- 予算区分
- 5−2201
- 研究課題コード
- 2224BA011
- 開始/終了年度
- 2022~2024年
- キーワード(日本語)
- 化学物質,繁殖毒性,ウズラ,OECDテストガイドライン
- キーワード(英語)
- chemical substances,reproductive toxicity,Japanese quail,OECD test guideline
研究概要
本研究では、哺乳類にはない体外に卵を産むという鳥類の特性を生かして、ウズラ受精卵(胚)へ直接的に被験物質を曝露する手法(卵内投与試験法)を開発する。現行の鳥類繁殖毒性試験の国際試験法(OECDテストガイドライン206)においてデメリットとなる、費用、効率性、再現性および動物福祉などの課題を克服するために、化学物質の鳥類卵内投与による性分化異常評価手法の確立を目指す。本研究において開発する試験法が実用化できれば、化学物質の安全性評価の効率化に寄与するだけでなく、成鳥を犠牲にすることがないので、動物実験の削減にも大きく貢献すると考えられる。また、鳥類繁殖影響が生じるメカニズムの解明や現生する野生鳥類の化学物質へのリスク評価に向けた応用・波及効果が期待される。さらに、化審法における第一種特定化学物質への指定を検討する際のスクリーニングや農薬の鳥類慢性影響評価の導入可否の判断等の化学物質管理行政への支援が可能となる。現在、鳥類毒性試験法開発のリード国はないため、国際的な調和・連携を図りながら、鳥類性分化異常を評価するための新たなテストガイドライン化に向けて、科学的知見の集積と提供を行うものである。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:政策研究
全体計画
本研究は、1)生殖器(精巣・卵巣・副生殖器)、2)生殖細胞(精子・卵子・始原生殖細胞)および3)脳における有害性評価に焦点を当てた3つのサブテーマで構成され、胚形成期における鳥類の性分化過程を詳細に把握するとともに、初期胚において迅速に性分化異常を検出するための有害性評価指標(エンドポイント)の探索と確立を目指す。化学物質による異常について、初期胚での各種臓器・細胞の形態形成、性分化に関連する遺伝子発現および性ステロイドホルモンレベル等について調べるとともに、その後の孵化個体の性成熟期における不可逆的な異常との関連を検証する。いずれのサブテーマにおいても連携して陽性対照物質を用いたエンドポイント候補への影響を調べ、開発試験法の再現性と適格性を検証する。最終的には、鳥類胚から成鳥の繁殖影響を予測することが可能なエンドポイントを確立し、鳥類繁殖影響評価のための新たなテストガイドライン化に向けて、科学的知見の提供を行う。
サブテーマの構成と分担機関は以下の通りである。
サブテーマ1: 生殖器における性分化異常の検出(国立環境研究所)
サブテーマ2: 生殖細胞における性分化異常の検出(北海道大学)
サブテーマ3: 脳における性分化異常の検出(埼玉大学)
今年度の研究概要
サブテーマ1:テストガイドライン化に向けた試験デザインの構築
新たな鳥類OECDテストガイドラインとして提案するために、卵内投与による性分化異常評価手法としての具体的な試験デザインについて、サブテーマ2と3の結果も含め、供試材料、投与方法、エンドポイントおよび解析法等の構成案をまとめる。
サブテーマ2:生殖細胞の性分化異常を検出する分子マーカーの開発
曝露した被験物質に対して発現が変化する遺伝子を明らかにし、表現型の特徴と遺伝子の特性から性分化異常と細胞死に分類する。最終的に、その発現量の程度と性分化異常の重篤化の相関関係を検証する。これらの結果から、生殖細胞の性分化異常マーカーが、開発テストガイドラインにおけるエンドポイントとなり得るかを判定する。
サブテーマ3:開発試験法より得られるデータの信頼性評価
胚期に化学物質を曝露した成熟ウズラの脳組織と性行動を解析して曝露量と性分化異常の量-反応関係を明らかにし、開発試験法による解析結果との整合性を検証する。これらの結果から、脳の性分化異常マーカーが、開発テストガイドラインにおけるエンドポイントとなり得るかを判定する。
外部との連携
黒岩麻里(北海道大学)、水島秀成(北海道大学)、小川湧也(北海道大学)、塚原伸治(埼玉大学)
- 関連する研究課題
- : 環境リスク・健康分野(イ政策対応研究)
課題代表者
川嶋 貴治
- 環境リスク・健康領域
環境リスク科学研究推進室 - 主幹研究員
- 博士(理学)
- 生物工学,生物学,畜産学
担当者
-
TIN-TIN-WIN-SHWE環境リスク・健康領域
-
鈴木 武博環境リスク・健康領域