- 予算区分
- 学術変革領域研究(A)
- 研究課題コード
- 2226CD004
- 開始/終了年度
- 2022~2026年
- キーワード(日本語)
- 数値海洋モデリング,海洋低次生態系モデル,粒子追跡モデル,非静力学海洋モデル
- キーワード(英語)
- Numerical ocean modeling,Marine lower trophic ecosystem model,Particle tracking model,Nonhydrostatic ocean model
研究概要
非静力学海洋モデルに適合格子細分化を実装し、沿岸域における流動場及び溶存・浮遊物質の輸送・拡散過程に作用する様々な微小スケール素過程を包括的に扱うことを可能とする先駆的なマルチスケール海洋モデリングシステムを構築する。これを日本沿岸全域に適用し、他の計画研究班によって定量化された陸水・陸起源物質と外洋側境界条件を与えて駆動することで、陸域-外洋域間の双方向の物質輸送・拡散・消費・変質過程の全貌を網羅的にシミュレートする。陸水流入に同調して投入した多数の粒子群を追跡し、その軌跡と経験環境履歴を解析することで、陸域を起源とする栄養物質がいつ・どこで・どれだけ生物生産に消費さたか、消費されなかったものはどこにいくのかの全体像を明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
研究領域は陸域から外洋までをシームレスにつなぐモデリングシステムを構築することで、日本沿岸域の高生物生産を支える栄養物質の起源と行方を俯瞰的に追跡することを目指している。本計画研究はこのモデリング基盤の整備(プログラムコードの開発)において主たる役割を担う。完成したモデリングシステムに他計画研究で定量化される「陸水(河川水と地下水)流入及び含まれる陸起源物質」と「外洋側の物質濃度分布」を入力として与えることで、日本沿岸全域をカバーする高精細・マルチスケールシミュレーションを実現し領域研究の推進に貢献する。本計画研究では特に微小スケール素過程それぞれの寄与の量的な評価に重点を置き、粒子追跡手法を駆使することで栄養物質がその循環経路上のいつ・どこで・どれだけ・どのようなプロセスにより希釈及び消費されるかを明らかにする。
研究期間5年を3期に分割し、それぞれの達成目標と担当者を次のように設定する。
第1期(1年目〜2年目前半):
1)沿岸モデリングシステムの力学コア開発
2) 物質追跡のためのサブルーチン開発
3) 素過程把握のためのプロセスモデリング研究
第2期 (2年目後半〜3年目):
1)システム構築
2)観測データによるモデル検証
第3期(4〜5年目):
1)日本全域モデル運用
2)ダウンスケールモデル運用
3)素過程の定量評価
4)陸起源物質粒子追跡のラグランジュ解析
今年度の研究概要
昨年度までに開発しプロダクトランの運用を開始した日本全域 1/180度解像度モデルを基盤として活用し、粒子追跡手法による日本沿岸全域での物質輸送・拡散過程の評価と、特定海域をターゲットとした非静力学ダウンスケールシミュレーションによるプロセス研究という時空間スケールの異なる2つの研究テーマを平行して実施する。
前者では新たに開発した、海洋中の窒素循環を粒子によって追跡するオイラー-ラグランジュハイブリッド型海洋低次生態系モデルを日本近海全域に網羅的に適用し、特に沿岸域での高い生物生産を支える栄養物質の起源とその供給経路を網羅的に明らかにする。また沿岸域での生産に消費された窒素が陸棚域での堆積・溶出を経て再度生産に寄与するまでのサイクルを陽にモデル化してその実態を量的に評価する。
後者では領域内および参画する別研究課題と連携し、大阪湾・大槌湾・利根川河口域を対象とする数値実験を行い、現場観測との比較により再現性を検証する。溶存酸素や底質過程等の要素モデルを順次組み込み、河口-湾-沿岸域を対象とした非静力学ダウンスケールモデルの構築を進める。
その他技術的な取り組みとして、今後の高性能計算の主流となることが確実なGPUアーキテクチャへの数値海洋モデルの移行を推進する。
外部との連携
東京大学大気海洋研究所・海洋研究開発機構・北海道大学低温科学研究所・水産研究・教育機構水産工学研究所に所属する研究分担者と連携して実施する
- 関連する研究課題
課題代表者
松村 義正
- 地域環境保全領域
海域環境研究室 - 主任研究員


