- 研究課題コード
- 2526AN002
- 開始/終了年度
- 2025~2026年
- キーワード(日本語)
- 生物多様性,里地里山,音響モニタリング,超音波
- キーワード(英語)
- biodiversity,SATOYAMA,Acoustic monitoring,ultrasonic waves
研究概要
音を用いた指標生物や音景指数(NDSIのような野生生物由来の音と人間活動由来の音の比等)の定点自動観測が発展しつつあるが、陸域では鳥類を対象として可聴音を用いたものが主であり、超音波情報は十分に使われていない。しかし、ワンヘルスや生物季節、文化的サービスの観点から重要なコウモリ類や昆虫類には、超音波を発するものがあり、超音波を含むフルスペクトル録音によってより高精度で包括的な音響生物観測が可能なはずである。特に、環境の不均一性が高いために生態系管理も比較的小さい空間範囲を単位として行われる状況ではその有効性が期待できる。可聴音より減衰しやすく観測範囲が比較的小さくなるという短所が緩和されるからである。
本研究では、超音波域を含む音響観測を通して、コウモリ類やセミ類、キリギリス類等の超音波を発する生物種について、可聴音のみの観測の場合よりも適切にAIによる種分類が可能かを検討する。また、AIによる個々の種分類モデルは学習データの影響を受けやすく地域特有のものになりがちなため、他地域でも適用可能で包括的な指数である音景指数の提案をめざす。そのために、従来の可聴音ベースの音景指数を改良して、フルスペクトル情報によってAI種分類が改善された種群の発声に特徴的であった周波数帯の情報をより反映した指数を算出し、生物種数との相関を検証する。超音波を発する生物の情報を含むことで、可聴音ベースのものよりも包括的な生物多様性評価指標となることが期待される。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
フルスペクトル(20kHz以上の超音波域を含む音域)の録音が可能な野外録音装置を、つくば本部や福島拠点敷地内等に配備し、環境音を記録し、AI(深層学習)モデル用学習・検証データセットとして、得られた音声ファイルの一部を聞き取り、生物種が発する音にタグ付けを行う。
各種について、超音波域情報を含む音声ファイルと削除したファイルでそれぞれAIモデルの学習を行って検証用音声ファイルに対する予測精度を比較し、超音波域を含む学習で改善が見られた種の情報を得る。
さらに、超音波域の情報を含むことで深層学習モデルの改善が見られた種について発声域(周波数帯)を確認し、それらが反映されるように既存の音響指数(NDSIあるいはその関連指数)を改良する。
今年度の研究概要
・フルスペクトル(20kHz以上の超音波域を含む音域)の録音が可能な野外録音装置を、つくば本部や福島拠点敷地内に配備し、環境音を通年記録(一日当たり1時間に1回以上の頻度で1分間以上録音)する
・AI(深層学習)モデル用学習・検証データセットとして、得られた音声ファイルの一部を聞き取り、生物種が発する音にタグ付けを行う
・各種について、超音波域情報を含む音声ファイルと削除したファイルでそれぞれAIモデルの学習を行って検証用音声ファイルに対する予測精度を比較し、超音波域を含む学習で改善が見られた種の情報を得る
外部との連携
沖縄科学技術大学院大学(OIST)
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