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大気モデルを用いた観測体制検討とGHG収支評価(令和 4年度)
GHG budget estimation and observation strategy planning using an atmospheric model

予算区分
SII-8
研究課題コード
2123BA009
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
温室効果ガス,逆解析,大気輸送モデル,炭素循環
キーワード(英語)
greenhouse gases,inverse analysis,atmospheric transport model,carbon cycle

研究概要

パリ協定のもとで進められる温室効果ガス排出削減には「最良の科学」に基づく評価が必要とされている。大気観測から大気輸送モデルを用いて二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの地表面フラックスを推定する逆解析は、その科学的評価の有力な手法であるが、実際の排出削減評価の単位となりうる地域、国、大都市といったスケールでの研究は世界的にも日が浅く、早急に進める必要がある。実際、世界気象機関の全球大気監視計画では、IG3ISと呼ばれるプロジェクトを立ち上げ、大気輸送モデル研究の国際コミュニティであるTransComと協同して人為起源排出推定に関する研究を奨励している。また、欧米でも複数のプロジェクト(欧州のCO2 Human Emission Projectなど)が立ち上がり、当該分野の研究が強力に推し進められている。しかし、最も経済発展が著しく排出が大きいアジアを対象とした研究プロジェクトは存在しないため、当該地域において最も広く観測網を展開する我が国が主導して研究を推進する意義は大きい。アジアは吸収・排出源が複雑に混在するため、フラックスを空間的に詳細に分離可能とする高解像度の大気輸送モデルが必要不可欠である。また、アジアでは観測空白域が多く存在するため、さらなる観測の展開が必要である。さらに、我が国においては排出が集中する大都市圏の排出をも推定可能とする観測網も望まれている。
 そこで本研究では大気輸送モデルの高解像度化を図り、大都市や国・地域における温室効果ガスの吸収・排出推定を行う手法の確立を目指す。さらに、現状の観測網が持つ情報量を定量的に評価するとともに、さらなる観測の充実、最適化にむけて、地点や頻度、精度などの観点から、今後の有効な観測展開について提案を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

低・高解像度の大気輸送モデルNICAM-TMを組み合わせたマルチスケールの総合的な解析システムを構築する。低解像度による解析では30年以上の長期にわたって従来よりも高い解像度(120km格子間隔)で逆解析を行う。一方、高解像度では大都市からの排出把握が可能な14km以下の格子間隔とし、対象領域外からの流入をもモデル内で計算するために全球一様格子またはストレッチ格子を用いてアジア・太平洋地域をターゲットとしたシミュレーションを行う。ダウンスケーリングなどを介してこれら低・高解像度モデルを融合させる。さらに、速報性を重視した解析体制を整え、テーマ3で作成するレポートや国際的なGHG収支解析プロジェクトにデータを提供し、グローバルストックテイクに資する科学的根拠を蓄積して環境政策に貢献する。
GHGフラックス推定に対する観測データのインパクトを定量的に把握するための評価手法を確立する。確立した手法を用いて、アジア・太平洋地域、また国内における観測のフラックス推定に対する寄与度を把握する。人為起源排出変化の検出可能性に着目し、高解像度シミュレーションを通して、現状の観測網の有効性を明らかにする。さらに、タグ付きトレーサー実験やOSSEを実施し、アジア・太平洋地域から日本国内において有効な観測について具体的な提案(手法、位置、頻度、精度等)を行い、サブ2と協同して新たな観測を展開して収支推定の向上に貢献する。

今年度の研究概要

引き続きCO2およびCH4の長期逆解析を実施し、収支の長期変動やトレンドの解析を行い、得られたデータをテーマ3や国際比較プロジェクトに提供する。さらに120kmへと解像度をあげた逆解析に着手する。長期逆解析で得られたフラックスをダウンスケーリングして高解像度モデルに入力し、シミュレーションを実施する。各観測データのインパクトの定量的評価を行う。さらに、低解像度モデルを用いた全球OSSE、また、都市・国を対象とした高解像度モデルによるOSSEを開始する。

外部との連携

気象研究所

課題代表者

丹羽 洋介

  • 地球システム領域
    物質循環モデリング・解析研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(理学)
  • 理学
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担当者