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カラマツ林における太陽光誘起クロロフィル蛍光による光合成推定:モデルと観測の融合(令和 4年度)
Estimation of photosynthetic activity using solar induced chlorophyll fluorescence in a larch forest: Linkage of modeling and observations

予算区分
若手研究
研究課題コード
2223CD003
開始/終了年度
2022~2023年
キーワード(日本語)
クロロフィル蛍光,放射伝達モデル,群落構造,カラマツ
キーワード(英語)
chlorophyll fluorescence,radiative transfer model,canopy structure,Larch

研究概要

気候変動の将来予測のために生態系CO2吸収量の観測精度向上が鍵である。そこで陸上植物の光合成による生態系CO2吸収量(総一次生産量)を求めるため、高分解能分光放射計を用いて太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)リモートセンシングを行う。この際に3次元放射伝達モデルを用いてSIFの林冠幾何・分光特性に起因する林冠構造依存性を解析することで、モデル・観測を融合させたより頑強な光合成推定を目指す。本研究ではユーラシア東部の重要な生態系タイプであり今後変動が注目されるカラマツ林(富士北麓)の観測タワーを利用し、SIFの変動要因と林冠構造依存性を明らかにし生態系CO2吸収量の推定精度を向上させる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

1: 高分解能分光観測によるSIF変動要因の解明(R3-R5):山梨県富士吉田市富士北麓Fluxサイト(FHK:35.4度N, 138.8度E)の観測タワーにおいて2021年初頭より実測される分光スペクトルデータ(波長分解能 0.4 nm)からSIFを導出する。同サイトの既存の分光放射計(波長分解能 10 nm)および校正光源とのクロスチェック、関連する植生指数をもとめるプログラムを作成する。さらにSIFの日変動、季節性の解析を行う。基本的に受光した太陽光の大きさに依存してSIFが時系列変動を示すことを確かめる。SIFと葉面積の季節変動を解析し、気象要因(気温・相対湿度・雲量・極端イベント・長雨)との比較から長期的な制限要因を明らかにする。
2: 3次元放射伝達モデルSIFシミュレーションによるSIFの林冠構造依存性の究明(R4-R5):林分データ、個葉・土壌スペクトルなどのデータを観測、共同研究者(国立環境研・海洋研究開発機構)やデータベースから収集し、カラマツ林の放射伝達モデルを構築する。パルス変調法(PAM)による蛍光や個葉光合成速度を現地観測し、モデルのパラメータに取り込む。現実に則した3次元林冠構造のモデルと1次元的な構造のモデルの比較、幾何配置(林冠遮蔽率・方位・葉分布)と分光変数(同化・非同化組織・地表スペクトル、蛍光シグナル応答関数)の感度分析から林冠構造にともなう検出されるSIFの変動要因を明らかにする。
3: 観測データとモデルの融合によるSIFによる光合成量の推定精度向上(R4-R5):富士北麓サイトのフラックス観測との相関解析からの単純な経験的モデルと、林冠構造依存性と光合成シグナルを識別する観測・モデル融合による光合成モデル手法を開発することによりCO2吸収量の見積もりを行う。フラックス観測や既往植生指数による見積もりとの比較から、光合成指標としての精度を向上させる。研究成果を国内外に発表する。

今年度の研究概要

2023年にかけて富士北麓FluxサイトのSIF連続観測を実施する。観測維持のメンテナンスおよびセンサ校正のため現地調査を行う。3次元放射伝達モデルの入力パラメータ収集を完了させ、モデル出力を行う。また共同研究者からのフラックス・微気象データを利用することでSIFによるCO2吸収量の推定についての解析を進める。さらに年度末にかけては、主に観測についての結果をまとめ成果発表を目指す。前年度に不足していた自然条件下の蛍光スペクトルを実測する。季節化をとらえるために最大年4回の現地観測を予定する。しかしコロナ等の状況によっては現在手元にあるデータを極力利用して研究を推進させる。

外部との連携

分担なし、協力:北海道大学、海洋研究開発機構

関連する研究課題

課題代表者

両角 友喜

  • 地球システム領域
    衛星観測センター
  • 特別研究員
  • 博士(環境科学)
  • 地学,農学,理学
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