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2018年3月2日

第3回NIES国際フォーラム、開会

NIES国際フォーラムレポート

NIES国際フォーラムとは:持続可能なアジアの未来に向けて

第3回NIES国際フォーラム参加者の集合写真
写真1第3回NIES国際フォーラム参加者の集合写真

2018年1月23日~24日に、マレーシアのクアラルンプールにて「第3回NIES国際フォーラム/3rd International Forum on Sustainable Future in Asia」が開催されました。このレポートでは会議の様子を報告していきます。

NIES国際フォーラムは、国立環境研究所を始めとして、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、アジア工科大学院(AIT)など持続可能な未来を実現するための研究を進めている研究機関からの研究成果報告と、アジアを中心とした各国の専門家による議論を促進するために2015年度から毎年開催されている会議です。

3回目となる今年は、「気候変動の適応策と緩和策」、「生物多様性」そして「環境モニタリング」の3つのテーマをとりあげました。これらはアジア太平洋地域でも重要な課題となっています。

今回の会議には、講演者含め約150名が参加しました。学生や専門家、研究者から、産業界の方々まで、多様な背景の方々に来ていただきました。

開会式の様子

渡辺理事長による開会挨拶
写真2渡辺理事長による開会挨拶

開会式では、主催機関、共催機関、開催国の研究機関の各代表から挨拶がありました。 まず、渡辺理事長が国立環境研究所や国際フォーラムの背景について紹介するとともに、環境問題を解決するための適切な行動には科学的知見が重要であることを強調しました。 続いて、開催国マレーシアの研究機関であるマレーシア森林研究所(FRIM)から、Harun副所長が所長の代理として、25年以上の長きに渡って続いてきたNIESとFRIMの協働は今後も強固なものであるという言葉がありました。さらに、共催機関である東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の福士謙介教授からは、IR3Sを紹介するとともに、持続可能な社会の実現のためには異なる学問分野を統合し、またともに行動していく必要があると述べました。同じく共催機関のアジア工科大学院の水野修氏(AIT アジア太平洋地域資源センター長)からは、山本和夫副学長の代理としてこのフォーラムが示すようなイニシアティブがより醸成し、研究活動のプラットフォームとなることに期待を添えながら、国際社会は持続可能な成長に向けてESG投資やEVシフトなどの行動に移りつつある中で、アジアからもこうした行動を誘発するような発想を発信することが重要だとしました。

基調講演

マレーシア大統領科学顧問のZakri博士による基調講演
写真3,4 マレーシア大統領科学顧問のZakri博士による基調講演

基調講演では、3名の方から講演がありました。

  • Tan Sri Zakri Abdul Hamid氏(マレーシア大統領科学顧問)
  • 住明正氏(東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 特任教授)
  • Ismail Harun氏(マレーシア森林研究所 副所長)

まず、Zakri博士の講演では、マレーシアの持続可能な未来を主な話題として、マレーシアのエネルギー政策や低炭素都市に向けた枠組みなどについて紹介がありました。Najib大統領も「Green Tech」(グリーンテクノロジー。ここでは環境に関する新しい技術の意)を今後の経済モデルの要の一つとしていることを示しました。 続いて、住特任教授の講演では、気候変動モデルの研究について発表されました。洪水や台風の発生確率の分析に関連する研究動向を共有するとともに、課題解決のための行動を起点とした研究活動や地球規模の視野から都市レベルまでスケールを落としていくことが今後さらに求められるという点を強調しました。 最後に、Harun副所長の講演では、マレーシアにおける持続可能な森林管理の現状と展望について紹介されました。全部で17あるSDGs(持続可能な開発目標)のうち6つが森林に関するものであるとしたうえで、生物多様性の保全や気候変動の緩和、水源涵養など、持続可能な森林管理の重要性を示します。マレーシアは国土の56%が森林であり、そのうち原生林の割合も高い一方で、林業は今でも重要な国内産業の一つであることから、森林管理は特に重要な課題であるとしました。 質疑応答の時間では、環境と経済のバランスをいかにして取っていくかという問題や、気候変動への適応についての課題など、多岐に渡る質問が挙がり、基調講演者との活発な議論が行われました。

会場の様子
写真5会場の様子
福士謙介教授(東大IR3S)
写真6福士謙介教授(東大IR3S)
水野理氏(AIT アジア太平洋地域資源センター長)
写真7水野理氏(AIT アジア太平洋地域資源センター長)
Ismail Harun副所長(FRIM)
写真8Ismail Harun副所長(FRIM)
住明正特任教授(東大IR3S)
写真9住明正特任教授(東大IR3S)

今後のセッションに向けて

1日目の午前のセッションでは、のちの3つのセッションにも深くつながる数々の講演とともに、質問も多くあがりました。これらの課題にどうこたえていくのでしょうか。次号では「気候変動の適応策と緩和策」のセッションについて報告します。

(文・杦本友里(研究事業連携部門)・芦名秀一(企画部国際室))
(写真・成田正司(企画部広報室))