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小規模金採掘(ASGM)実施国への不適切な水銀貿易の検出法の開発(令和 4年度)
Developing a method for detecting improper mercury trade flow into countries that have artisanal and small-scale gold mining (ASGM) activities

予算区分
若手研究
研究課題コード
2122CD002
開始/終了年度
2021~2022年
キーワード(日本語)
水銀,小規模金採掘(ASGM),水銀貿易,検出法
キーワード(英語)
Mercury,Artisanal and small-scale gold mining,Mercury trade,Detection method

研究概要

水俣条約により、水銀および水銀を使用した製品の製造・輸出入が規制されている。しかし、水銀の主用途、且つ、排出源・放出源である小規模金採掘(ASGM)の規制は明示されていない。不適切・違法な操業の存在が指摘されるASGMを介した水銀流通は不明瞭であり、国際的な水銀の管理を阻害する恐れがある。本課題の目的は、ASGM実施国への不適切な水銀貿易の検出手法の開発と実証分析のデータ整備である。独自に国際貿易データを整備した上で、全球的な水銀フローを解明し、ASGM実施国リストを整備する。そして、ASGM実施国に共通する水銀フロー特性、活動量との関係に注目し、不適切な水銀貿易の検出手法を確立する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

課題1)全球的な水銀フロー:Nansai et al. 、 Nakajima et al. による国際貿易に伴う物質フローの推計手法を適用する。本手法は、各国の水銀インフロー(採掘、再生量、輸入)とアウトフロー(輸出と見かけ消費量(製品蓄積、環境放出、廃棄量の合計))のマスバランスを担保するように、ボトムアップで推計した水銀フローを最適化手法により調整し、231の国間別貿易商品別の水銀移動量(重量)を算定する。1995年から2018年までを対象に、採掘量はUSGSなど鉱業統計、貿易統計は国連統計を用いる。なお、約5000の貿易品目から水銀含有の可能性のある112品目に注目し、それぞれの水銀含有量を文献値やWIO-MFA[14]モデルによるマクロ推計によって定める。
課題2)ASGM実施国リスト:ASGM実施国(又は地域)を対象に、ASGMでの金生産に使用された水銀量を推定する。学術論文だけでなく、国連やNGO等による報告書やホームページを広範に文献調査し、ASGMが行われている国・地域のリストを作成し、全球的なASGM活動の分布や金生産量 、金生産あたりの水銀使用量を整備する。この時、入手できない情報の補完するため、社会指標(GDP、労働人口、一人あたり所得等)を用いて間接的に推計し、データの網羅性を向上させる。
課題3)不適切な水銀貿易の検出・判定:課題1と2によるデータに基づき、以下の三段階の解析を総合し、不適切な水銀貿易の有無、関与する国・地域、貿易品目を判定する手法論を確立する。第一に、注目すべきASGM実施国への水銀輸出国の選別である。本研究では、ASGM実施国の「水銀フロー推計による見かけ水銀消費量」に対する「ASGMによる水銀使用量」の割合が高い国や、100%を超える非現実的な値を示す国に注目し、その国へ水銀を輸出する国を選別する。第二に、選別した国に関し、貿易情報の不安定性を利用して不適切な貿易商品を検出する。具体的には、i. 水銀の輸出国が報告する量と輸入国が報告する量に大きなずれがある場合(報告隠し);ii. 水銀含有貿易商品の単価(輸入額/輸入重量)がASGM非実施国への同一商品の単価と大きく乖離する場合(輸出製品の偽装);iii. 時系列変化として不自然に急増加、急減少する水銀含有貿易商品がある場合(輸出製品の偽装が不連続に存在);iv. 2017年後に新しく増加した貿易品目、輸出国がある場合(条約の発効後の新しい水銀調達先)を調査する。第三の段階は、パネルデータである水銀フローデータによる統計解析である。固定効果モデル[15]を用いて 、ASGM活動による水銀使用量と水銀採掘量、水銀含有製品に含まれる水銀輸入量との関係を解析し、ASGMに転用している可能性の高い貿易の商品を調査する。

今年度の研究概要

本年度は、不適切な水銀貿易フローが検出された研究対象国・商品などの情報を多媒体の発信を検討する。
1)イベント:国際連携を深めつつ、研究成果を積極的に発信する。特に、水俣条約の有効性評価を念頭に、国内外の研究者を集めて小規模金採掘での水銀利用を中心に、水銀問題の議論の牽引、場の形成;
2)日本語・英語・中国語での成果発信:学会発表(日本国内、国際学会)、雑誌論文の執筆・査読対応;
3)多媒体での発信:動画またはオープンソースのソフトウェアによるデータの視覚化。

外部との連携

Prof. Marcello Veiga, Institute of Mining Engineering, University of British Columbia, Canada
Prof. Jacopo Seccatore, Faculty of Engineering and Sciences, Adolfo Ibañez University, Chile

課題代表者

CHENG Yingchao