- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1821CD006
- 開始/終了年度
- 2018~2021年
- キーワード(日本語)
- 拡大生産者責任,ごみ分別・収集システム,アクター・制度分析
- キーワード(英語)
- extended producer responsibility, garbage separation, collection system, actor and institutional analysis
研究概要
20世紀後半、全世界的に進行した大量生産・大量消費・大量廃棄は、各地で環境汚染や資源枯渇を招いた。適正な廃棄物処理と循環型社会形成は、局所的問題でありつつ、グローバルな課題として認識され、国際規範において度々言及されるようになった。国際規範は従前は「行政的合理主義」に基づいていたが、1990 年代には「経済的合理主義」的なパラダイムが興隆した。2010年代に入ってからは、より包括的で戦略的な「エコロジー的近代化」へと、パラダイム・シフトが起こりつつある。 こうした国際規範は、法的拘束力を持たないにも拘らず、先進国、次いで途上国に伝搬したが、受容の有り様は大きな差異がある。本研究は、国際規範におけるパラダイム・シフトを通時的に明らかにし、欧州とアジアの複数国・地域において、どのように受容され内面化されてきているかを、アクター・制度分析を通じて比較的に明らかにし、差異が生じる要因を推論する。
研究の性格
- 主たるもの:政策研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
本研究は、循環型社会・低炭素社会形成に関連する国際規範におけるパラダイム・シフトを通時的に明らかにした上で、これらの国際規範とその変容が欧州とアジアの複数国・地域において、どのように受容され内面化されてきているかを、アクター・制度分析を通じて比較的に明らかにし、差異が生じる要因について、政治・経済的要因を中心に、多視点的に推論を行うことを目的とする。
この目的に沿って、以下の5つを柱としこれらを統合する形で研究を進める。
? 環境国際規範とその国内受容の分析枠組に関する理論研究:国際規範や国際協調・パラダイムに関する先行研究レビュー、個別具体的な政策手法に関する国際規範の関連公式文書を渉猟し、当該分野における環境国際規範のパラダイム・シフトを明らかにする。また、本研究で事例研究の対象とする国際規範や具体的な政策手法を確定する。さらにこれらの国内受容を分析するために、政治学的手法を用いたアクター・制度比較の分析枠組を構築する。循環型社会・資源効率の達成の上で重要な基点となるのは資源ごみの回収(collection)であることから、とりわけ、回収過程に重点をおきつつ、調査設計を行う。
? 実証研究1(OECD諸国/先進国):国際規範を先導してきた欧州諸国からは、経済的手法の規範を先導してきたスウェーデン、またアジアからは域内随一の先進国日本を対象として、?の分析概念や枠組をふまえつつ、文献調査、現地視察、主要アクターへのヒアリングや一般世帯対象のアンケートを行う。
? 実証研究2(OECD諸国/中進国(1990年以降にOECD加盟)):欧州からは、以降経済諸国の中でも早期にOECDに加盟し国際規範を意欲的に取り入れているエストニア、アジアからはOECDの国際規範を忠実に取り入れ韓国を取り上げ、?と対照可能な形で調査を行う。
? 実証研究3(非OECD諸国/途上国):欧州からは、リトアニア、アジアからは中国、タイ、フィリピンを選定し、?と対照可能な形で、調査を行う。
? 比較分析と考察 推論???を比較検討し、環境国際規範におけるパラダイム・シフトと観察対象国の導入状況について、全体像を把握する。また、差異を生む理由の推論と現実社会の政治課題への示唆を抽出する。
今年度の研究概要
国際規範を先導してきた欧州諸国のうち経済的手法の規範を先導してきたスウェーデンの現地調査を行い、ごみ収集・リサイクルに関連する施設・アクターを訪問・インタビューする。日本国内については、生ごみ分別・バイオガス化を行っている土浦市の事例を国内学会報告し、同様な取り組みを行っているその他の自治体を訪問調査する。
外部との連携
研究代表者:宇都宮大学・高橋若菜准教授、東京電機大学・伊藤俊介教授、福島大学・沼田大輔准教授
- 関連する研究課題
課題代表者
吉田 綾
- 資源循環領域
資源循環社会システム研究室 - 主任研究員
- 博士(工学)
- 工学,経済学,政策学