楽園とウイーンのシェーンブルン庭園の比較を実施し,筑波大学ではつくば市の洞峰公園とウイーンの市立公園の比較を行いました。国立環境研究所と琉球大学は北海道,つくば,沖縄,ウイーンの公園の利用行動の比較を行いました。各研究はまだ継続中ですが,気候風土の違いにより戸外の活動量の変動に違いがあることが分かりました。

(社会環境システム研究領域 青木陽二)

「環境儀」No.31 有害廃棄物の処理—アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究(平成21年1月発行)

 「環境儀」第31号では,有害廃棄物であるアスベスト(石綿),PCBの処理技術の開発や評価に関する分析化学面からの研究を取り上げました。アスベストは建材を中心に大量に使用され,アスベストによる中皮腫の発症は大きな社会問題になりました。今後も大量のアスベストが廃棄物として排出され続けることから,適切な無害化処理対策が求められています。一方,1960年代に起きたカネミ油症事件を契機に,製造が禁止された使用済みPCBが現在も大量に残されたままであり,その適正処理が進められています。

 このように,有害性の認識がありながら,安全・安心な処理技術がなかったため,廃アスベストと廃PCBは長い間「負の遺産」として存在してきました。本号では,有害廃棄物対策の研究分野で分析化学的アプローチを用いて長年研究を進めてきた循環型社会・廃棄物研究センターの貴田,野馬両氏の研究活動に焦点をあて,リサイクルできない,厳重に最終管理すべき有害廃棄物の対策に関する研究を紹介します。「循環型社会」や「3R」を目指す中で,私達の社会経済活動が生み出した過去の「負の遺産」の適正な処理も,安全・安心な循環型社会づくりに不可欠であることを再認識して頂ければと思います。

(「環境儀」 第31号ワーキンググループリーダー 大迫政浩)