- 研究課題コード
- 2222AV002
- 開始/終了年度
- 2022~2022年
- キーワード(日本語)
- ビタミンD,太陽紫外線,妊婦,赤ちゃん,欠乏
- キーワード(英語)
- Vitamin D,Solar UV-B radiation,Pregnant women,Baby,Deficiency
研究概要
最近、日本人の特に若年女性の間でビタミンD不足が問題となってきている。その原因の一つとして、紫外線の有害性を恐れるあまり日光浴を忌諱する風潮が考えられる。適度な日光浴によりビタミンDは十分生成できるはずであるが、その指針は国内各機関も現時点では明確に示せていない。申請者らはこれまでに、太陽紫外線から1日の生活に必要なビタミンDを体内で生成するために必要な日光浴時間を計算で求める手法の開発を行ってきた。本研究では研究を進め、関東の産婦人科病院を受診する妊婦と新生児を対象に、アンケートによって得た直近の日光浴時間を実際の近隣の紫外線観測データと合わせて解析することで、体内で生成したと思われるビタミンD量を推定する。これと実際に妊婦や新生児の血液中で測定されたビタミンD濃度の相関関係を導出する。そのことによって、日本各地で各季節に、健康のためにはどの程度の日光浴が必要かという知見を得ることが出来るものと期待される。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:政策研究
全体計画
オゾンホール発見以降、多くの女性は紫外線の有害性とともに美容的な観点からも太陽光を嫌い、日光照射を避けるようになった。そのことにより、太陽光紫外線による体内での必要不可欠なビタミンDの生成阻害が生じ、近年の日本人若年女性では慢性的にビタミンD不足になっていると報告されている。ビタミンD生成の観点からは、皮膚や目などに有害な影響を与えない範囲で適度なUV-B照射を受けるのが望ましいが、その量を見積もるのは簡単なことではない。地上に達するUV-B強度は、場所・季節・時間などで決まる太陽天頂角や、天候、上空のオゾン量、エアロゾル量といった多くの要素によって変化するからである。申請者らはこれまで、皮膚に悪影響が及ばない範囲で1日の健康な生活に必要な10 μgのビタミンDを生成する紫外線照射時間を計算する「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」というシステムを構築してきており、日本各地11ヶ所(落石岬、陸別、札幌、青森、つくば、横浜、名古屋、大津、大阪、宮崎、波照間)における紫外線計測データをもとに、準リアルタイムの日光照射時間データの提供を行ってきている(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/)。
今年度の研究概要
今年の計画では、順天堂大学練馬病院を受診した妊婦さんと出産後6ヶ月の赤ちゃんを対象にアンケートと血液検査を行い、直近の日光照射時間とビタミンD含有食品の摂取量と、体内のビタミンD濃度との相関解析を行う。アンケート結果をもとに、直前2週間の外出履歴と日光照射時間と、実際にその日の直近の観測点における紫外線強度データから、対象者の体内で産出されたと想定されるビタミンD量を計算する。これと、血液検査から求められた実際の体内ビタミンD量の相関を解析する。このことにより、計算によるビタミンD生成量と実際の体内ビタミンD量の間に、どのような相関があるのかを解析する。さらに、食事によるビタミンD摂取量もアンケート調査によって推定し、食事と日光のどちらからより効率的にビタミンDを摂取できているかを推定する。その結果、母体と赤ちゃん双方に骨折やくる病など、ビタミンD不足が由来の疾患にかからないレベルのビタミンD量を維持するために必要な日光浴時間の目安を示すことが可能となると考えられる。本研究によって、実際の太陽照射と体内ビタミンD量の有意な相関関係が得られれば、世界的に見ても初となる画期的な知見となる。
外部との連携
順天堂大学附属練馬病院・准教授 坂本優子
慶應義塾大学政策・メディア研究科・特任助教 本田由佳
- 関連する研究課題
- : 地球システム分野(ウ知的研究基盤整備)
- : 地球システム分野(イ政策対応研究)
課題代表者
中島 英彰
- 地球システム領域
気候モデリング・解析研究室 - 特命研究員
- 博士(理学) (1993.3 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)
- 地学,理学 ,物理学
担当者
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佐々木 徹