ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

地球環境保全と環境意識

巻頭言

前主任研究企画官 小澤 三宜

おざわみつよし の写真

 今年は、6月にブラジルで国連環境開発会議(いわゆる「地球サミット」)が開催され、地球温暖化防止の枠組みや生物学的多様性の保全に関する条約の採択など重要な議事が予定されている。まさに地球環境保全にとって歴史的な年である。

 地球環境問題を解決して行くためには、問題の正しい認識のための科学的な研究や実行可能な対策技術の開発と並び、開発途上国への技術移転や資金援助、財源確保が重要な課題とされている。

 地球環境研究については、平成2年度から環境庁が配分している地球環境研究総合推進費などにより、大学、関係国立研究機関などが総力をあげて精力的に推進しているところである。また、技術開発については、特に我が国の企業の優れた技術開発力をもってすれば、現在半ば夢と思われるような技術であっても必ずや開発されて行くと期待できるし、途上国への技術援助で識者から指摘されているいわゆる適正技術の開発についても同様に期待してよかろう。

 技術開発については少し楽観的との見方もあろうが、それはさておき、対策を実施して行くためには途上国支援を含め相当の費用がかかることが予想される。そのための財源として、炭素税、環境税など種々の議論があるが、いずれにしても何等かの形で最終的には国民の負担に帰するわけであり、国民の理解と協力とが不可欠である。

 産業界にあっては、昨年4月、経団連が地球環境憲章を制定し、環境問題に関する基本理念と行動指針を示して、産業界としても環境問題の解決に真剣に取り組むことを明確にした。まことに画期的なことである。こうした産業界の意識変革を根底で支えるのは、結局、国民の環境に対する意識であり、地球環境対策を推進する上で、国民レベルでの意識改革が重要な所以である。

 20年近く前のオイルショック時の国をあげての省エネ運動は極めて緊迫感を伴ったものであったが、意識改革という意味では、現時点では、「喉元過ぎれば」の感無しとしない。地球環境問題にからむ省資源・省エネ努力、資金負担は一時のものではなく、永続的なものである。意識改革は言葉ほど簡単ではないが、地球環境保全を大義名分として初めて可能となるのではあるまいか。

(おざわ みつよし、現在:環境庁水質保全局企画課長)