- 研究課題コード
- 2224CD008
- 開始/終了年度
- 2022~2024年
- キーワード(日本語)
- 交換性カチオン,森林土壌,ストロンチウム同位体,セシウム同位体
- キーワード(英語)
- exchangeable cations,forest soils,strontium isotopes,cesium isotopes
研究概要
土壌中の陽イオンは、土壌粒子の表面に吸着して水に溶けやすく植物に吸収されやすい形態と、土壌粒子に強く結合して容易に水に溶けない形態で存在する。前者は交換性カチオンと呼ばれ、日本では pH 7 に調整した 1 Mの酢酸アンモニウム溶液で土壌を1時間程度抽出する方法で分析されているが、これは中性で均質な農地土壌への適用がもとになっているため、酸性で不均質な森林土壌については最適化が必要である。
本研究では、森林土壌の抽出条件に応じて起源や存在部位の異なる陽イオンが抽出される様子を、ストロンチウムやセシウムの同位体比を使って解析することにより、森林土壌に最適な交換性カチオン抽出法を提案する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究では、母岩および火山灰の混入程度が異なる森林土壌を採取し、各種抽出法による溶出液の87Sr/86Sr比を分析する。また、原発事故由来137Csが検出される試料については137Cs/133Cs比も分析する。森林土壌は以下の4地域で採取した試料を用いる:母岩がチャートで火山灰が混入している土壌(栃木県雨巻山)、母岩が砂岩で火山灰が混入している土壌(栃木県雨巻山)、母岩が花崗岩で火山灰が混入している土壌(茨城県筑波山、福島県飯舘村)、母岩がチャートで火山灰が混入していない土壌(岐阜県伊自良湖地域)。
抽出法は、1M 酢酸アンモニウム水溶液を抽出液として、抽出液のpH、抽出時間、固液比、濾過法を比較する。また、Sr同位体比分析法について、前処理時の乾固方法、Sr分離方法、機器分析法を比較する。
上記実験により得られた87Sr/86Sr比から起源、137Cs/133Cs比から吸着場所を推定することで、従来の母岩起源で溶解・脱離しにくいカチオンまで抽出される条件と、火山灰起源で溶解しやすく土壌に弱く結合しているカチオン(一般に交換性カチオンと想定されている形態)だけが抽出される条件の境界を明らかにする。この後者が、植物が吸収できる移動性画分という意味において、森林土壌の交換性カチオンの分析条件として最適であると考えられる。
今年度の研究概要
本研究では、母岩および火山灰の混入程度が異なる森林土壌を採取し、各種抽出法による溶出液の87Sr/86Sr比を分析する。また、原発事故由来137Csが検出される試料については137Cs/133Cs比も分析する。2023年度までに1M 酢酸アンモニウム水溶液を抽出液として、抽出液のpH、抽出時間を変化させる実験を行ったが、抽出液の分析が完了しなかった。今後は抽出液のSr同位体比およびCs同位体比を分析し、実験により得られた87Sr/86Sr比から起源、137Cs/133Cs比から吸着場所を推定することで、従来の母岩起源で溶解・脱離しにくいカチオンまで抽出される条件と、火山灰起源で溶解しやすく土壌に弱く結合しているカチオン(一般に交換性カチオンと想定されている形態)だけが抽出される条件の境界を明らかにする。この後者が、植物が吸収できる移動性画分という意味において、森林土壌の交換性カチオンの分析条件として最適であると考えられる。
外部との連携
総合地球環境学研究所