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合理的な処分のための実機環境を考慮した汚染鉄筋コンクリート長期状態変化の定量評価(令和 4年度)
Quantitative Evaluation of Contamination in Reinforced Concrete Members of Fukushima Daiichi NPP Buildings Considering the Actual Environment Histories for Legitimate Treatments

予算区分
ZZ 個別名を記載 国家課題対応型研究開発推進事業(英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業)
研究課題コード
2022ZZ003
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
コンクリート,放射能汚染,セシウム,ストロンチウム,ひび割れ,イメージングプレート
キーワード(英語)
concrete,radioactive contamination,cesium,strontium,crack,imaging plate

研究概要

福島第一原子力発電所(1F)の事故に伴い汚染した建屋コンクリートは、将来的に解体され、放射性廃棄物となる。事故の影響を受けた1〜4号機のコンクリート廃棄物量は、原子炉建屋、タービン建屋を合わせて約80万tonと推計されるとの報告もある[1]。大量の発生が見込まれるコンクリート廃棄物の処理・処分方法を検討する上で、建屋内の汚染状況の推定は極めて重要である。事故後の建屋内には複数の放射性核種(Cs、Sr、α核種等)が存在し、またコンクリートの部材によって核種との接触状態が異なるため、核種の分布や浸透状況も異なると想定される。例えば、地震によって構造的な影響を受けたコンクリート部材では、表層からの浸透の他、ひび割れからの水の侵入によって汚染する。この時、ひび割れが鉄筋位置まで到達していた場合には、海水に浸漬したひび割れたコンクリートでは、核種イオンがひび割れに沿って奥深くに浸透し、鉄筋に沿った浸透も認められていることから、鉄筋そのものの汚染や変質の影響が懸念される。一方で、建屋内部では核種や水分の浸透を抑制する被覆材が部分的に施されている場合も多いが、被覆材がない場合、コンクリート表面は中性化(炭酸化)しているので、Cs/Srは表層に濃集することが、申請者らの研究でも明らかになっている。すなわち、高濃度の汚染箇所は部材全体のごく表層のみで、部材によっては内部まで核種が浸透していない可能性は確認されているが、ひび割れや鉄筋に沿う元素移動の程度については定量的な情報はほとんどなく、除染や廃棄物の濃度別分別においては不確実性が極めて大きい。
 本研究では、廃炉作業の設計、すなわち建屋内除染、建屋の解体作業および廃棄物処理処分の計画を策定する際に必要となる、汚染状況の推定情報に基づいた原子炉建屋内の各鉄筋コンクリート部材における汚染濃度分布定量予測データベース構築を目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

これまでに実施してきた「放射性物質によるコンクリート汚染の機構解明と汚染分布推定に関する研究(H29〜R1年度英知事業)」で得たセメント系材料における放射性核種(以下、単に核種)の浸透・収着挙動に関する基礎的な知見と、本書で提案する、実際の鉄筋コンクリート部材の状態を考慮した放射性核種の長期的な浸透・溶出挙動の解明により、汚染鉄筋コンクリートの除染・処理・処分等を行う際の基盤資料に必要なコンクリート部材の物量を、汚染濃度別に定量的に予測する。
 定量的物量予測に向けて、本研究では、1.核種の長期挙動シミュレーションに向けたひび割れ幅・深さと密度を含むコンクリート部材の状態設定(評価対象)、2.部材の状態を考慮した核種の浸透挙動解析手法の開発(浸透実験に基づく数値解析モデル化)、3.実際の核種の種類・濃度(境界条件)を考慮した収着/浸透挙動評価、4.処理・処分を見据えたコンクリート廃棄物の状態検討(例えば、高濃度汚染の位置、深さ、除染による汚染の再移動の可能性、等)を行う。これらの研究により、現実のコンクリート部材の汚染状況の推定情報が提示される。この汚染状況の推定情報に基づき、部材別・汚染濃度別に分類し物量を定量的に予測することで、合理的な建屋内除染、建屋の解体作業および廃棄物の処理・処分計画が策定でき、最終的な廃棄物発生量を抑制できる。また、汚染の現実と、核種移行とセメント・コンクリート材料科学の最先端知見を融合させた研究の遂行により、実際の長期的廃炉業務に貢献できる研究者を育成する。

今年度の研究概要

1Fに使用された骨材と同じ産地の川砂利を用いたコンクリートにひび割れを導入し、炭酸化、乾燥状態から、実際の事故の状況、すなわち津波による海水浸漬、海水と混合した炉心からの汚染水という条件を再現した浸漬試験を行う。2021年度に開始した履歴再現条件での各種浸漬試験の1年材齢を評価する。この結果を通し、イオン交換と不可逆的吸着がイオン浸透に与える影響を考察する。また、IPの定量精度の改善も継続する。

外部との連携

丸山一平東京大学大学院工学系研究科教授が研究代表者である。そのほか、日比野陽名古屋大学環境学研究科准教授、東條安匡北海道大学工学研究院准教授、細川佳史太平洋セメント株式会社中央研究所研究員、渋谷和俊株式会社太平洋コンサルタントソリューション営業部員、駒義和国立研究開発法人日本原子力研究開発機構福島研究開発部門福島廃止措置技術開発センター技術主幹が、研究分担者である。

課題代表者

山田 一夫

  • 福島地域協働研究拠点
    廃棄物・資源循環研究室
  • フェロー
  • 博士(工学)
  • 材料工学,工学,地学
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