- 研究課題コード
- 1921CD017
- 開始/終了年度
- 2019~2021年
- キーワード(日本語)
- 三酸化アンチモン,アンチモン酸還元細菌,廃水処理
- キーワード(英語)
- antimony trioxide,antimonate-reducing bacteria,wastewater treatment
研究概要
アンチモン(Sb)は、三酸化アンチモンとして難燃助剤などに広く用いられているが、一方、急性・慢性毒性を有する有害物質でもある。現在、産業活動に伴って生じたSb廃水は、凝集沈殿法により処理されているが、高コストかつSbに対する特異性も低い。三酸化アンチモンには、結晶構造の異なる2種類の結晶鉱物が存在するが、それぞれ異なる用途で利用される。我々の研究グループでは最近、溶存態のSb(V)を呼吸基質として還元し、三酸化アンチモンとして沈殿させるSb呼吸細菌を複数分離した。また、培養条件によって、三酸化アンチモンを結晶構造別に回収できる可能性を見出した。そこで本研究では、廃水からのSb除去と結晶構造別三酸化アンチモンの生産を同時に可能とする、新たな資源回収型廃水処理技術の開発を行う。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、以下4つのサブテーマを検討する。
1. 結晶構造別三酸化Sbの生成条件の解明: 培養条件を段階的に変化させてSb(V)還元実験を行い、生成した固体沈殿のSEM-EDSおよびX線回折により、2種の三酸化アンチモン結晶がそれぞれの結晶が単体で生成する境界条件を明らかとする。
2.Sb呼吸細菌によるSb(V)還元に及ぼす各種パラメーターの影響評価: 複数種のSb呼吸細菌を対象に、生理的特性やSb(V)還元・三酸化アンチモン生産能力を調査し、それぞれの結晶回収に最適な菌株を選定する。また、各菌株のドラフトゲノム解析を行い、得られた塩基配列情報から、その特性を遺伝子レベルで把握する。
3. 菌体の固定及び処理の高効率化の検討:高分子のゲル内に菌体を固定化し、高密度で保持する包括固定化法の適用を検討する。複数種のSb呼吸細菌それぞれについて、包括固定化担体を作成し、Sb(V)還元・除去活性の変化や持続性、担体の保存性などを詳細に評価する。
4. ラボスケールバイオリアクターを用いた模擬Sb廃水の処理実験: 以上で得られた知見を総合的に評価し、それぞれの結晶が単体で生成する条件下において、Sb(V)を液相より効率よく除去できる菌株を選抜する。固定化担体と三酸化アンチモン結晶を容易に分別可能なラボスケールリアクターを考案・構築し、模擬Sb廃水の処理実験を行う。
今年度の研究概要
昨年度までに得られた知見を総合的に評価し、2種類の結晶鉱物(セナルモンタイトおよびバレンチナイト)それぞれが単体で生成する条件下において、Sb(V)を液相より効率よく除去できる菌株を選抜する。Sb2O3結晶を容易に分別可能なラボスケールリアクターを考案・構築し、模擬Sb廃水の処理実験を行う。
外部との連携
千葉大学との共同研究
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