- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 2427CD007
- 開始/終了年度
- 2024~2027年
- キーワード(日本語)
- トレーサビリティー,共生微生物,バイオマーカー
- キーワード(英語)
- Traceability,Symbiotic microbe,Biomarker
研究概要
ヨウム(Psittacus erithacus)はアフリカ原産の希少大型インコで絶滅危惧種で商取引が禁止されているが、ペット需要を満たすための密猟と密輸が横行したことが絶滅にいたる原因である。一方、飼育下繁殖個体の取引は禁止されていないため、登録書の偽造や出生ロンダリングが横行している。本研究は、これまで科学的研究がほとんど行われてこなかったヨウムのゲノム解析、腸内細菌解析および消化管寄生虫解析を駆使することによって、ほとんど知られていなかった野生ヨウムの地域個体群の遺伝特性、食物の違いによる腸内菌叢構成変化、特異的な消化管寄生虫の有無と系統を明らかにすることを目的としている。このように,微生物生態学、微生物遺伝学、動物遺伝学的アプローチから「飼育下繁殖個体」と「野生個体」を判別する複合的バイオマーカー(生物学的指標)を抽出し,総合的に飼育下個体と野生個体を判別することができれば、研究の社会実装としてヨウム取引規制に関わる判別技術として世界的スタンダードとなりうる。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
ヨウム(Psittacus erithacus)はアフリカ原産の希少大型インコで絶滅危惧種で商取引が禁止されているが,ペット需要を満たすための密猟と密輸が横行したことが絶滅にいたる原因である.一方,飼育下繁殖個体の取引は禁止されていないため,登録書の偽造や出生ロンダリングが横行している.本研究では,「動物の複合的バイオーム(現在)を詳細に情報化することによって,動物が辿った軌跡(過去)を高精度に推測することができるか」を核心をなす学術的「問い」に設定し,個体の構成要素である「宿主細胞」と「共生微生物」の構成パターンからヨウム取引規制に関わる判別技術の指標となる知見を得る.具体的には,ヨウム糞便から(1)共生腸内細菌,(2)共生原虫・寄生虫,(3)糞便由来宿主腸粘膜上皮細胞から採取するゲノム情報を得た後,それらを統合し駆使することで野生捕獲個体(=密猟・密輸個体)か,法令を遵守して人工的に生産された飼育下繁殖個体かを判別する事を目指す.
今年度の研究概要
本年度はまず,ウガンダでの野生捕獲個体(押収個体や保護個体)からの試料採取と,ゲノム解析の最初の立ち上げを他の研究者と共同して行う.これまでのウガンダでの経験から,4〜6月に多くの野生保護個体がウガンダ野生生物保全教育センター(研究協力期間)に搬入されるため,野生由来試料の採取のために上記期間に渡航する.また共生微生物の分離や生化学試験を行う.加えて,ウガンダでの微生物ゲノム解析の立ち上げに参加する他,ウガンダでの解析をオンラインでサポートし,協力体制を整える.
外部との連携
本研究は,科学研究費助成事業(科研費)の国際共同研究加速基金(海外連携研究) として,中部大学応用生物学部の土田さやか 准教授が研究代表者として全体を総括する.また,ウガンダおよび国内飼育個体のヨウムの遺伝子解析全般は,中部大学応用生物学部および独立行政法人日本学術振興会 特別研究員RPDの橋戸南美 客員研究員が担当する.国立環境研究所生物多様性領域の鈴木亮彦 特別研究員は,研究分担者として,ウガンダおよび国内飼育個体の共生微生物の遺伝子解析全般を行う.加えて,本研究の海外共同研究者として,マケレレ大学獣医学部の研究者および大学院生とも協力し実験を進める.国内飼育ヨウム個体からの試料採取には,各園館の獣医師および飼育員の協力を得て実施する.
課題代表者
鈴木 亮彦
- 生物多様性領域
生態リスク評価・対策研究室 - 特別研究員