編集後記
本号の8ページからの記事に寺田寅彦の名前が出てくる。秀逸なエッセイの書き手としても名高い物理学者だ。科学ネタもあるが,多彩な題材の文章を書いている。おなじく物理学者の朝永振一郎の文章をあつめた『量子力学と私』という本がある(岩波文庫)。このなかの「独逸日記」には,のちのノーベル賞受賞者が自分の頭の悪さにいじけたり自己嫌悪になったりする様子がぐちぐちと書かれていてよい。
ところで,組織のパンフレットだの研究プロジェクトの成果報告だのは基本的に胸をはり背伸びをすることになっている。落ち込んだ気持ちを正直に吐露した報告書など見たことがない。しばらく前に,たまには本音を書いてみようと思って,あるプロジェクトの報告書に率直な反省文を書いたら没にされてしまった。
人の営為である研究には失敗も挫折もつきものだ。そこらへんを正直に書いた文章だって参考になるだろうに。人の不幸は蜜の味だし,けっこうウケるかもしれない。環境研ニュースにもそんな記事はいかがでしょうか。
(T. A.)
目次
- 意見具申巻頭言
- 水環境の健全化と液状廃棄物としてのし尿,生活雑排水等の環境低負荷資源循環技術の構築のためのバイオ・エコエンジニアリングに関する研究シリーズ政策対応型調査・研究:「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究」から
- 底質中の有害化学物質の影響をユスリカを用いて調べるシリーズ政策対応型調査・研究:「化学物質環境リスクに関する研究」から
- 鳥類発生工学と多様性の保全研究ノート
- 日韓パートナーシップによる開発途上国の水環境修復に向けた国際協力支援研究施設業務等の紹介
- 平成17年度国立環境研究所予算案の概要について
- 平成17年度の地方公共団体環境研究機関と国立環境研究所との共同研究課題について
- 新刊紹介
- 表彰・人事異動
- 国立環境研究所ニュース23巻6号