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ネパールの希少種に致死感染症は侵淫しているか?生物多様性ホットスポットの保全科学(令和 4年度)
Is lethal infectious disease spreading into endangered species in Nepal? Conservation Science in Biodiversity Hotspots

研究課題コード
2224CD014
開始/終了年度
2022~2024年
キーワード(日本語)
希少種,感染症,ネパール
キーワード(英語)
endagered species,infectious disease,Nepal

研究概要

本研究の目的は、アジアの生物多様性ホットスポットの一つであるネパールにおいて、絶滅に瀕する希少動物(国際自然保護連合(IUCN)レッドリストに掲載されている絶滅危惧種)に致死感染症が侵淫しているか、既に侵淫している場合にはその程度(感染率)および伝播ルートを明らかにすることである。また、従来の学問体系では別々に行われてきた生態学と感染症学の融合により保全科学という新しい学問を切り開き、世界的にみて貴重な生態系(亜熱帯域から高山帯域までを含む)の重要な構成要素である生物多様性の保全に対して学術貢献することをめざす。具体的には、アジアゾウやインドサイなどネパールを代表する希少動物に対して、致死的な感染症(結核症やゾウ内皮向性ヘルペスウイルス感染症など)が
どの程度侵淫しているかを、次世代シークエンサーを用いた高感度DNA検出系により突止め、
カメラ付GPS首輪を使った行動追跡やカメラトラップ法により得られる生態情報(他動物との接触頻度、行動圏、移動ルートおよび密度)を加味して絶滅リスク評価を試みる。これらの研究により、ネパールの希少動物での致死感染症の侵淫状況や感染ルートが明らかになるとともに、ほとんど手つかずの生態学的情報が飛躍的に増え、生態学と感染症学からのアプローチを融合することにより生物多様性の保全に貢献する科学的な新知見が得られる。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

1.野生アジアゾウでの結核感染の実態解明:近年ネパールでは、飼育下アジアゾウに結核
が感染し、死に至るケースが増えている。アジアゾウは観光および役務用に飼育されているが、繁殖方法としては、野生の雄ゾウが飼育下の雌ゾウの発情を検知し、交尾することで産子が得られている。交尾のために野生雄ゾウと飼育雌ゾウが頻繁に接触し、それが結核感染を広げている可能性がある。これまでに野生ゾウでの感染の実態はまったく解明されていない。本研究では、野生アジアゾウにおける結核症の侵淫状況および感染ルートを明らかにする。
2.野生インドサイ、シカおよびアンテロープでの結核感染の実態解明:野生インドサイで
1例、シカとアンテロープ各1例ずつMycobacterium orygisによる結核感染
の報告がある。とくに野生インドサイの死亡例は既に野生個体への侵淫を示唆するものであり、感染実態を早急に解明する必要がある。本研究では、インドサイ、シカおよびアンテロープにおける結核症の侵淫状況および感染ルートを明らかにする。
3.野生アジアゾウでのゾウ内皮向性ヘルペスウイルス(EEHV)感染症の実態解明:
ネパールでは、アジアゾウでEEHVの抗体検査が行われたが、詳細な侵淫状況については明らかになっていない。本研究では、野生アジアゾウでのEEHVの侵淫状況と感染ルートを明らかにする。
4.絶滅危惧動物の生態の解明:野生アジアゾウ、インドサイ、アンテロープ等の希少動物
を捕獲し、カメラ付GPS首輪を装着して他動物との接触頻度、移動ルートや行動圏等の生態を明らかにする。さらに自動撮影カメラを設置してカメラトラップ法により密度を算定する。
5.希少動物の感染症による絶滅リスク評価:希少動物への致死感染症の侵淫状況ならびに
生態学的情報(行動圏、移動ルートおよび密度)に基づき絶滅リスク評価を試みる。

今年度の研究概要

ネパール国内に分布するインドサイの存続可能性分析に必要な基礎情報(繁殖開始年齢、産仔数、推定死亡率等)の収集を行う。また、すでに報告したインドサイのゲノム情報を活用し、免疫関連遺伝子の構造解析に着手する。

外部との連携

北海道大学

課題代表者

大沼 学

  • 生物多様性領域
    生物多様性資源保全研究推進室
  • 室長(研究)
  • 博士(獣医学)
  • 獣医学,生物学
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担当者