『サマー・サイエンスキャンプ』実施報告
【研究所行事紹介】
企画部 広報・国際室
7月25日(水)から7月27日(金),7月30日(月)から8月1日(水)の各3日間,サマー・サイエンスキャンプ2007を実施しました。
サマー・サイエンスキャンプとは,高校生が,先進的な研究テーマに取り組んでいる研究者や技術者から3日間直接指導を受けることができる,実験・実習を主体とした科学技術体験合宿プログラムで,(独)科学技術振興機構が主催しています。
国立環境研究所が受入機関となったのは,1999年に地球環境研究センターが北海道根室半島の落石岬にある地球環境モニタリングステーションで行った「サイエンスキャンプ'99」が最初であり,それ以降毎年実施しています。今年はこれまでで最大規模の3コースを実施し,多数の応募者の中から選ばれた24名の高校生が参加しました。
『湖を知ろう-霞ヶ浦調査船でのフィールド実習-』コースでは,化学,生物などの湖沼環境の基礎を学び,調査船観測や分析を体験しました。霞ヶ浦でのフィールド実習では,実際に研究所の調査船に乗り,試料採取,湖の透明度,水温,溶存酸素,pHなどの鉛直分布測定などを研究者の方の指導を受けながら行いました(写真1)。また,フィールド実習で採取した試料を研究所に持ち帰り,プランクトンの観察や湖水中の栄養塩の分析も行いました。採取した試料中のプランクトン密度計算は少し難しかったのか,計算の仕方を研究者に熱心に質問していました。

昨年に引き続き実施した『生物の力による環境浄化を考えよう』と題するプログラムでは,『植物(植物と環境浄化能力を考えよう)』と『微生物(微生物の多様性を覗いてみよう)』の2コースに分かれ,自然を観察するフィールド調査を行いました。
『植物』コースでは,プラスチックの素材として良く使用されているビスフェノールAという化合物を使用し,土壌中の有機化学物質が植物によって吸収されていく様子を実験室で観察しました。
コースの後半では,生物と環境との関わりや生態系の中でそれぞれの植物がどのような役割をしているのかを知るため,筑波山山頂付近で植物観察を行い,基本的な観察のテクニックを学びました(写真2)

『微生物』コースでは,身近な環境中の微生物の多様性を遺伝子解析により観察しました。国立環境研究所の近くにある洞峰公園で採取した土壌の中から微生物由来のDNAを抽出し,その多様性を観察するため,特定の微生物遺伝子を遺伝子増幅装置(PCR装置)により増幅して,特別な電気泳動装置(DGGE)で分離し,多様な微生物遺伝子によって生じる模様(電気泳動パターン)を観察しました(写真3)

サイエンスキャンプに参加した学生から,「とても有意義な経験ができた」「研修を通し,環境問題について興味や関心が増えただけでなく,人と人との交流の大切さも学べた」などの意見があり,とても有意義なプログラムになったようです。
これからの将来を担う高校生が,環境問題に興味を持つ同世代の仲間と交流し,各自の知識や考え方をより一層深める機会を提供できたことは研究所としても喜ばしいことです。今後とも,研究者の協力を得てこのプログラムがより充実したものとなるよう工夫していきたいと思います。