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光化学オキシダント生成に関わる反応性窒素酸化物の動態と化学過程の総合的解明(令和 3年度)
Diagnosis of dynamics and chemistry of reactive nitrogen oxides in the formation of photochemical oxidants

予算区分
5-2106(1)
研究課題コード
2123BA002
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
光化学オキシダント,窒素酸化物,パーオキシアシルナイトレート,化学イオン化質量分析法,熱分解ーNO2検出法
キーワード(英語)
photochemical oxidant,nitrogen oxide,peroxyacyl nitrate,chemical ionization mass spectrometry,thermal dissociation-NO2 detection

研究概要

光化学オゾンの生成・消失過程において最も本質的な重要性を持つ反応性窒素酸化物の動態を包括的に把握し、その化学サイクルに関する科学的理解を深めることを目的に、観測技術開発と日本の都市域における野外観測を行う。具体的には、最新の大気化学計測技術を集結して、多種類にわたる反応性窒素酸化物の個別および全量の計測システムを開発する。その後、各システムを持ち寄り季節毎に包括的な集中観測を行って、実際の観測から光化学モデルスキームの診断を行う。また、今後、オゾンとともに常時監視する応用を念頭にした簡便なPANsの計測装置を製作してその性能を診断する。まず、最新の化学イオン化質量分析法を用いたPANsの個別成分、過酸化水素、HNO3、N2O5+NO3の計測手法の開発を行うとともに、PANs全量および有機硝酸(ONs)全量を安定して長期に連続計測できる間接法として、熱分解—NO2検出法を用いた手法を確立する。また、亜硝酸(HONO)の計測手法開発にも取り組む。これらを持ち寄り、さらに重要な前駆物質である炭化水素、アルデヒド類の測定装置も持ち寄り、東京都内において集中観測を行い、高時間分解能で得たデータの時間変動と相互関係、オゾンとの関係性からオゾンの生成消失に関わる化学過程を解析する。加えて、東京都内と東京郊外(所沢市、つくば市)の3地点で、オゾン、NO2、PANs全量を同時かつ長期に連続測定し、PANsとオゾン、もしくは、ポテンシャルオゾン(オゾン+NO2)との関係の温度依存性(日変化、季節変化)と地域依存性について明らかにし、温暖化時における光化学オキシダント濃度についての知見となる情報を得る。総じて、日本、特に都市域における光化学オキシダント濃度レベルの低減に貢献する科学的知見の取得と技術開発を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

光化学オキシダントの生成に関わる窒素酸化物の全容を理解するため、光化学オキシダント、窒素酸化物、前駆体であるNMHCを全て網羅して測定する集中観測を東京都内で行う。サブテーマ1では、I-−CIMSを用いて、PANsの個別成分、過酸化水素、HNO3、N2O5+NO3(、アルキルナイトレート)を測定する手法の開発を行う。サブテーマ2では、熱分解—NO2計によるPANs全量およびONs全量とHONOの長期測定手法を確立する。CAPS-NO2計は切り替えて共有して使用する方式ではなく、必要台数購入して、各データを同時に取得する。サブテーマ3では、光化学オキシダントの前駆体である炭化水素、アルデヒド類の測定を担当する。集中観測は季節ごとに行い、近年の光化学オキシダントの成分比、PANsの成分比、全窒素酸化物の成分比の季節ごとの違い、個別VOCの役割等を明らかにする。
 また、サブテーマ2で確立する熱分解—NO2計によるPANs全量の測定手法は、安定して長期に観測できるものである。本研究では、集中観測を行う東京都内以外で、東京郊外(所沢市、つくば市)、大阪府内で、PANs全量とO3、NO2の長期観測(PANs等長期観測)を行い、PANsとオゾン、もしくは、POとの関係の温度依存性(日変化、季節変化)と地域依存性(NMHC濃度との関係性について等)について、明らかにする。
 サブテーマ構成は以下の通りである。
サブテーマ1:化学イオン化質量分析法によるパーオキシアシルナイトレートの個別計測手法の開発と観測
サブテーマ2:熱分解—NO2検出による有機硝酸全量の計測手法の開発と連続観測
サブテーマ3:揮発性有機化合物の種類別計測による有機窒素化合物との関係性の解明

今年度の研究概要

サブテーマ1では、国立環境研究所所有のI-−CIMSを用いて、PANsの個別成分(PAN, PPN, MPAN, PiBNなど)、過酸化水素、HNO3、N2O5+NO3(及び、可能ならアルキルナイトレート)を高時間分解能で測定する手法を開発する。PANs(RO2NO2)の個別成分、N2O5+NO3は、160〜180℃の加熱したインレットを通すことにより、それぞれRO-, NO3-を検出する。過酸化水素、HNO3(及び、可能ならアルキルナイトレート)の測定に加熱したインレットを通すことの影響がないか調べる。
サブテーマ2では、早稲田大学所沢キャンパス(近隣の一般局は「所沢市北野」)にて、現有機器 (CAPS-NO2, TD-CAPS-PANs, UV-O3)を用いて NO2, PANs, O3 の同時連続観測とデータ蓄積を開始する。大阪府立大学でも同様の観測を可能な範囲で実施する(近隣の一般局は「金岡南」)。観測データ蓄積と並行して、二年目以降の集中観測に用いる亜硝酸測定装置 CAPS-HONO 計の調達・動作確認・特性把握を完了する。さらに、PANs を NO2 に変換する熱分解部(TD)の 2セットを新規に構築し、連続観測を実施するサブテーマ1とサブテーマ3に提供しつつ、観測立ち上げに協力する。
サブテーマ3では、東京都内でのPANs等長期観測に向け、CAPS-NO2計2台を新規調達し、サブテーマ2の協力のもと、PANsを測定するための測器(CAPS-NO2,およびTD-CAPS-PANs)を立ち上げ、実大気での観測を開始する。サブテーマ2の測器と同様な精度での測定結果が得られることを確認する。PANs測定の準備が整ったら、O3、NOx、50種ほどの炭化水素の測定も開始する。二年目以降の集中観測のロジスティクスにあたる。

外部との連携

研究分担者:
(サブテーマ2)松本淳教授(早稲田大学)、定永靖宗准教授(大阪府立大学)
(サブテーマ3)加藤俊吾准教授(東京都立大学)
研究協力者:金谷有剛上席研究員(海洋研究開発機構)

課題代表者

猪俣 敏

  • 地球システム領域
    地球大気化学研究室
  • 主席研究員
  • 博士(理学)
  • 理学 ,化学
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担当者