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2014年12月9日

閣僚級会合始まる/合意文書ができるまで

 COP20に出ていて強く感じるのは、会議に関する情報の電子化がこれまでに比べて一層進んだな、ということです。COP16(カンクン(メキシコ))までは、気候変動枠組条約事務局のウェブサイトに文書がすぐにアップロードされるわけではなかったので、紙版の最終合意案ができるまで長い時間待ち、そして、それが印刷されるのを待ち、それをもらうために長い長い列に並んで待ったことを覚えています。たった4年前のことなのに、隔世の感があります。今は、ノートパソコンやタブレットがないと困りますし、さらに、それらの電池の残量を気にかけていなければなりませんが、会議で使われる紙が大幅に減り、印刷する手間がなくなったのは良いことですし、参加者としても、行列に並んだり、帰りの荷物が大幅に増えたりすることがなくなったのは、ありがたいです。

写真1

写真1:Maki。ペルー料理と日本料理とを融合させた、Nikkei料理のひとつです。サーモンとクリームチーズを巻いたお寿司と聞くとちょっとびっくりすると思いますが、とてもおいしかったです。

 そして、SNSなどの活用も一層進んでいます。FacebookのCOP20のページが作られ、会議でのできごとや写真がどんどん発信されています。今回は、スペイン語での発信が多いため、スペイン語ができない筆者には何が書いてあるのか理解できないこともしばしばありますが…。Twitterでは、多くの参加者・団体による、会議の内容、サイドイベントの内容、関連報道等についてのつぶやきがあふれています。気候変動枠組条約事務局も、会議に必要な文書、そして、参加者全員に公開されている会議や記者会見などの動画を事務局ウェブサイトにアップロードするだけではなく、全体会合等でその時点で取り上げられている議題とその関連文書についてTwitterでつぶやいたり、毎日、ビデオダイアリーをYoutubeにアップロードしたりもしています。以前に比べると、関連情報を得るための苦労は減りましたが、情報量が圧倒的に増えており、これらに目を通すだけでも一苦労です。

写真2

写真2:会議場エリアの脇に設置されているフィールドアスレチック

 さて、今日から、閣僚級会合が始まりました。交渉が膠着している問題について、政治的意思がどのように道を開き、来年のCOP21にどのようにつなげられるかが注目されます。

 閣僚級会合の開会式で、プルガル・ビダルCOP20/CMP10議長は、前向きな “リマ精神”(Lima spirit)なるものが生まれてきているとし、「世界が私達に期待している成果を実現するため、この精神を奮い立たせなければならない」と強調しました。フィゲレス気候変動枠組条約事務局長は、「インカ暦によれば、今は種蒔きの季節だが、科学の暦は、もう時間切れになりそうだと私達に警告している」とし、「今こそ、すべての人々にとって、安全、公正で、繁栄する世界をもたらすべく、私達がここリマで種を蒔く時なのだ」と強調しました。そして、サム・カハンバ・クテサ第69回国連総会議長(ウガンダ外務大臣)は、「気候変動対策を強化しないということはありえない」とし、「今、行動を起こして、カーボン・ニュートラル(筆者注:カーボン(炭素)の増減がない循環や状態のことを意味します)、気候レジリエント(筆者注:「気候変動影響にしなやかに対応できる」の意)な経済へと変革を遂げれば、将来の気候変動影響への適応のためのコストを軽減できるという知識がかすかな希望をもたらしている」と述べました。さらに、潘基文国連事務総長は、「今は、文言をこねくりまわしている場合ではない。変革する時だ」とし、「地球の平均気温上昇を2℃より下に抑えるため、すべての締約国が解決の一端を担わなければならないし、すべての社会がこれに参加しなければならない」とし、締約国に対し、とりわけ、2015年の交渉の堅実な土台として、バランスがとれていて、かつ、きちんと構成された文書案を作成し、各国が自主的に決定する約束草案(INDC)(筆者注:各国の2020年以降の気候変動対策の目標を意味します。8日の記事で詳しく解説しました)の範囲について共通の理解を形成し、そして、途上国の気候変動対策への資金支援の問題に取り組むように求めました。

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写真3:閣僚級会合開会式の一場面。伝統的なペルーのパフォーマンスのカラフルな衣装が目を引く

 また、昨日(8日)の午後から、2020年以降の国際枠組みについて議論する、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)のコンタクト・グループでは、合意文書案の改訂版に関して議論が行われています。この改訂版は、原案に、1週目に各国が出した意見や修正案などを反映させて、共同議長が作成したものです。前文に関する議論で丸一日近くを費やすこととなりました。

 今回のADPで論点になっているのは、以下の3点です。①2020年以降の国際枠組みの中でのINDCのあり方(内容、INDCを示す際に提供する情報等)、②2020年以降の国際枠組み全体の「要素」(elements)、③2020年までの気候変動対策の引き上げ、です。このコンタクト・グループで議論されている合意文書では、このうち、①と③が扱われています。

 コンタクト・グループとは、議題ごとに設置される事務レベルの小会合を意味します。参加者の関心の非常に高いADPのコンタクト・グループは、もはや「小会合」とは言えない人数で、大きな会場を使っています。政府関係者優先なので、オブザーバーは、空席の目途が立つまで、会議場の外に並んで待たなければなりません。気温が高く、日差しがとても強い日中に屋外で並ぶのは大変なこともあります。

写真4

写真4:ADPコンタクト・グループ会場の様子

 こういった会議で、合意文書は、どのように作られていくのでしょうか?一般的なプロセスについて説明すると、まずは、全体会合や初回(あるいは初めの数回)のコンタクト・グループで、議題に関して、合意案に何を盛り込むことが重要だと考えているかなどについて各国間で意見交換をし、共同議長や事務局が合意文書案を作成します。その後のコンタクト・グループから、この合意文書案の修正が行われていきます。この修正版に対し、各国が修正案を示し、なぜこの修正が必要なのか、あるいは、なぜ原案や他の修正案は受け入れられないかを説明します。今回のADPでは、各国の修正案への直接的な反対は示さないこととされ、各国による修正案が追加されていっています。この修正作業が、すべてのパラグラフ(段落)について行われ、各パラグラフに新たな修正案が出てこなくなるまで続けられます。新たな修正案も保留事項もなくなった合意文書をコンタクト・グループの合意事項として全体会合に送り、全体会合で取り上げて、異論のある国がないかを確認し、異論がなければ、これを全体会合の合意として採択します。

図1

図1:合意文書の修正作業の例。赤字は原案に付け加えられた部分。なお、この例では、今回のADPの合意文書のある時点でのあるパラグラフを使っていますが、挙げている修正案は網羅的なものではありません。(出典:筆者作成)

 今回のADPの合意文書のように、各国の関心が高く、パラグラフの数も多いものになる、合意文案の修正作業にもかなりの時間がかかります。各国が、一文一文、一語一語を真剣にチェックし、細かく修正を入れていくからです。

写真5

写真5:ADPコンタクト・グループ会場にある、傍聴者が文書の修正状況を確認するためのスクリーン。各国の修正案が見え消し付きで書き加えられていきます。

 今日は、21時頃まで、この修文の議論が続けられました。明日も10時からこの作業が続けられる予定です。

文・写真(写真3を除く):久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載