- 予算区分
- 基盤B
- 研究課題コード
- 2426CD001
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- 代謝,猛暑,気候変動,冷水性淡水魚,環境DNA
- キーワード(英語)
- metabolism,heatwave,Climate change,Cold-water freshwater fish,eDNA
研究概要
気候変動下において、湖沼や河川では極端な高水温現象が頻発し、それが原因と疑われる冷水性淡水魚の大量死や漁獲量の低下が報告されている。水温上昇は魚類の代謝コストを増大させ、本来成長に投資すべきエネルギーを奪う。そのため魚類は、成長と生存率を維持するために摂餌量を増やす、あるいは高水温域から移動することを余儀なくされる。したがって、高水温が冷水性淡水魚の存続性に与える影響を理解するためには、魚類の高水温に対する代謝応答に加えて、餌資源の動態と魚類の移動特性を踏まえて統合的な解析を行う必要がある。本課題では、霞ヶ浦(閉鎖性水域)の水産有用魚ワカサギ(高水温域に耐える必要有)と猿払川流域(開放性水域)の絶滅危惧種イトウ(高水温域から移動可能)を対象に、酸素消費速度の測定、高頻度水温観測、長期観測データと環境DNAによる餌資源の定性・定量、同じく環境DNAによる魚類の季節移動パターンの推定を行う。その上で生物エネルギー収支モデルを用いて、過去から現在、さらに将来への水温環境が2魚種の成長・生存に与える影響を明らかにする。本研究により、気候変動下での冷水性淡水魚の保全や資源管理を効果的に行う知見を獲得し、適応策の提言に貢献する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
本課題では、気候変動による高水温環境が冷水性淡水魚に与える影響を代謝の観点から捉える。その上で、魚類の餌資源の長期変動と魚類による空間利用(移動)パターンが、高水温の影響とどのように関係するかを明らかにする。そして湖沼と河川の異なる生態系で、高水温の与える影響や魚類による影響回避の戦略を比較する。これらを目的に、下記3つ課題に取り組む。
課題1:様々な水温で魚類の酸素消費速度を簡便かつ効率的に測定するチャンバーシステムを開発する。ワカサギとイトウの代謝速度を測定し、高水温に対する代謝コストを定量する。
課題2:生物エネルギー収支モデルを用いて、高水温が霞ヶ浦のワカサギの成長に与える影響を調べる。国内屈指の長期観測データを用いて、水温と餌資源量の変動をモデルに入力する。高水温化の進行によって、ワカサギの成長や生存可能性がどのように変化するかを明らかにし、代謝コストを補償する上で必要な餌資源量を推定する。さらに、餌資源を巡る種間競争の有無を調べるため、安定同位体を用いた食物網解析を行い、ワカサギと食性の近い魚種を特定する。
課題3:河川、海跡湖、沿岸を回遊するイトウが、夏季に、どのハビタットを利用しているか、また水温や餌資源量のハビタット間の違いが回遊行動にどのように連動するかを明らかにする。イトウの流域内分布と餌資源の季節変化を環境DNAにより推定する。広域的な水温環境と餌資源の違いをエネルギー収支モデルに組み込み、高水温がイトウの成長と生存にどのように影響するか予測する。
今年度の研究概要
様々な水温で魚類の酸素消費速度を簡便かつ効率的に測定するシステムを開発する。霞ヶ浦・北浦に生息するワカサギ、北海道猿払流域に生息するイトウの代謝速度を測定し、水温と代謝速度の関係を明らかにする。また、イトウについては環境DNAを用いた空間分布の把握も行う。
- 関連する研究課題
- 26418 : PJ4_生態系の機能を活用した問題解決に関する研究
- 26454 : 生物多様性分野(ア先見的・先端的な基礎研究)
- : 気候変動適応分野(ウ知的研究基盤整備)