- 研究課題コード
- 2527CD004
- 開始/終了年度
- 2025~2027年
- キーワード(日本語)
- 火山灰,カルシウム,ストロンチウム同位体比,石灰岩
- キーワード(英語)
- Volcanic ash,Calcium,Strontium isotopes,Limestone
研究概要
森林土壌に、カルシウムやカリウムなどの無機養分元素を供給する母材は基盤岩である、という考え方は広く受け入れられている。しかし我々は、母材のカルシウム含有量が乏しい花崗岩、チャート、砂岩などを基盤岩とする地域では、数万年前の噴火起源で土壌中に堆積している火山灰が、森林の渓流水や植物へのカルシウム供給源として、基盤岩に匹敵するほど重要であることを明らかにしてきた。さらに、比較的カルシウム含有量が高い斑レイ岩の地域でも、火山灰由来カルシウムの植物への寄与が高いことを観測している。そこで、本研究では「基盤岩のカルシウム含有量が最も高い石灰岩地域でも、土壌中の火山灰が植物への主要なカルシウム供給源となりえるか?」を検証することを目的とする。この仮説が正しかった場合、日本の森林の多くは、土壌中にある火山灰が植物への養分供給源として重要な役割を果たしていることを示すものとなる。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
渓流水と岩石の調査:地質図上で石灰岩が分布し、周辺の農地に黒ぼく土が存在する地域(茨城県日立、栃木県葛生、埼玉県武甲山、 東京都奥多摩、など)において、岩石、川床礫、渓流水を採取し、元素分析とSr同位体比分析を組み合わせることにより、石灰岩が存在することを確認する。森林土壌中の火山灰の存在は現地アロフェンテストにより確認する。石灰岩と火山灰が存在することが確認でき、かつ数種類の草本・木本植物が繁茂している調査地を選ぶ。
植物・土壌・降水の調査:複数の植物を採取し、乾燥粉末を全分解した試料の元素組成とSr同位体比を分析する。植物採取地点で土壌コアを採取し、同様に分析する。降水は、調査地で定期的に1年間採取した降水を降水量で重みづけして混合し、元素組成とSr同位体比を分析する。
植物への火山灰起源Caの寄与評価:Sr同位体比を用いて、Srの供給源である岩石、火山灰、降水、およびSrの供給先となる植物、渓流水の大小関係を調べることにより、火山灰由来成分の植物への影響を定性的に示す。その後、土壌−植物系をCaとSrが同じように動く仮定に基づき、エンドメンバーである岩石・火山灰・降水と、植物の Ca/Sr比 および Sr同位体比 を利用して、いろいろな植物におけるCaの起源解析を行い、基盤岩のCa含有量が最も高い石灰岩地域でも、土壌中の火山灰が植物への主要なCa供給源となりえるか?を検証する。
今年度の研究概要
2025年度は調査地選定のための予備調査を行う。調査地が満たすべき条件は、植物へのCaとSrの供給源である岩石、火山灰、降水のSr同位体比が十分に離れた値をもつこと、次年度の植物調査に適した植物が生育すること、渓流と土壌が存在することである。Sr同位体比は、火山灰と降水については今年度は文献値を参考にし、岩石を実測する。地質図上で石灰岩が分布し、周辺の農地に黒ぼく土が存在する地域(茨城県日立、栃木県葛生、埼玉県武甲山、 東京都奥多摩、など)において、岩石、川床礫、渓流水を採取し、元素分析とSr同位体比分析を組み合わせることにより、石灰岩が存在することを確認する。森林土壌中の火山灰の存在は現地アロフェンテストにより確認する。石灰岩と火山灰が存在することが確認でき、かつ数種類の草本・木本植物が繁茂している調査地を選ぶ。
外部との連携
総合地球環境学研究所
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