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対策によるオゾン濃度低減効果の裏付けと標準的な将来予測手法の開発(令和 4年度)
Development and application of a standard method to predict ozone reduction caused by strategies

予算区分
安全確保領域
研究課題コード
2123BA014
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
オゾン,光化学オキシダント,大気質シミュレーション,排出インベントリ
キーワード(英語)
Ozone,Photochemical oxidant,Air quality simulation,Emission inventory

研究概要

燃焼起源以外のVOC排出量については、環境省のVOC排出インベントリにおいて経年的な推計がなされているが、それ以外の発生源については、環境省によりPM2.5排出インベントリが整備されているものの、単一年度を対象としており、対策効果を整合的に評価するのは難しい。本研究では、自動車と固定燃焼発生源を対象に、対策等による排出量の経年変化を整合的に表現できる排出インベントリを新たに開発する。その排出インベントリを用い、過去のオゾン濃度の経年変化を大気質シミュレーションで計算する。アメリカ環境保護庁のガイドラインを出発点とする評価手法に基づき計算結果を解析し、オゾン濃度の経年変化に対するVOC自主的取組、自動車排ガス対策、固定燃焼発生源対策、越境輸送、気象条件の影響を明確にする。さらに、大気中のホルムアルデヒド(HCHO)とNO2の濃度比に着目し、有効な対策の判断材料となり得る、オゾン生成のNOXとVOCへの依存性(感度レジーム)の検証を行う。衛星計測と地上分光計測(MAX-DOAS)により長年蓄積されているHCHOとNO2の濃度データに基づき、空間的・経年的なレジームの変化を判定し、シミュレーションとの整合性を明らかにする。問題点が見出された場合には、排出インベントリおよび評価手法にフィードバックし、対策による将来のオゾン濃度低減効果の標準的な評価手法として確立させる。なお、対象年はVOC自主的取組の基準年である2000年以降とする。この間、日本だけではなく中国における対策強化による大気質の改善が示唆されている。また、対策だけではなく、リーマンショック、さらには直近のCOVID-19による社会活動の停滞は、排出量の削減に伴う大気質の変化を実大気で評価しうる未曾有の機会をもたらしている。これらの要因を含む長期間を対象とすることで、評価手法の有効性をより明確に示すことができる。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

・2000年以降の長期間を対象に、過去の対策や社会要因等による排出量の経年変化を明示的かつ整合的に表現し、シミュレーションによるオゾン濃度の経年変化の再現を実現する排出インベントリを新たに開発する。
・2000年以降の長期間を対象に、オゾン濃度変化の諸要因を考慮したシミュレーションを実行し、常時監視による光化学オキシダントならびにNOXや非メタン炭化水素等の関連物質濃度の経年変化との整合性を裏付けることにより、標準的な対策評価手法として確立させる。VOC自主的取組、自動車排ガス対策、固定燃焼発生源対策、越境輸送、気象条件といった各要因のオゾン濃度の経年的な変化に対する寄与を定量化することで、今後の対策のあり方とシミュレーションの有効性を示す。
・都市域(千葉)と郊外(つくば)において地上分光計測(MAX-DOAS法)からリトリーバルされた大気境界層内のNO2、HCHO、オゾン濃度の直近10年間もの長期連続データセットを構築し、各成分の年々変動を明らかにすると共に、実大気におけるオゾン感度レジームを導出し、オゾン濃度低減に対するNOXとVOCの排出削減の有効性を地上分光計測から定量的に検証する。
・衛星計測によるNO2とHCHO鉛直積算濃度の比から、実大気におけるオゾン感度レジームを導出し、時空間的な変動を解明することで、オゾン濃度低減に対するNOXとVOCの排出削減の有効性を衛星計測から定量的に検証する。

今年度の研究概要

・自動車と固定燃焼発生源について、過去の長期排出量データを構築する。COVID-19等の社会的要因の影響を受けた活動量データを収集して排出量の推計を行う。
・国内外の経年変化が考慮された排出量データを用いたシミュレーションについて、地上オゾン濃度観測値の経年変化との整合性を評価し、前駆物質排出量変化に対するオゾン濃度変化が正しく表現されているか確認する。また、オゾン感度レジームとの整合性を評価する。
・地上分光計測を継続し、大気境界層内のNO2、HCHO、オゾン濃度の直近10年間もの長期連続データセットを構築して、各成分の年々変動を明らかにする。様々な時間スケール(COVID-19影響下の期間を含む)でNO2/HCHO比とオゾン濃度の対応を調べ、オゾン感度レジームについての新たな観測的知見を得る。
・衛星計測データとMAX-DOAS地上観測のデータ、およびモデルシミュレーションによる鉛直濃度分布の情報とを統合的に解析することで、地表面近傍と対流圏のレジームの変動を解明する。

外部との連携

大阪大学、千葉大学、電力中央研究所

関連する研究課題

課題代表者

茶谷 聡

  • 地域環境保全領域
    大気モデリング研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(理学)
  • 工学,理学
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