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富会計における資本のシャドープライスの時間変化と持続可能性(令和 4年度)
Shadow price change and sustainability in wealth accounting

研究課題コード
2224CD006
開始/終了年度
2022~2024年
キーワード(日本語)
富会計,ジェニュイン・セイビング,持続可能性指標,自然資本,シャドープライス
キーワード(英語)
Wealth accounting,Genuine savings,Sustainability indicator,Natural capital,Shadow price

研究概要

人工資本、人的資本、自然資本ストックを経済価値に換算する際、単位当たりの価値として使われるシャドープライスは、持続可能性分析や社会的費用便益分析の結果を左右しうる。ところが、シャドープライスはどう導出されるのか、何を意味するのか、他の経済指標とどのような関係にあるのか、どのようなデータを使うべきなのか、どう評価に使うべきなのか、理論と実際の妥協点はどこか、といった点は必ずしも明確ではない。

そこで本研究では、資本の希少性を反映した「時間とともに変化するシャドープライス」をどう測定し、実際の会計にどう反映させるかを検討する。また、グローバルな二酸化炭素濃度や自然資本やプラネタリー・バウンダリーのシャドープライスをどう表現するかを検討し、ローカル資源とグローバルレベルで集計した自然資本との乖離を埋めることを狙う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

自然資本、人的資本、人工資本の価値を合計した、一国の包括的な富の変化によって持続可能性を判断する際、各資本に重みづけを行うシャドープライスが重要な役割を果たす。

本研究では、1)近年の研究を踏まえ、シャドープライスが何を意味するのかを整理する。
次に、2)シャドープライスが時間とともに変化する場合、平均値を使うことで生じる福祉変化の評価バイアスを検討し、今後の富会計に、シャドープライス変化をどう取り込むべきかを検討する。
これらを踏まえ、
3)グローバルな自然の希少性を表すシャドープライスをローカルな富会計でどう表現すべきかを検討する。
4)炭素の社会的費用を組み込んだ、化石燃料の価値評価を行う。

今年度の研究概要

第一に、理論分析や論文レビュー等を通じて、シャドープライスの定義やモデルから導き出される意味付けを整理する。具体的には下記のような項目を検討し、レビュー論文としてまとめる。
1)特定の資源配分メカニズム(将来シナリオ)において、資本が追加的に増えたときの世代間福祉の増分。
2)インカムゲインとキャピタルゲインの割引現在価値。
3)(一定の条件の下で)過去の累積支出額。
4)同時点内の他の資本との代替可能性、相対的な希少性、重みづけ。
5)異時点間の代替可能性、相対的な希少性、重みづけ。
6)現実の社会経済と反事実との比較。
7)現実の社会経済に顕示された選好(トレードオフ)。
8)実際に投資が行われるとき、投資への支払い意思額(WTP)。

また、『生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー』において指摘された、グローバルな自然のシャドープライスの表現を検討する。具体的には、各国の自然利用における効率性改善を富会計に組み込むアプローチや、安全活動空間アプローチを検討する。

外部との連携

ケンブリッジ大学、オスロ大学、クィーンズ大学

課題代表者

山口 臨太郎

  • 社会システム領域
    経済・政策研究室
  • 主任研究員
  • 博士(経済学)
  • 経済学
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