- 予算区分
- 若手研究
- 研究課題コード
- 2325CD008
- 開始/終了年度
- 2023~2025年
- キーワード(日本語)
- 気候変動,沿岸生態系,適応
- キーワード(英語)
- climate change,coastal ecosystem,adaptation
研究概要
海洋の沿岸域では海水温の上昇や海面上昇、海洋酸性化といった物理化学環境の変化に加えて、サンゴ礁や藻場の衰退、生物の分布域のシフトといった現象が日本国内の多くの地域で観測されている。そのため、これらの環境や生態系を適切に保全するとともに、影響を軽減するための適応策の重要性が認識されつつある。離島地域では漁業や観光業といった産業が重要な役割を果たすが、同時に豊かな自然景観や生物相の特徴から国立・国定公園などの保護区に指定されることが多く、資源の利用と管理を両立することが不可欠である。今後沿岸域の資源を持続的に活用していくためには、現在の利用や管理の状況を正確に把握すると同時に、地域規模で将来の変化を予測することが課題である。さらにこれらの情報を踏まえて、改めて地域の資源をどのように利用・管理していくかを議論していく必要がある。この目標を達成するため生態学的および社会学的な以下の項目を組み合わせた研究を実施する。(A)環境・生態系に関する現地調査、(B)環境・生態系に関する地域規模の将来予測、(C)利用や管理に関する情報収集と現地調査、(D)現地関係者への認識調査と適応策の社会実装に向けた課題の整理、(E)これらの情報を統合した地域ごとの保全・適応策の検討。本研究では対馬暖流域に位置し水温の異なる複数の島嶼域を対象にすることで、温暖化による環境・生物相の変化を効率的に把握することを目指す。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究の最大の目的は「沿岸域における気候変動影響を予測評価し、社会実装を見据えた地域ごとの適応策を検討すること」である。この目的を踏まえて、以下の5つの項目を地域ごとに明らかにすることを目指す。(A)市町村よりも詳細な空間解像度で環境・生態系の時空間変動を明らかにする。(B)環境・生態系に関する地域規模の将来予測を実施する。(C)地域での沿岸生態系の利用や管理に関する情報を収集する。(D)気候変動に対する現地関係者への認識を把握するとともに適応策の社会実装に向けた課題を整理する。(E)これらの情報を統合し地域ごとの保全・適応策を検討する。この目的の実現のため沿岸域の環境、生態系といった自然科学だけでなく、利用や管理、認識といった社会科学的なアプローチを併用して研究を進める。
今年度の研究概要
2023年度は現地における環境・生態系の調査を開始するとともに、調査地の概要の把握として、気象・海象や行政文書等のデータを収集、解析する。また、それぞれの地域においてどのような利害関係者が存在するかを整理する。
課題代表者
阿部 博哉
- 気候変動適応センター
アジア太平洋気候変動適応研究室 - 研究員
- 環境科学博士
- 水産学,生物学