- 研究課題コード
- 2130CC001
- 開始/終了年度
- 2021~2030年
- キーワード(日本語)
- 海洋生物,ビッグデータ,プラットフォーム
- キーワード(英語)
- Marine organisms,Big data,Platform
研究概要
海の豊かさを未来へ引き継ぐため、生物多様性保全と持続的経済活動を調和した海洋生態系の保全利用計画を実現しうる、科学的エビデンスを元にした実効性のあるアクションが求められている。このような背景から、本研究は以下3つの目標を達成する。
目標1.海の生物多様性ビッグデータのアクセシビリティ改善。海洋生物(ネクトン・プランクトン・ベントスの10 万種以上)に関する情報(海況、種分布、バイオロギング、機能特性、分子系統、化石情報、環境DNA 及び人工衛星データ)を規格化・強化・浄化しデータ統合するパイプラインツールを開発する。そして、機械学習を駆使し遺伝子・種・群集・生態系の多様性及び保全利用の指標値を地図化し、マルチセクターが利用可能な汎用データを提供する。
目標2.適応的で持続的な海洋保全利用に関する技術開発。全球・日本スケールで生物多様性の時空間パターンを予測し、環境変動を考慮したMPA 最適配置分析、温暖化・沿岸開発・漁業・海運に関係した海の生物多様性と生態系サービスの劣化リスク評価を行う。
目標3.マルチセクター連携で社会実装を行なう。市民・行政・企業・金融機関と協働し、海洋生物可視化アプリケーションによるGIGA 教育事業、生物多様性スマートな海運ガイドライン構築、海の豊かさの脅威に関わるリアルタイム評価監視システムの構築などを推進する。最終的に、研究成果の収益化を元に海洋生物ビッグデータの自立的運用メカニズムを確立する。
研究の性格
- 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
- 従たるもの:政策研究
全体計画
1.海洋生物多様性ビッグデータ活用の基盤技術の開発業務
1-1 公開用データパイプラインの検証
主に以下の観点について議論し、海洋生物の種分布データを分類群ごとに浄化・標準化し、海洋環境などの関連データと紐付け(エンリッチング)するプロセスをパイプライン化するツール群の開発を考案する。さらに、種分布モデリングで種の空間分布を可視化し、それらを海洋生物多様性ビッグデータとして汎用的に利用してもらうためのワー
クフローを確立する。
・海洋生物分類群毎のデータ集積現況
・日本の海洋生物をモデルとしたデータ整備
・データ浄化、標準化、強化を包括したプログラムコード
・種分布データと環境データを統合した種分布モデリング
1-2 既整備の海洋生物多様性ビッグデータを元にしたβ版プラットフォームの設計及び公開データの利用過程のモニター法の設計
海洋生物多様性データのビッグデータプラットフォームの構造設計を考案する。
2.海洋生物多様性ビッグデータ活用の応用技術の開発業務
2-1 日本のMPA 配置分析及び漁獲統計の時空間解析を基にした生物多様性ベース漁業管理に関するデータ整備と分析手法の検討
主に以下の観点について議論し、システム化保全計画に関するデータ整備計画から分析枠組みまで包括的に検討し、保全利用シナリオ分析ツールを開発する。
・海洋生物多様性分布データの空間レイヤー化
・現状の海洋保護区の空間レイヤー化
・現状の海洋管理(漁獲や漁業管理情報など)の空間レイヤー化
・以上の空間レイヤーを統合した保全優先度スコアリング分析
・以上の空間レイヤーを統合した海洋保全利用の実態評価
・海洋保護区拡大の実効性(絶滅リスク低減による生物多様性消失の抑止効果)評価
2-2 人工衛星データと海洋生物分布データを統合した海域群集タイプ識別の教師データ整備及びAI 開発の計画立案
主に以下の観点について議論し、衛星画像データから海洋生物多様性属性を機械学習で推定するための分析枠組みを構築する。
・人工衛星データと海洋生態系、生物群集、生物分布データを対応させた教師学習データの構築方法(アノテーションなども含む)
・沿岸海域の生態系(サンゴ礁、藻場群集、マングローブ、海浜植生など)の分布データをモデルにした沿岸海域の生物群集タイプ特定分析
・ランダムフォレスト法と深層学習によるAI 開発の計画立案
今年度の研究概要
国環研所有及び新たに取得する海洋生物の種分布データに関して、分類群ごとに浄化・標準化を検討する。また、プラットフォームの設計を開始するとともに、応用場面における優先度を検討する。
外部との連携
琉球大学、北海道大学、九州大学、千葉工業大学、東京大学、成蹊大学、横浜市立大学
備考
文科省海洋生物ビッグデータ活用技術高度化