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橋本 道夫

橋本  道夫の写真

 環境政策は理論的にあるべき姿を論じている時は実に興味深い楽しい課題であるが,責任者としてその立案,形成,決定をして行く現実の過程はきわめて厳しいジレンマと時としてフラストレーションに満ちたものである。

 環境問題に永く携わってみてなぜこのようなことになるかを考えてみると,次の三つの本質的な特性内在することが分かった。

 第一は科学的不確定要素の問題である。科学的知見の獲得には分野別の科学的研究の段階と学際的な厳しさを伴った分化から統合への段階を踏んだ研究のシリーズが必要である。同時にその研究結果は公表されて学問的な批判検討にさらされていることも必要である。

 第二は問題に対する認識と判断の多様性の存在である。全く相反するものも当然に存在する。問題の認識と判断とは何かということも科学研究のテーマであろう。認識と判断を基礎として,問題に対する決定と反応や行動が表れる。行動の科学や,文化人類学や倫理,道徳等が重要になってくる。

 第三は問題を巡る利害,政策,選好,思想,信条の相異と,それゆえに避けられない複雑な葛藤である。政策決定者は政策の成否に利害を賭けた人やグループの識別と理解が求められるが,何に,何故,何を賭けているのかということは現実には複雑な問題である。これをいかに同定するかということは,政策決定過程と戦略にとって不可欠な問題である。

 この三つの要素が複雑にからみあって社会的相互関係を生じている過程の中で,政策の立案,形成,決定が行われる。その場合どのようなプラスやマイナスや調整と合意等の社会的ダイナミックスが生じてくるかということは,政策決定を行うものにとって極めて重要なことである。この場合,政策決定者にかかわる者のうちで誰がどのような役割りと責任,能力をもってやるかというオリエンテイションが必要である。科学者,行政,政治,市民,マスコミなど当事者をかこむさまざまな人々がある。政策決定の責任をすべて自分一人で背負い込むことは立案と形成の過程でやるべきではない。しかし,最後の決断は政策責任者が自分でやらなければならない。参加とか参画というのは政策の立案と形成と決定案をまとめるまでの課題である。

 決定案には当然選択肢があり,いくつかの判断条件を明らかにしなければならない。科学的判断条件とともに包括的な判断条件があり,後者が日本の論議に欠けている場合が多い。

 来年京都で開かれる気候変動枠組条約の締約国会議で2000年以降の温室効果ガスの削減目標の形成に日本がどのよな役割りを果たすことができるかというのは当面の重要な具体的課題である。国立環境研究所の研究による貢献に強く期待している。

(はしもと みちお)

執筆者プロフィール:

1924年大阪生まれ。保健所,大阪府庁,厚生省で公衆衛生を。次いで公害行政をOECD,環境庁で担当。筑波大学教授を経て,ILEC, IPCC, GEF等国際協力に従事。〈専攻〉環境政策