- 予算区分
- 食品健康評価技術研究
- 研究課題コード
- 2324KZ001
- 開始/終了年度
- 2023~2024年
- キーワード(日本語)
- ベンチマークドーズ,ベイズ,毒性学
- キーワード(英語)
- Benchmark dose,Bayes,Toxicology
研究概要
健康影響評価における定量的なリスク評価の指標である許容一日摂取量等を見積もるための根拠であるPODについては、研究計画時の設定条件に依存するNOAELより、統計的な解析を通して得られるベンチマークドーズ法の方が客観性の高い指標が得られると考えられている。ベンチマークドーズを用いた解析手法は、WHOの「食品中の化学物質のリスク評価の原則と手法:EHC 240」の用量相関に関する第5章の改訂(2020)においてベイズ的アプローチが推奨されたことから、近年EUや米国でこの手法を取り入れたソフトウェアが開発され、公開されたところである。ベイズ的アプローチのベンチマークドーズ法の妥当性については、先行研究で明らかにされてはいるが、未だ実際の行政的な評価への適用事例は乏しく、実用上の課題に関する知見は不足している。現在、食品安全委員会の評価技術企画ワーキンググループで議論が続けられているベンチマークドーズ法の活用に関する指針においては、動物試験で得られた用量反応データへの適用に関して、モデル平均化を第一選択とするところまでは取り纏められているが、WHOやEU等が推奨しているベイズ的アプローチを本格的に指針に取り込むところまでには至っていない。その主な理由はベイズ的アプローチの理論的な妥当性は明らかにされてはいるが、これまでの頻度論的アプローチを用いた手法とそのソフトウェアと比べて実用例が乏しく、新規のアプローチで得られた結果の解釈に対する経験と検証が必要であることによると考えられる。本研究において得られる実験データセットを用いた検証結果と事前確率分布に対する感度分析や、統計学的解釈の知見を充実させることで、従来の頻度論的アプローチによるベンチマークドーズ法と同等レベルで行政的に適用できるようになると考えられる。さらに、本研究班では、新規のベイズ的アプローチを用いたソフトウェアを適用する際の課題を明らかにすることに限られるものの、得られた成果を用いて、現状の二値データを中心とした指針にとどまっている指針に対して、連続値データや疫学データへと適用する際に解決すべき具体的な課題の提案や、モデル平均化が適切でないときの条件や単一モデルを選択するために必要な判断条件等の未解決の課題解決に必要な解析研究の糸口を作ることが期待できる。
研究の性格
- 主たるもの:行政支援調査・研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、実際にリスク評価に利用された実験データセット等を用いて、近年公開されたベンチマークドーズソフトウェアを用いて、事前確率分布などの計算パラメータの設定を変更した際の推定値の違い等を検証した結果を取り纏めて、実際の評価の際に問題となるような論点を整理することを目的とする。初年度は、各ソフトウェアのデフォルト設定を用いてBMDLの計算結果の比較を行うと共に、各ソフトウェアにおいて、事後確率分布や計算結果の収束の成否に影響を与える事前確率分布の設定等に関する基礎的解析を行う。次年度は、前年度解析結果に基づいて事前確率分布の条件を変えた場合のBMDL計算結果に大きく影響を与える実験データセットを用いて検証する。また、検証計算結果の解析を受けて、BMDLの結果に与えた事前分布の因子に対する詳細な解析と計算結果の収束化やモデル平均化の適切性の判断に影響を与える実験データの特徴などに関する解析を行う。これらの計算結果と解析結果から実用上の課題を取り纏め、リスク評価における実用化の促進を目指す。
今年度の研究概要
今年度は、既存ソフトウェアにおけるベイジアンモデル平均化の計算結果について、事前分布および候補モデルの設定の違いが与える影響の感度分析を実施する。また、各ソフトウェアでの計算結果に大きな隔たりが起こる条件を整理する。これらの結果をもとに、ベイジアンモデル平均化を用いてベンチマークドースを推定する際の課題を特定する。
外部との連携
国立医薬品食品衛生研究所の松本真理子室長が研究代表者である。
- 関連する研究課題
- 26424 : PJ5_包括健康リスク指標と包括生態リスク指標の開発に関する研究
- : 環境リスク・健康分野(イ政策対応研究)
課題代表者
林 岳彦
- 社会システム領域
経済・政策研究室 - 主幹研究員
- 理学博士
- 生物学