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排出インベントリと観測データ及び物質循環モデル推定に基づくGHG収支評価(令和 4年度)
GHG budget estimation based on emission inventories, observational data, and biogeochemical models

予算区分
SII-8
研究課題コード
2123BA006
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
温室効果ガス,ボトムアップ評価,排出インベントリ,物質循環モデル
キーワード(英語)
Greenhouse gas,Bottom-up evaluation,Emission inventory,Biogeochemical model

研究概要

推進費SII-8課題で実施する温室効果ガスに関するマルチスケールでの収支評価のうち、本テーマでは人為排出インベントリ等を用いて独自のボトムアップ評価を行うとともに、他テーマによるトップダウン推定結果をとりまとめ、政策決定者、行政担当者、さらには国民にわたるステークホルダーに分かりやすい形で示す。本課題による新規成果を既往の知見とともに体系的に記述したレポートを作成し、2022年度内を目処に最初のバージョンを公開する。レポートには全球、国地域(特にアジアを詳細化)、大都市域における温室効果ガス(GHGs: CO2、CH4、N2O)収支について、近年の年々変動や収支分布に関する情報を取り入れる。複数スケールにまたがる情報を含むほか、人為起源排出だけでなく自然起源の放出・吸収を並記することで、大気中濃度変動との対応が分かりやすいよう記述する。本課題の特色である、スピーディーな成果報告を達成するため、速報版と確定版を作成して、火災やコロナ禍による社会会活動の急激な変化などに対応できる報告体制を構築する。もう1つの特徴として、複数手法による結果を比較することで収支の不確実性についても評価を行う。サブテーマ3-(2)は物質循環モデルおよび排出インベントリを用いた評価と取りまとめを担当し、サブテーマ3-(2)は衛星データを用いた評価と収支分布の可視化を担当する。電子版の作成、英語サマリーの収録など、本課題の温室効果ガス収支監視システムとその成果を、日本だけでなくグローバルストックテイクでの利用を希望する諸外国にも参照しやすい形となるよう工夫する。国際的に高い水準の温室効果ガス監視システムとするため、欧州で実施されているICOS、米国で実施されているNACPなどの情報を収集し、適宜情報交換を行う。オンラインでのワークショップ開催や、国際学会セッションを共催するなど、国際的な場で主導的な役割を果たせるよう成果アピールを行う。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

テーマ3は、テーマ1及び2と連携し、複数手法による温室効果ガス収支推定結果について統合的な評価を行う。個別データから統合評価までをシステム化し、定期的に行われるグローバルストックテイクへの情報提供や異常気象や森林火災等突発的なイベント発生時における影響評価がスピーディに行える監視体制を検討する。一方で、温室効果ガス収支推定の際に不確実性を生む要因となる化石燃料燃焼、土地利用変化、火災等の様々なインベントリの精度の向上を通した温室効果ガス収支推定の向上も目指す。各種の地上観測、物質循環モデル、排出インベントリを用いるボトムアップ手法を用いて、温室効果ガス収支に関する統合的分析を実施し、その成果を他手法の推定とも合わせてわかりやすい形で報告書にまとめる。ボトムアップ的手法には、空間分布を詳細化できる点や排出源をセクター別に分離して示すことができる点など長所もあるが、十分な情報を収集するまでにタイムラグを要するなどの短所もある。テーマ1、2で実施される観測とトップダウン評価と相補的な役割を果たし、独立した評価結果を与えることで温室効果ガス収支評価の信頼性向上に貢献する。評価は主にアジア地域の国・地域、そして全球を対象に実施し、パリ協定の基準年である2013年からできるまで最近までの年別の温室効果ガス収支を評価する。

今年度の研究概要

・初期的なボトムアップ評価を実施し、全球および国地域スケールでの温室効果ガス収支評価を行う。昨年度までに収集した新しいデータや改良した物質循環モデルの推定結果を使用して2013年から2021年までの収支を推定する。
・2021年の温室効果ガス収支をとりまとめた評価レポートの速報版を、グローバルストックテイクを踏まえたスケジュールで作成する。日本については温室効果ガスインベントリオフィスによる人為起源排出量速報値との比較を行う。
・温室効果ガスの観測・モデル評価に関する科学的課題を検討するための国内学会分科会や一般向け講演会などを企画する。

外部との連携

千葉大学、海洋研究開発機構、気象研究所

課題代表者

伊藤 昭彦

担当者