- 予算区分
- 基盤研究B
- 研究課題コード
- 2124CD004
- 開始/終了年度
- 2021~2024年
- キーワード(日本語)
- 妊娠期曝露,ヒ素,精子,次世代シークエンス
- キーワード(英語)
- Gestational exposure,Arsenic,Sperm,Next generation sequencing
研究概要
化学物質曝露が次世代やさらにそれ以降の世代にまで健康に悪影響を及ぼすという多世代・継世代影響が指摘されているがその詳細はほとんど明らかになっていない。申請者らは、妊娠マウス(F0)に無機ヒ素(ヒ素)を飲水投与すると、産まれた仔世代(F1)の精子DNAにおいてDNA全体のメチル化が低下するという現象を見出した。本研究では、精子の形成段階に着目し、妊娠期のヒ素曝露が、どの段階でF1精子DNAのメチル化変化を誘導するのか、そのメカニズムの一端を明らかにする。さらに、妊娠期ヒ素曝露によるF1精子DNAでのメチル化変化が、どの世代まで、どの部位で継承されるのかを検討する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、妊娠期のヒ素曝露がどのようなメカニズムでF1精子DNAにメチル化変化を誘導するのかを、精子形成過程でのメチル化変化に重要な役割を果たす前精原細胞、A型精原細胞に着目し、DNAメチル化変化・遺伝子発現変化の解析から、メカニズムの一端を明らかにし、さらに、妊娠期ヒ素曝露によるF1精子DNAでのメチル化変化が、どの世代まで、どの部位で継承されるのかを検討することを目的とする。
2021年度
妊娠8日〜18日に85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (NaAsO2)を飲水投与したC3Hマウス (ヒ素群) 及び対照群から得た、仔世代 (F1)、孫世代 (F2)、ひ孫世代(F3)の17週齢のオスから精子ゲノムDNAを抽出する。これまでに確立した条件により、Reduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)ライブラリを作成し、次世代シークエンス解析をおこなう。F2及びF3のDNAメチル化変化とF1で観測されたDNAメチル化変化とを比較し、DNAメチル化変化が、どの世代まで、どの部位で伝わるのかを明らかにする。また、前精原細胞、A型精原細胞の単離法の条件を検討する。
2022〜2024年度
前年度までに決定した条件により単離した各種細胞からDNAを抽出し、RRBSライブラリを作成後、次世代シークエンス解析をおこなう。精子DNAにどの段階でヒ素曝露によるメチル化変化が起こるのかを明らかにする。また、メチル化が変化した遺伝子について、細胞株でトランスフェクションやノックダウンをおこない、エピジェネティック関連因子に与える影響を解析する。
今年度の研究概要
昨年度までに確立した前精原細胞、A型精原細胞の単離条件を用いて、DNAメチル化解析用のサンプルを調製する。具体的には、前精原細胞は、妊娠18日目のマウス胎児精巣から抗Thy1抗体が結合した磁気ビーズを用いて単離し、A型精原細胞は、生後6日目のマウス精巣から抗CD49f抗体が結合した磁気ビーズを用いて単離する。単離した前精原細胞、A型精原細胞からDNAを抽出し、RRBSライブラリを作成し、次世代シークエンス解析をおこなう。
ヒ素曝露により世代を超えて継承される精子ゲノムメチル化変化部位の同定については、前年度から引き続き、妊娠期ヒ素曝露したC3Hマウス (ヒ素群) 及び対照群の、仔世代 (F1)、孫世代 (F2)、ひ孫世代(F3)の17週齢オス精子ゲノムのDNAメチル化解析をおこなう。プロモーターやエクソンといったゲノム領域だけではなく、遺伝子領域にも着目し、F2及びF3のDNAメチル化変化とF1で観測されたDNAメチル化変化とを比較する。DNAメチル化変化が、どの世代まで、どの部位で伝わるのかを明らかにする。
- 関連する研究課題
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