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東アジアの広域大気汚染 - 国境を越える酸性雨

環境儀 NO.12

畠山史郎/村野健太郎
東アジアにおける酸性雨問題対策のキーポイントは科学的かつ継続的な研究による知見の充実です。

 環境省が発表した第4次酸性雨対策調査取りまとめによれば,2000年度の日本全国の雨のpHの平均値は4.7と,ここ10年ほど大きな変動は見られず,依然として酸性雨は降り続いています。

 日本で観測される酸性雨は,工場などの脱硫システムが高度に発達しているため,硫黄酸化物(SOx)による硫酸系の寄与割合が他の国などの酸性雨に比べて低く,自動車から排出される窒素酸化物(NOx)による硝酸系の寄与割合が高いのが特徴です。ところが,日本海側では冬季の硫酸塩の沈着量が夏季より多いことが知られています。これらはアジア大陸から冬の季節風に乗って飛来したと考えられています。つまり酸性雨は国境を越えた問題となっているのです。このような広域に及ぶ問題の解決のためには,その因果関係を明らかにすることが必要です。

 国立環境研究所では,1990年から東アジアの広域大気汚染の科学的解明をめざした研究に取り組んでいます。本号ではその中から,モデルに用いる正確な大気汚染物質発生量を提供するための「東アジア地域における発生源インベントリーの構築」,そして初めて実施することができた中国での「航空機観測によるエアロゾル性状の空間分布測定」に関する研究を中心に紹介します。