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観光利用と防災機能から探る沿岸生態系サービスのシナジーとトレードオフの解明(令和 3年度)
Investigating synergies and trade-offs of coastal ecosystem services from tourism use and disaster prevention functions

予算区分
若手研究
研究課題コード
2121CD001
開始/終了年度
2021~2021年
キーワード(日本語)
生態系サービス,気候変動,Eco-DRR
キーワード(英語)
Ecosystem Service,Climate Change,Eco-DRR

研究概要

本研究では、国土スケールを対象に、沿岸の文化的生態系サービスの時間的・空間的動態を明らかにし、ついで、生態系サービス間のシナジーとトレードオフを解明するとともに、将来の気候変動と土地利用の変化を考慮したホットスポットの特定、生態系再生・保全地の抽出を行い、それをもとに具体的な保全管理対策を提示することを目的とする。
まず景勝地や海水浴場といった文化的サービスの空間配置を国土スケールで把握し、可視化する。合わせて、自然海浜の割合や、沿岸周辺の土地利用、人口といった環境情報も整備し、各生態系サービスの供給量・需要量を説明する統計モデルを構築する。次にモデルに基づいて、堤防の有無や周辺の土地開発の程度によって、供給量や需要量が増加(シナジー)あるいは低下(=トレードオフ)するサービスを発掘する。そして、構築したモデルを将来シナリオに適用し、環境変動に対して、沿岸の文化的サービスが将来的にどの程度、維持あるいは損失するのかを予測する。その結果に基づいて、将来にわたって重要な生態系保全地やサービスの抽出を行い、生態系サービスの持続的な利用に向けた提言を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

計画1 データの取得・加工 [平成31年度]
国土スケールでは、長期にわたる生態系サービス(海水浴場、釣場、景勝地、ダイビングスポットなど)の空間情報が蓄積されている。この空間データをそれぞれで1kmグリッド単位に整理するとともに、各種環境データを過去の地図や家計調査、土地利用データ、農林水産センサスから取得し、合わせて定量的なデータとして整備する。
計画2 時空間モデルによる生態系サービスの定量化 [令和元年・2年度]
各生態系サービスについて、現在の空間的ばらつきについて、空間的自己相関を考慮したモデルで、各生態系サービスの潜在的供給量と需要量を推定し、現在の「生態系供給・需要マップ」を作成する。各グリッドにおける「在」および「不在」な空間占有の違いを、土地利用や人口などの生息環境の量的・質的な違いにより説明する統計モデルをサービス別に構築し、空間変化に対するこれらの要因の重要性を定量化する。
計画3 現地調査による要因の検証・発見 [令和2年度]
代表的な沿岸生態系を対象に、砂浜景観(和歌山県)、磯景観(和歌山県)、護岸景観(宮城県)、都市景観(東京都)を選定し、現地調査により景観の成り立ちや音環境の違い、人々による利用の実態を比較・解析することで、計画2で推定された減少要因の検証を行うとともに、広域解析では評価できない詳細な要因を探り、モデルのパラメータに反映させる。
計画4 ホットスポット特定 [令和3年度]
計画2および計画3で推定したパラメータを将来の土地利用と気候に外挿し、将来の生態系サービスを国土スケールで予測する。そのうえで、複数の生態系サービスの供給が見込まれるホットスポットおよび需要とのギャップを特定、具体的な管理指針の提案を行なう。

今年度の研究概要

当該年度は、これまで整備してきた観光利用と防災機能についての時空間マップをもとに、それぞれのサービス間で空間的な重複やギャップがどの程度生じるのかを明らかにする。その結果をもとに、将来の観光利用・防災機能の観点から保全すべきホットスポットや管理の見直しが必要となりうる場所の提案を行う。

課題代表者

松葉 史紗子

  • 生物多様性領域
    生物多様性評価・予測研究室
  • 特別研究員
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