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野生動物への環境汚染物質の影響評価を実現する培養細胞を用いた新規評価技術の構築(令和 3年度)
Establishment of New Basic Technology for Risk Assessment of Environmental Pollutant in Wildlife by Using Culture Cells.

予算区分
革新型研究開発(若手枠)
研究課題コード
2123BA010
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
汚染物質,小笠原,野生動物
キーワード(英語)
environmental pollutants,Ogasawara Island,Wildlife

研究概要

生物多様性の保全は国際的な大問題である。生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、2011年から2020年の戦略計画を策定し、生物多様性保全の目標(愛知目標)を設定したが、目標達成状況は十分ではなく、更なる生物多様性保全に向けた取り組みの必要性が認識されている。IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)地球規模評価では、生物多様性を脅かす直接的要因として気候変動や侵略的外来種等と並んで、汚染が挙げられ、次期生物多様性目標(ポスト2020目標)においても、汚染対策が盛り込まれる見通しである。国内においても鉛や農薬など様々な汚染物質による野生動物への影響が問題視されている。汚染物質の野生動物への影響を解明するため、野生動物に曝露実験ができれば、正確に評価可能であるが、野生動物の個体を用いた研究は非常に難しく、代替法の開発が必要である。個体レベルの実験が難しいヒトでは、培養細胞を用いて多様なリスク評価が進められている。分野横断的に、野生動物においても培養細胞を用いた汚染物質の評価系が構築できれば、生物多様性を脅かす要因の一つである汚染物質の実験的評価が可能になる。
本研究では、汚染物質である殺鼠剤のウミガメへの影響をモデルとして、培養細胞による汚染物質評価系を構築し、有用性を検証する。サブテーマ1では、ラット、クマネズミ、ウミガメ由来の細胞を用いて、殺鼠剤の試験管内曝露実験を実施し、殺鼠剤の影響を比較評価する。サブテーマ2では、個体レベルでラット、クマネズミ、アオウミガメに対する殺鼠剤の曝露実験を行う。ウミガメに対する曝露実験は報告が皆無であるため、本研究では哺乳類、鳥類の方法を参考に評価手法を開発する。最後に、サブテーマ1とサブテーマ2の結果を比較し、培養細胞による殺鼠剤の影響評価の有用性を検証する。本研究において、培養細胞を用いた汚染物質評価系の有用性が実証できれば、今後、侵略的外来種対策として使用予定の殺鼠剤の非対象種への影響が実験的に予測可能になる。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

初年度に殺鼠剤の毒性影響評価可能な細胞の樹立と、個体レベルの評価法の開発を進める。2年度目に細胞と個体に殺鼠剤の曝露実験を実施して、代謝関連パラメータを収集する。3年度目にそれらのパラメータを用いて、細胞による評価の有用性を示す。さらに、生殖関連パラメータの収集も進める。

今年度の研究概要

本年度は、ラット、クマネズミ、アオウミガメ由来の細胞に遺伝子を導入し安定して培養可能な不死化細胞の樹立を進める。さらに樹立した細胞の性質解析を進める。北海道大学を中心とするグループでは、個体レベルの評価手法の開発を進める。

外部との連携

研究分担者:中山翔太(北海道大学獣医学部)、武田一貴(北里大学獣医学部)

課題代表者

片山 雅史

  • 生物多様性領域
    環境ゲノム研究推進室
  • 研究員
  • 博士(農学)
  • 農学,生物工学,生化学
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