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時間方向並列化と連成カプラを用いた超高解像度・長期気候シミュレーションの革新(令和 3年度)
The innovation of high-resolution long-term climate simulation using the parallel-in-time method and the coupling library

研究課題コード
1921CD022
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
気候シミュレーション,高性能計算,並列計算,気候モデル
キーワード(英語)
Climate Simulation,High Performance Computing,Parallel Computing,Climate Model

研究概要

本研究は、時間方向並列化の手法を用いることにより、要求される並列度が年々増大しているスーパーコンピュータの性能を十分に引き出し、数十年から数百年にわたる気候シミュレーションを従来の10倍以上の水平解像度で、かつより高速に計算可能な階層型シミュレーション基盤を構築することを目的とする。この目的を達成するために、Parareal法を用いた時間方向並列化を試みる。時間発展方程式のソース項に多種多様な物理諸過程を含む全球大気モデルに対してParareal法を適用するために、粗いシミュレーションの修正方法についての検討を行い、気候学的観点に立った判定基準での高速な収束計算を目指す。空間解像度の異なる2つの計算を連成させるシステムには、カップリングライブラリを用いる。本研究の提案する手法は「粗い」気候モデル、「細かい」気象モデルを用いた長期気候シミュレーションの抱える問題を打破し、気候変動研究に対して大きく貢献するものと期待される。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

大気のシミュレーションモデルには、全球非静力大気モデルNICAM (Nonhydrostatic ICosahedral Atmospheric Model)2)を用いる。カップリングライブラリにはppOpen-Math/MPを用いる。最終目的である気候の時間方向並列化シミュレーションを達成するために、まず 1)異なる空間解像度の大気モデルを同時実行し、互いに強制を与えることが可能な連成シミュレーションシステムの構築 を行う。 カップリングライブラリの機能を拡張し、低空間解像度と高空間解像度の大気モデル(以下、HiResとLoResと称する)を連成して実行させるシステムを開発する。LoResの結果を用いてHiResの結果をある時定数で緩和させながら計算を進めるナッジング実験を実現した後に、HiResの結果をLoResに作用させながら計算を進める実験を実現させ、LoResの現在気候のシミュレーションでうまく再現出来ない熱帯域の降水の日変化や台風の振る舞いがどのように改善するかを解析する。次に 2)時間方向並列化を用いた気候シミュレーションシステム構築と再現された気候場の検証 を進める。カップリングライブラリを用いて実装した連成シミュレーションシステムを用いて、Parareal法の反復計算アルゴリズムを実現する。しかし、全球大気モデルは時間発展方程式の中に雲の相変化や大気放射のような複雑な諸物理過程を多数有している。このような非線形性の強い計算において、雲の分布を含めた大気の状態を高精度・低反復回数で収束させるのは困難である。本研究が挑戦的研究である理由はこの点である。そこで本研究では、気候学的観点に立った比較的緩い判定基準での高速な収束計算を目指す。すなわち、気候シミュレーションにおいて時間的連続性が保たれていてほしい地表面気温や大気の放射収支などに着目した収束基準を選定し、時間方向の分割幅についても探索的な解析と評価を行う。

今年度の研究概要

今年度は連成シミュレーションの計算時間を延長し、解析する変数を地表面気温と全球放射収支から、降水や等圧面高度等に拡張して解析を行う。また、東大に新たに導入されるWisteria/BDEC-01スーパーコンピュータを活用し、より多数のCPUコア数を用いた場合の計算性能を実測にて評価することを目指す。

課題代表者

八代 尚

  • 地球システム領域
    衛星観測研究室
  • 主任研究員
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