気候変動適応研究プログラム（令和 3年度）
Climate Change Adaptation Research Program

研究概要

気候変動への適応に係る研究・技術開発に取り組む。具体的には、生態系、大気水環境、熱中症等の健康分野をはじめとする様々な分野・項目を対象として、気候変動による影響の検出・予測、適応策実施による影響低減効果の評価、及びそれらの知見に基づく適応策の策定・実施に必要な手法開発や政策研究等を行う。
　これらの取組により、政府による気候変動影響評価及び気候変動適応計画の更新や適応政策の推進、並びに地方公共団体や民間事業者等による適応策の策定・実践に必要な科学的知見を提供するとともに、関連する研究分野の融合を図り、気候変動適応に関する研究拠点として国内外の適応の取組に貢献する。

研究の性格

• 主たるもの：応用科学研究
• 従たるもの：基礎科学研究

全体計画

重要な適応施策の推進に向けて、生態系、大気水環境、熱中症等の健康分野をはじめとする様々な分野・項目を対象として、気候変動による影響の検出・予測、適応策実施による影響低減効果の評価、及びそれらの知見に基づく適応策の策定・実施に必要な手法開発や政策研究等を行う。本研究プログラムの成果は、政府による気候変動影響評価や気候変動適応計画の改訂といった政策決定への貢献を目指すとともに、A-PLAT及びAP-PLATを通じて公表し、地方公共団体をはじめとする各主体による気候変動適応に関する取組を支援する。

本研究プログラムでは、以下の3つの課題に取り組む。

PJ1：複数分野における気候変動影響のメカニズム解明と、新たな手法による影響検出研究。
PJ2：複数分野を対象とした気候変動影響評価手法の高度化、最新の気候・社会経済シナリオを利用した将来気候変動影響評価。
PJ3：複数分野の横断的気候変動影響評価に基づく適応経路解析や適応に関連する法制度・施策の分析等を通じた将来予測・適応計画・適応策実践の間のギャップの解析。

PJ1については、国内とアジア域を対象に、気候変動の影響検出及び影響メカニズムの解明に向けた研究を行う。国内では陸域生態系、サンゴ・藻場生態系、湖沼生態系、閉鎖性海域の生態系における気候変動影響の研究に着手するとともに、流域スケールでの適応に向けた生態系プロセスの観測手法の研究を開始する。また暑熱・健康及びエネルギーの分野における気候変動影響の検討に着手する。アジア域については、自然生態系（特にマングローブ生態系）、稲作、健康の各分野における気候変動影響の分析を開始する。
PJ2については、全国とアジア域における時空間詳細かつ信頼性の高い気候変動影響予測を実施するため、予測手法の高度化を行う。具体的には、予測結果が行政区単位で求められることを踏まえ、モデルの解像度や過去再現性を向上するための研究、または具体的な適応策をモデルで表現するための研究に取り組む。加えて、日本や世界の気候変動影響予測を先導する先駆的なモデリングの応用研究を実施する。また、最新の全球気候予測であるCMIP6を利用した気候シナリオの開発に取り組む。
PJ3については、科学的な知見に基づく気候変動適応策の策定や実施に資することを目的として、幅広い影響予測モデルの横断的解析や影響の相互関係の分析を開始する。また、各生態系における気候変動影響や適応オプションの整理や、生態系を活用した気候変動適応に関する概念整理を進める。国内の地域気候変動適応計画等についての内容分析を開始し、気候変動脆弱性・気候リスクに関する指標とインパクトチェーンのローカライズに向けた検討を行う。

今年度の研究概要

PJ1：陸域〜海洋の生物群集における気候変動影響検出・影響機構に関して過去データを解析する。また、湖沼・流域・沿岸生態系における生態系機能・プロセスへの影響解明に関して手法を検討する。さらに、暑熱・大気汚染による健康リスクとイネへの影響把握のための手法を検討する。
PJ2：気候シナリオを高度化して公開を目指す。また、全国影響評価モデルと全球影響評価モデルの高度化に取り組む。
PJ3：気候変動影響・適応策の分野間及び国際的な影響解析に関して手法を検討する。また、自然生態系分野を考慮した適応策の実装に関して概念を整理する。さらに、地域における気候変動適応推進における課題の解析に必要な情報を収集・整理する。