- 研究課題コード
- 2125AX147
- 開始/終了年度
- 2021~2025年
- キーワード(日本語)
- 放射性セシウム,モニタリング,福島第一原子力発電所事故,環境中多媒体物質
- キーワード(英語)
- radiocesium,monitoring,Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident,multi-media substances in environment
研究概要
2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故は、発生から10年以上を経過した現在においても福島県中通り・浜通り地域を中心とした生態圏に広域の放射能汚染をもたらしている。本研究課題では、原発事故発災直後より国立環境研究所で実施してきた森林・河川・湖沼・大気における放射性物質、特に放射性セシウムの環境動態を引き続き観測し、土壌・水・生物・大気粉じんなどの多媒体における放射性セシウム濃度を対象とした環境半減期の評価、季節変動の把握、大規模水害前後の環境影響評価、および各媒体間の移行実態の解明を行う。これらの観測結果およびデータの解釈については学術論文・データベース等を通して公開し、将来的な原子力災害への備えとしての環境政策への貢献、および福島県を中心とする原子力災害被災地域の環境回復促進への寄与を大きな目標とする。
研究の性格
- 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
(1)森林生態系における汚染状況と循環・流出特性の経年変化の評価
福島県宇多川、太田川流域、ならびに筑波山森林試験地内の森林集水域で優占する樹種林分(スギやヒノキ、マツ、広葉樹)を対象とした年に1回程度の土壌調査によって、森林土壌における放射性セシウムの平面・鉛直分布と存在形態等の経年的な変動傾向を把握する。あわせて、林内雨や落葉物、下層植物に含まれる放射性セシウム濃度の測定によって、森林生態系における放射性セシウム循環特性に関する知見を集積する。また同地域における森林渓流水の経時観測ならびに降雨流出時を対象とした連続採水調査を行い、懸濁物質との吸着形態の検討を含めた放射性セシウム流出特性に関する知見を集積する。
(2)河川・ダム湖沼における汚染状況の経年変化の評価
福島県宇多川、真野川、太田川および小高川を対象に、自動水文連続観測と月に1回程度の河川連続採水調査を実施し、各河川流域における形態別放射性セシウム濃度の把握および放射性セシウム流出量の推定を行う。また、観測期間中に生じた大規模豪雨による放射性セシウムのフロー・ストックへの変動の影響について評価を行う。また、福島県相双地域の主要なダム湖沼(松ヶ房ダム、真野ダム、横川ダム)を対象に不撹乱の湖底堆積物を2年に1回程度採取し、放射性セシウムの分布や存在形態の経年変化について把握を行う。
(3)水生生物への放射性セシウムの移行特性評価
・福島県太田川ならびに真野ダム等を対象に、年4回程度、淡水生態系を構成する各栄養段階の生物(プランクトン、水生昆虫、貝類、魚類等)を採取し、汚染レベルや食性など生態学的特性を考慮した放射性物質の蓄積特性を調査し、流域における放射性物質の生物を介した動態を明らかにするとともに経年変化の傾向を把握する。
・茨城県の霞ヶ浦において湖水を年4回採水し汚染状況の把握、減少過程の長期的変化(特に減少過程)と季節的変化とその要因について分析する。また、年3〜4回、魚類や甲殻類を採集し、移行係数の算出などを行い、生物相互作用・食物網を通じた放射性物質の長期的な動態を明らかにする。
(4)大気粉じん・室内じんの放射性セシウム動態評価
対象地域は福島県飯舘村内を中心とする。月1回の定期的な大気中の放射性セシウム濃度のモニタリングと、営農再開にむけた諸活動や周辺での山火事等の事象の大気への影響を検証する。また、これまで飯舘村で採取した室内じん試料等を用い、室内じん中放射性セシウムの動態解析を行う。
今年度の研究概要
(1)森林生態系における汚染状況と循環・流出特性の経年変化の評価
福島県宇多川、太田川流域、ならびに筑波山森林試験地内の森林集水域で優占する樹種林分(スギやヒノキ、マツ、広葉樹)を対象とした年に1回程度の土壌調査によって、森林土壌における放射性セシウムの平面・鉛直分布と存在形態等の経年的な変動傾向を把握する。あわせて、林内雨や落葉物、下層植物に含まれる放射性セシウム濃度の測定によって、森林生態系における放射性セシウム循環特性に関する知見を集積する。また同地域における森林渓流水の経時観測ならびに降雨流出時を対象とした連続採水調査を行い、懸濁物質との吸着形態の検討を含めた放射性セシウム流出特性に関する知見を集積する。リターの湿式酸化処理によるリターからのセシウム溶出リスクの低減効果の検討を行う。
(2)河川・ダム湖沼における汚染状況の経年変化の評価
福島県宇多川、真野川、太田川、小高川、請戸川および秋元湖流入・放流河川を対象に、自動水文連続観測と月に1回程度の河川連続採水調査を実施し、各河川流域における形態別放射性セシウム濃度の把握および放射性セシウム流出量の推定を行う。また、観測期間中に生じた大規模豪雨による放射性セシウムのフロー・ストックへの変動の影響について評価を行う。また、福島県相双地域の主要なダム湖沼(松ヶ房ダム、真野ダム、横川ダム)、潟湖(松川浦)、および耶麻郡の秋元湖を対象に不撹乱の湖底堆積物を採取し、放射性セシウムの分布や存在形態の経年変化について把握を行う。
(3)水生生物への放射性セシウムの移行特性評価
・福島県太田川ならびに真野ダム等を対象に、年4回程度、淡水生態系を構成する各栄養段階の生物(プランクトン、水生昆虫、甲殻類、貝類、魚類等)を採取し、汚染レベルや食性など生態学的特性を考慮した放射性物質の蓄積特性を調査し、流域における放射性物質の生物を介した動態を明らかにするとともに経年変化の傾向を把握する。
・茨城県の霞ヶ浦において湖水を年3〜4回採水し汚染状況の把握、減少過程の長期的変化(特に減少過程)と季節的変化とその要因について分析する。また、年3〜4回、魚類や甲殻類を採集し、移行係数の算出などを行い、生物間相互作用・食物網を通じた放射性物質の長期的な動態を明らかにする。
(4)大気粉じん・室内じんの放射性セシウム動態評価
対象地域は福島県飯舘村内を中心とする。月1回の定期的な大気中の放射性セシウム濃度のモニタリングを行う。また、これまで飯舘村で採取した室内じん試料等を用い、室内じん中放射性セシウムの動態、変動要因解析を行う。
外部との連携
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 舟木 泰智・吉村 和也・佐久間 一幸
福島大学環境放射能研究所 和田 敏裕・金指 努
福島県内水面水産試験場 猪俣 絢女
特定非営利活動法人 ふくしま再生の会
備考
本研究課題は、前中期における研究課題『多媒体環境における放射性物質の動態解明及び将来予測』(旧課題コード:1620AS003, 2016-2020年)を引き継ぐものである。
- 関連する研究課題
- 26430 : PJ2_被災地域における環境影響評価及び管理研究
- : 災害環境分野(ウ知的研究基盤整備)