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 本号の8ページからの記事に寺田寅彦の名前が出てくる。秀逸なエッセイの書き手としても名高い物理学者だ。科学ネタもあるが,多彩な題材の文章を書いている。おなじく物理学者の朝永振一郎の文章をあつめた『量子力学と私』という本がある(岩波文庫)。このなかの「独逸日記」には,のちのノーベル賞受賞者が自分の頭の悪さにいじけたり自己嫌悪になったりする様子がぐちぐちと書かれていてよい。

 ところで,組織のパンフレットだの研究プロジェクトの成果報告だのは基本的に胸をはり背伸びをすることになっている。落ち込んだ気持ちを正直に吐露した報告書など見たことがない。しばらく前に,たまには本音を書いてみようと思って,あるプロジェクトの報告書に率直な反省文を書いたら没にされてしまった。

 人の営為である研究には失敗も挫折もつきものだ。そこらへんを正直に書いた文章だって参考になるだろうに。人の不幸は蜜の味だし,けっこうウケるかもしれない。環境研ニュースにもそんな記事はいかがでしょうか。

(T. A.)