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海洋流出マイクロプラスチックの物理・化学的特性に基づく汚染実態把握と生物影響評価(令和 6年度)
Study on Microplastic Pollution and Ecotoxicological Impact in Aquatic Environments Based on Physico-Chemical Characterization

予算区分
1-2204
研究課題コード
2224BA004
開始/終了年度
2022~2024年
キーワード(日本語)
マイクロプラスチック,海洋プラスチックごみ,汚染実態,生物影響,物理化学的特性
キーワード(英語)
microplastic,marine plastic litter,pollution,ecotoxicological impact,physico-chemical characterization

研究概要

 海洋マイクロプラスチック(MP)による海洋汚染は、国際社会で対処すべき喫緊の課題となっている。2019年6月のG20大阪サミットでは2050年までにMPを含む海洋プラごみによる追加的な汚染をゼロにすることが合意された。2022年3月に開催された国連環境総会(UNEA)では、プラごみ対策を求める条約等の国際的な取り決めを制定するための各国が参加する委員会を設け、2024年までに協議を終えることが合意されている。
 海洋プラごみ削減にむけては、素材代替や流出抑制対策の優先順位の検討に資する海洋流出量の推計が重要である。国連環境計画は、MPの環境流出量を年間301万トンと試算し、自動車タイヤ粉じん、都市粉じん等が多いと推計した。国内では、環境省が海洋プラ流出量推計を進めており、1mm以上5mm未満のMPの流出インベントリ整備を進めている。
 海洋MPは、陸域発生源から河川を通じて直接的に海洋流出するもののほか、海洋を漂流している或いは沿岸に漂着したプラごみが紫外線や熱等による劣化を通じて微細化したもの、海流によって国外から輸送されるものがあり、物理・化学的特性が排出源や環境中の履歴で大きく異なると考えられる。しかし、MPの存在実態や物理・化学的特性を把握する研究は進んでおらず、これらを考慮した毒性試験や実態に即した生態リスクの評価も行われていない状況にある。
 本研究では、汚染実態を考慮した生態リスク評価に基づいて優先的に流出抑制対策を講じるべきMPを特定することを目的として、陸域・沿岸域・海洋の5µm以上5mm未満のMPを対象として、存在実態と物理・化学的特性を評価して汚染実態を明らかにすると共に、既報の流出インベントリや海洋検出事例に基づいて選定した高懸念MPのモデル生物による生物影響評価を実施して個体に影響を及ぼす濃度を算出する。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 本研究では、目的達成のために、2つのサブテーマを設定する。
 サブテーマ1では、日本全国の地方環境研究機関(地環研)と連携して、気候区分や土地利用形態等が異なる様々な河川や流出海域において、河川下流域表層水、河口・海洋表層堆積物、海岸・湖岸表層砂、海洋・湖表層水を採取して、流出状況を含めた汚染実態の一体的な評価を目指す。MP測定では、5µm以上5mm未満のMPを対象とした採取・測定方法を開発し、ポリマー同定に加え、AI(人工知能)を活用した鑑定・分取システム(AIシステム)による形状や色の数値化、劣化分析による劣化度評価、ノンターゲット分析による添加剤評価、細胞アッセイによる影響指標評価を導入して、MPの物理・化学的特性を明らかにする。最終的に、これらの情報に基づいてMPの分類を行って地点毎のMPの存在実態や特徴を明らかにする。
 サブテーマ2では、環境流出量が多い自動車タイヤ粉じん、海洋検出事例が多いポリオレフィン系粒子状MPやポリエステル繊維状MPを高懸念MPと位置づけて模擬試料を調製して、AIシステムによる粒子サイズ・形状別の分取と劣化・水溶解度に着目した前処理で調製した投与用試料について、物理・化学的特性を把握した上で生物影響を評価する。これにより、高懸念MPの生物に影響を及ぼす濃度、生物移行性や体内残留性と共に、その影響要因を明らかにする。終局的には、サブ1と2の結果に基づいて、環境流出MPの生態リスクを評価し、存在実態、特徴や影響要因を考慮したリスク管理の観点で優先的に流出抑制対策すべきMPの明示を試みる。

今年度の研究概要

サブテーマ1では、地環研と連携して、河川下流域表層水、河口表層堆積物、海岸・湖岸表層砂、海洋・湖表層水の採取を引き続き実施すると共に、データを積み上げて、一般性や特徴を考察し、環境流出MPの汚染実態を明らかにする予定である。
サブテーマ2では、魚類と甲殻類によるPPの曝露試験を継続するとともに、繊維屑の作製とその有害性評価を実施して、タイヤ、PP、繊維屑といったMPの生物影響を明らかにする。

外部との連携

産業技術総合研究所地質調査総合センター、愛媛大学沿岸環境科学研究センター、鹿児島大学水産学部、株式会社ブリヂストンGサステナビリティ部門・先端材料部門、プラスチック工業連盟、日本化学繊維協会技術グループ、北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部エネルギー・環境・地質研究所、岩手県環境保健研究センター、山形県環境科学研究センター、千葉県環境研究センター、長野県環境保全研究所、広島県立総合技術研究所保健環境センター、山口県環境保健センター、高知県衛生環境研究所、福岡県保健環境研究所、沖縄県衛生環境研究所

関連する研究課題

課題代表者

鈴木 剛

  • 資源循環領域
    資源循環基盤技術研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生化学,化学
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担当者