- 予算区分
- 若手研究
- 研究課題コード
- 2125CD006
- 開始/終了年度
- 2021~2025年
- キーワード(日本語)
- 気候モデル,エルニーニョ・南方振動,大気海洋相互作用
- キーワード(英語)
- climate model,El Nino-Southern Oscillation,ocean-atmosphere interactions
研究概要
多くの数値気候モデルは、エルニーニョ・南方振動(ENSO)の発達に関わる諸過程が弱すぎるにもかかわらずENSOの海面水温・降水量の変動幅が現実的に表現されてしまう問題を抱えている。しかし、ENSOの諸過程にある系統誤差の根本的要因はまだ分かっていない。本研究では、数値気候モデルにモデル化された熱帯の雲・降水過程の系統誤差がENSOの諸過程の系統誤差をもたらす仕組みを、海面水温変動に伴う大気応答が気候モデルと観測とで整合しないことに着目した多数の気候モデル実験結果のデータ解析や気候モデルによる数値実験の実施に基づいて理解することを目的とする。これにより、気候モデルにおいてENSOの諸過程と雲・降水過程の再現性の向上させる手法を提案でき、また地球温暖化に伴うENSOの将来変化のより正確な予測を提示できると期待される。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
研究の1-2年度目に、世界の数値気候モデル(CMIP6など)の多くの実験出力から、気候モデルのENSOに伴う雲・降水変動およびENSOの成長過程に関わるフィードバックの系統誤差を定量化する。例えば、多くの気候モデルについてENSOの代表的な指標と大気変数の線型回帰係数を計算して、そのばらつきをもたらす要因を分析する。また、研究の1-3年度目には、ENSOの海面水温と雲・降水の変動の関係を制約するモデルパラメータがあるかについての調査を進める。例えば、東大/国立環境研/JAMSTECの気候モデルMIROC6など特定の気候モデルによる多様な実験を実施することで、雲・降水変動の再現性を決めるモデルパラメータを模索する。研究の4-5年度目には、雲・降水関係のモデル化の正確さがENSOの将来変化の予測を左右するかを調査する予定である。例えば、ENSOの振幅や構造の地球温暖化に伴う将来変化を、大気の諸過程の再現性に着目して気候モデルを分類することで比較することが考えられる。
今年度の研究概要
研究2年度目に引き続き、CMIP6などの多くの気候モデルの間でENSOに関わる大気の諸過程に含まれる系統誤差を定量化し、大気の諸過程の気候モデル間でのばらつきを平均場バイアスなどと関係付け、系統誤差をもたらす要因を特定することを目標とする。研究成果を国際学術誌で発表する。平均場バイアスと系統誤差の関係を明らかにするために数値モデル実験を予定している。
課題代表者
林 未知也
- 地球システム領域
地球システムリスク解析研究室 - 主任研究員
- 博士(理学)
- 理学 ,物理学,数学