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大気モニタリングネットワーク用低コスト高スペクトル分解ライダーの開発(令和 3年度)
Development of low-cost high-spectral-resolution lidar for air quality monitoring network

予算区分
5RF-2001
研究課題コード
2022BA005
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
ライダー,観測ネットワーク,エアロゾル
キーワード(英語)
Lidar,Observation network,Aerosols

研究概要

大気微粒子(エアロゾル)は日傘効果や雲形成等を通じて地球の気候に影響を与える一方で、吸入ばく露を通じてヒトの健康にも影響を与えている。とりわけPM2.5については日々の濃度の監視のみならず、その成分や健康影響の解明が求められている。しかし、エアロゾルの構成は複雑で、鉱物ダストや海塩粒子、ブラックカーボンやその他の大気汚染性粒子など多種にわたり、実大気中ではそれらが混在している。さらに、越境汚染など、発生源から離れた地域に汚染物質が輸送されるケースも多くあり、その動態を把握することは容易ではない。これまで国立環境研究所では、直接サンプリングによる研究以外にも、環境省や様々な研究機関と共同で東アジア域に約20地点のレーザーレーダー(ライダー)観測網を構築し、その観測域においてエアロゾルの高度分布の時間変化を多地点で同時に観測することで、エアロゾルの立体的な分布を調査してきた。また、ライダーデータから鉱物ダストやブラックカーボンなどのエアロゾル種を抽出する解析手法の開発にも成功している。しかし、これら多種類のエアロゾル濃度を測定するためには、現状のネットワークライダーの高度化が不可欠である。ライダーの高度化には、ラマン散乱ライダーと高スペクトル分解ライダーの2つの手法がある。ラマン散乱ライダーは、現在観測網の約半数の地点で導入されているが、極めて微弱な信号であるため昼間の観測は困難である。一方で、高スペクトル分解ライダーは昼間でも高感度でエアロゾル濃度を測定できる有力な手法である。しかし、従来の高度スペクトル分解ライダーは高コストかつ安定性に欠けるため、多地点で常時モニタリングするようなシステムは困難であった。そこで本研究では、大気微粒子の動態を把握するための観測ネットワークの構築を主眼とし、昼夜で多種類のエアロゾルの定量観測ができる低コストで簡易的な高スペクトル分解ライダーシステムの開発を目的とする。本研究の最終目標は、毎時のエアロゾル消散係数の高度プロファイルを連続的に測定し、1ヶ月間のデータセットを導出することである。この時、エアロゾル消散係数は種類別(鉱物ダスト、海塩粒子、ブラックカーボン、大気汚染性粒子等)に抽出する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

本研究は2つのサブテーマで構成される。サブテーマ1では、多波長HSRLシステムの連続観測実験および測定データの処理手法に関する研究を実施する。また、一つの分光器(干渉計)で多波長測定するため、干渉計の制御方法の最適化についても検討する。サブテーマ2では、HSRL用の小型レーザーを開発する。通常のHSRL手法ではシングルモードレーザーを用いるが、本研究ではより安価なマルチモードレーザー(複数の波長ピークを持つレーザー)を用いる。市販のレーザーでは高感度なHSRL測定が困難であるため、本研究で最適なレーザー光学設計を研究する。本研究は3年間の計画とし、初年度はシステムの肝となるレーザーと干渉計の設計と製作を進める。干渉計を使ってレーザー光の縦モード間隔を測定し、スペクトル特性を評価する。2年目では引き続きレーザーと干渉計の開発を進める。レーザーを完成させてライダーに組み込み、HSRLシステムのプロトタイプを完成させる。最終年度では連続観測試験を実施して測定データを解析し、種々のエアロゾルの消散係数を抽出する。ライダーシステムの課題点をクリアし、1ヶ月間データセットを作成する。

今年度の研究概要

主発振器からの出力を上げるため、光増幅器を開発する。また、波長変換器を設置し、第二・第三高調波のエネルギーが最大になるように波長変換器の温度を制御するシステムを構築する。完成したレーザーをライダーシステムに組み込み、高スペクトル分解ライダーのプロトタイプを構築する。

外部との連携

サブテーマ2のレーザー開発は情報通信研究機構が実施する。

課題代表者

神 慶孝

  • 地球システム領域
    大気遠隔計測研究室
  • 主任研究員
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